老後の生活費について、「年金はいくらもらえるのか」「年金だけで生活できるのか」といった不安を抱えている方は少なくないでしょう。
総務省が発表した最新の消費者物価指数(2026年6月分)でも、総合指数が前年同月比で1.7%の上昇を記録するなど物価高の傾向は続いており、将来の生活コストに対する懸念はより一層強まっています。
将来受け取る年金額は、年収だけでなく、加入制度やこれまでの働き方によって大きく変動します。特に、国民年金のみに加入していたか、厚生年金にも加入していたかでは、受給額に大きな差が生まれます。
この記事では「平均年収400万円・38年間勤務」というモデルケースを基に、将来の年金額がいくらになるのかを試算します。
実際の受給額分布や、税金・社会保険料が天引きされた後の手取り額にも触れながら、老後資金の現実的なイメージをつかんでいきましょう。
1. この記事の3つのポイント
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平均年収400万円で38年勤務した場合、年金月額の目安は約13万6000円です。 -
実際の年金受給額には個人差があり、月額15万円以上を受け取る人は全体の約半数です。 -
年金は額面通りではなく、税金や社会保険料が天引きされ、手取り額は1割~1.5割ほど少なくなります。
2. 公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て
平均年収が400万円で38年間働いたとしても、その期間に厚生年金へ加入していたかどうかで、老後に受け取る年金額は大きく変わります。
はじめに、日本の公的年金の基本的な仕組みについて確認しておきましょう。
日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金から成る2階建ての構造です。
1階部分が国民年金(基礎年金)で、その上に2階部分として厚生年金が乗る形になっています。
- 第1号被保険者:自営業、学生、無職など
- 第2号被保険者:会社員、公務員
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。保険料は一律のため、将来の受給額に大きな差は出にくい仕組みです。
一方、厚生年金は国民年金に上乗せして支給される制度で、主に会社員や公務員が対象となります。保険料は収入に応じて変動するため、受給額も個人によって差が出やすいのが特徴です。
3. 【試算】平均年収400万円・38年勤務の年金月額
生涯の平均年収を400万円とし、民間企業で38年間働いたケースを想定して、老後に受け取れる年金額の目安を試算します。
- 2003年4月以降、厚生年金に38年間加入
- 国民年金は20歳から60歳までの40年間のうち、学生期間の2年間は学生納付特例(追納なし)で、納付期間は38年
- 配偶者および扶養家族はいない
この条件で試算すると、厚生年金の年額は約83万円、国民年金の年額は約80万円となります。
合計すると、年間の受給額は約163万円、月額に換算すると約13万6000円が目安です。
4. 実際の年金受給額は?分布データで確認
では、実際に年金を受け取っているシニア世代は、どのくらいの金額を受給しているのでしょうか。
厚生労働省年金局が公表している「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金を含む厚生年金の受給額分布は以下のようになっています。
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
国民年金と厚生年金の両方を受け取っている人のうち、月額15万円以上を受給している割合は全体の約半数にあたる49.8%です。
今回の試算結果である月額約13万円を下回る人も、全体の約38.7%を占めており、受給額には個人差があることがわかります。
5. 年金から天引きされる税金・社会保険料
年金は、現役時代の給与と同じように、税金や社会保険料が天引きされる仕組みです。そのため、実際に手元に残る金額は額面よりも少なくなります。
年金から天引きされる主な項目は以下の通りです。
- 所得税
- 住民税
- 健康保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)
- 介護保険料
総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」を参考に、65歳以上の単身無職世帯の収支状況を見てみましょう。
