夫婦の年金だけで生活費を賄えている家庭は、決して珍しくありません。
しかし、その「黒字」が20年後も続くとは限りません。
厚生労働省の資料によれば、厚生年金の平均年金月額は15万289円です。
夫婦とも厚生年金に加入していれば、二人合わせて月30万円程度の年金を受け取るケースもあります。
仮にこの夫婦の生活費を月25万円とすると、現時点では毎月5万円の黒字という計算になります。
ただし、年金は額面通り受け取れるわけではなく、税金や社会保険料が差し引かれます。
さらに、老後までの20年間で生活費は物価上昇の影響を受けて膨らんでいく一方、年金額の伸びはそれに追いつかない可能性があります。「今は黒字だから大丈夫」という安心が、20年後には崩れているかもしれません。
この記事では、仮に夫婦の年金を月30万円、生活費を月25万円とした場合の収支が、手取りとインフレを踏まえて20年後にどう変化するかを試算し、老後まで20年という時間を味方につけて今からできることを考えていきます。
「年金だけで生活費を賄えている」という状態は、老後の備えとして心強く感じられるものです。とはいえ、金融メディアで一次資料を読み解く中では、この「黒字」が時間の経過とともに縮んでいくケースは珍しくないと感じています。
老後までまだ20年あるからこそ、今のうちに手を打っておける対策も数多くあります。まずは20年後にどのような変化が起こり得るのか、具体的な試算から確認していきましょう。
1. この記事の3つのポイント
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夫婦の年金を月30万円、生活費を月25万円とすると、額面では毎月5万円の黒字 -
手取りと物価上昇を踏まえると、20年後には黒字が赤字に転じる可能性がある -
老後まで20年ある今だからこそ、積立と資産運用を組み合わせて無理なく備えられる
2. 夫婦の年金月30万円、生活費25万円――今の収支は?
まず、額面ベースでの収支を確認します。
厚生労働省の資料によれば、厚生年金の平均年金月額は15万289円です。
夫婦とも厚生年金に加入し、勤続年数も比較的長いケースでは、二人合わせて月30万円程度の年金を受け取ることも珍しくありません。ここでは仮に、この夫婦世帯の年金を合計月30万円、老後の生活費を月25万円とすると、収支は次のようになります。
- 毎月の収支(額面ベース):+5万円の黒字
- 1年間の黒字:60万円
額面だけを見ると、年金だけで生活費を十分に賄えるように見えます。しかし、この黒字がそのまま20年後も続くとは限りません。
3. 年金の「手取り」を考えると、黒字はどれだけ縮む?
年金を受け取る際には、所得税や住民税に加え、国民健康保険料や介護保険料などが差し引かれます。
仮に額面から1割程度が差し引かれるとすると、手取りの年金額はおよそ27万円になります。
手取りベースで見直すと、生活費25万円との差額は次のように縮まります。
- 毎月の収支(手取りベース):+2万円の黒字
額面では5万円あった黒字が、手取りで見ると2万円まで縮小します。
さらに、介護保険料などの社会保険料は今後も上昇傾向が続くとみられており、この黒字幅はさらに圧縮される可能性があります。
4. 20年後、物価上昇を考慮すると収支はどう変わる?
次に、老後までの20年間で生じる物価上昇(インフレ)の影響を考えます。
生活費は今後20年間、物価上昇の影響を受けて金額そのものが膨らんでいくと考えられます。
仮に物価上昇率を年1%とすると、現在の生活費25万円は、20年後の65歳時点ではおよそ30万5000円に相当する計算になります(25万円×1.01の20乗)。
一方、公的年金の受給額は物価等を踏まえて毎年度改定される仕組みになっていますが、近年の改定率は物価上昇率をやや下回る形で調整される傾向があり、実質的な購買力は目減りしていく可能性があります。
ここでは仮に、20年後の手取り年金額を現在と同水準の27万円程度と仮定すると、65歳時点での収支は次のようになります。
- 65歳時点の生活費(物価上昇後、仮定):30万5000円
- 65歳時点の手取り年金(仮定):27万円
- 毎月の収支:-3万5000円(赤字に転落)
現時点では黒字に見える家計でも、20年という時間軸でインフレと社会保険料の負担増を織り込むと、赤字に転じる可能性があります。これが、老後資金を「今の数字だけ」で判断してはいけない理由です。

