5. 「額面と手取りは違う」新規裁定の月額から差し引かれるもの(元公務員が解説)

新規裁定の平均月額9万3038円は「額面」の金額で、実際に振り込まれる金額とは異なります。年金からは複数の項目が天引きされ、手取りベースはさらに小さくなります。

額面と手取りのギャップを事前に把握しておくと、受給開始後の家計運営に無理が生じにくくなります。

5.1 年金から天引きされる社会保険料と税金

年金から特別徴収される主な項目は、次の4種類です。65歳を境に対象となる保険料が入れ替わる点にも注意が必要です。

1つめは国民健康保険料または後期高齢者医療保険料です。国民健康保険料は74歳まで、75歳以降は後期高齢者医療保険料に切り替わり、それぞれ前年所得や均等割で計算されます。

2つめは介護保険料で、65歳以上の第1号被保険者が対象です。3つめと4つめは所得税と住民税で、前年の課税所得に応じて天引きされます。

6. 年金デビュー後に家計へ組み込みたい3つの視点

年金の受給開始後は、月ごとの収支と年間ベースの支払いを別々に見る視点が役に立ちます。元公務員の視点から、家計の組み立てで押さえておきたい3つの視点を整理します。

6.1 毎月の年金額と手取りの両方を家計表に書く

額面ベースだけで家計を計画すると、初回振込の手取り額に戸惑う場面が生まれやすくなります。ねんきん定期便やねんきんネットの見込額はあくまで額面の情報のため、天引き想定を差し引いた手取りベースの数字を家計表に併記しておくと安心です。手取りの目安は、市区町村のホームページで公開されている国民健康保険料や介護保険料の試算ツールで確認できます。

6.2 偶数月ごとにまとめて入る仕組みで支出を平準化する

年金の振込は偶数月の中旬にまとめて2か月分が振り込まれる仕組みです。奇数月は振込がないため、月次の家計簿を書く場合は「入金月」と「使う月」を分けて考えると管理しやすくなります。

奇数月の生活費と光熱費、固定支出を、偶数月の入金額から逆算して積み立てておくと安定します。

6.3 公的給付や自治体独自の支援制度を年1回見直す

住民税非課税世帯に該当する人は、老齢年金生活者支援給付金が支給される可能性があります。自治体独自の給付や医療費・介護保険料の減免制度も、所得や世帯の状況で対象が変わります。

年金の額面は改定率に応じて毎年変わり、住民税の課税判定も前年収入で変わるため、年に1回はまとめて自治体窓口で確認する習慣を持つと、支援を受け損ねる場面が減ります。

年金生活者支援給付金については、こちらの記事で詳しく解説しています:年金に上乗せでもらえる「年金生活者支援給付金」とは?対象者・給付額・申請方法を解説

7. まとめにかえて

令和8年3月に新しく年金を受け取り始めた人の平均月額は、老齢厚生年金(第1号・25年以上)で9万3038円、国民年金で5万7916円でした。

既存受給者との差が生まれる背景には、加入期間の違いや在職老齢年金による一部支給停止、繰上げ受給の存在などが重なっています。

自分の年金額は、ねんきん定期便やねんきんネットで見込額を確認し、社会保険料や住民税が天引きされた後の手取りを想定しておくことが役に立ちます。判断に迷うときは、年金事務所や街角の年金相談センターに足を運んで、相談してみましょう。

参考資料

太田 彩子