この調査によると、実収入(額面)13万1456円に対し、税金や社会保険料として1万2990円が天引きされ、手取り収入は11万8465円となっています。
天引きされる金額は個々の状況で異なりますが、収入の10%~15%程度が差し引かれると考えておくとよいでしょう。
6. 筆者からのコメント
今回の試算結果を見て、思ったより多い、あるいは少ないと感じた方もいるかもしれませんね。
年金の金額は、まさに一人ひとりの「働き方の履歴書」です。特に会社員の方は、給与から天引きされる厚生年金保険料をあまり意識しないかもしれませんが、これが将来の自分を支える大切な資産になります。
フリーランスとして働いていた時期がある私からすると、会社が保険料を半分負担してくれる厚生年金は非常に手厚い制度だと感じます。
ぜひ一度「ねんきん定期便」でご自身の加入記録と見込額を確認してみてください。数字を具体的に見ることで、老後への意識がぐっと変わりますよ。
7. 年金の豆知識 ~額面が増えても安心できない?年金の「実質目減り」~
年金のニュースでよく耳にする「マクロ経済スライド」。これは2004年(平成16年)に導入された、将来の現役世代の保険料負担が重くなりすぎないよう、年金の給付水準を緩やかに調整する仕組みです。
具体的には、本来の賃金や物価の改定率から、少子化(現役世代の減少)や長寿化(平均余命の伸び)に応じた「スライド調整率」を差し引いて年金額を決定します。
そのため、「物価が上がっても年金はそれほど増えない」と、給付を低く抑えるネガティブなイメージを持たれがちです。
しかし、マクロ経済スライドは、どんな時でも必ず年金を「低く抑える(減額する)」わけではありません。年金生活者の生活を守るための「下限ルール(名目下限措置)」が備わっています。
7.1 賃金や物価の伸びが小さい場合
スライド調整をそのまま適用すると年金額が前年より下がってしまう時は、前年の年金額を維持(改定率ゼロ)するところで調整をストップします。
7.2 賃金や物価がマイナス(下落)の場合
スライド調整自体をストップし、賃金や物価の下落分だけ年金を下げます。マクロ経済スライドによって「追い打ち」をかけるように年金を減らすことはしません。
このように、マクロ経済スライドは、物価が順調に上がるときには少しだけ年金の伸びを我慢してもらう一方で、経済状況が悪いときには受給者の生活が苦しくなりすぎないよう配慮された、長期的なバランスをとるための仕組みです。
8. おひとりさまの意識調査 ~最大の不安は「孤独」よりも「お金」~
今回の試算モデルのような単身世帯(おひとりさま)は、老後にどのような不安を抱えているのでしょうか。
株式会社エイブル&パートナーズの「ひとり暮らしの老後意識調査2026」によると、老後の2大不安要素である「お金」と「孤独」について、全世代で「お金に対する不安の方が大きい」という結果が出ています。
とくに「未婚・ひとり暮らし女性」では、「お金がなくなる方が不安」と答えた割合が84.0%にのぼりました。
頼れる家族が少ない単身世帯だからこそ、早い段階から自分の年金見込額を把握し、計画的に老後資金を準備しておくことが、将来の「自分らしい自由な生活」を守る盾となります。
9. まとめ:年金額は「制度・働き方・手取り」をセットで考えよう
この記事では、「平均年収400万円・38年間勤務」という条件で、将来の年金額を試算しました。
試算では月額約13万6000円という結果になりましたが、実際の受給額は個人差が大きく、さらに税金や社会保険料が天引きされるため、手取り額は1~1.5割程度少なくなります。
老後の生活を考えるうえでは、年金の額面だけでなく、制度の仕組みや実際の手取り額まで含めて総合的に把握することが大切です。また、繰下げ受給や長く働くことで年金を増やす選択肢がある一方、在職老齢年金などで減額されるケースもあります。
ご自身の状況と照らし合わせながら、早めに老後資金の計画を立ててみてはいかがでしょうか。
10. 筆者からのコメント
「人生100年時代」といわれますが、長い人生では予期せぬことも起こります。
私自身、家族の介護で働き方を変えざるを得なかった経験から、キャリアプラン通りにいかない現実も目の当たりにしてきました。
国の制度である公的年金をしっかり理解したうえで、iDeCoやNISAといった自分でコントロールできる資産形成を組み合わせることが、将来の安心につながります。
今回の記事が、ご自身の働き方と年金について、改めて考えるきっかけになればうれしいです。
