実際の受給者はいくらもらっている?平均月額から見える現実

先ほどのシミュレーションは、「平均年収400万円で38年間勤務した場合」を前提とした試算です。

では、実際の受給者はどのくらいの年金を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金部分を含む厚生年金の平均月額は以下のとおりです。

【年金グラフ】男女別「厚生年金+国民年金」受給月額4/4

【年金グラフ】男女別「厚生年金+国民年金」受給月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

【平均月額】

  • 全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

【受給額ごとの受給権者数の割合】

  • 10万円未満の割合:19.0%
  • 10万円以上の割合:81.0%
  • 15万円以上の割合:49.8%
  • 20万円以上の割合:18.8%
  • 20万円未満の割合:81.2%
  • 30万円以上の割合:0.12%

※いずれも国民年金部分を含む

全体の平均月額(15万289円)は、先ほどのシミュレーション結果(約13万6504円)より1万3000円ほど高い水準です。

また、男性の平均月額(16万9967円)と女性の平均月額(11万1413円)には、5万円以上の開きがあります。

この背景には、現役時代の賃金水準や、厚生年金への加入期間の違いが影響しています。

ただし、年金額は平均だけでは実態をつかみにくい面があり、受給額の分布を見ると「1万円未満」から「30万円以上」までと、個人差は小さくありません。

加藤 聖人
今回の試算額(月額約13万6504円)は、実際の平均月額(15万289円)より1万3000円ほど低い結果になりました。

平均額は高収入・長期加入の方の影響も受けやすいため、「平均より低いから心配」と単純に受け取る必要はありません。

実際、受給額が15万円未満の方は全体の約半数(15万円以上の割合49.8%の裏返し)を占めており、平均前後の受給額はむしろ一般的な水準といえます。大切なのは平均額との比較ではなく、ご自身の見込み額そのものを早めに把握しておくことです。

「ねんきん定期便の金額」を生活費にそのまま組み込んでいませんか?

ご相談を受ける中でよく見かけるのが、ねんきん定期便に記載された年金額を、そのまま「毎月使えるお金」として老後の生活費の計算に組み込んでしまっているケースです。

たとえば、ご夫婦それぞれのねんきん定期便の見込み額を単純に合算し、「夫婦で月30万円もらえるから、生活費はこれで十分足りる」と考えていたご夫婦がいらっしゃいました。

しかし、実際には、この金額から所得税・住民税、国民健康保険料や介護保険料などが差し引かれるため、口座に振り込まれる金額は、想定より数万円単位で少なくなることがあります。

見込み額と手取り額の違いを意識せずに老後の生活費を計算してしまうと、実際に年金生活が始まってから「思ったより使えるお金が少ない」と感じ、慌てて生活を見直すことになりかねません。

ねんきん定期便の金額は、あくまで「差し引かれる前の金額」であることを念頭に置き、後述する天引き項目もあわせて確認しておくことが大切です。

年金から天引きされる5つのお金をチェック

では、実際に年金から天引きされるお金について、項目ごとに確認していきましょう。

(1)所得税および復興特別所得税

公的年金は、原則として所得税の課税対象です。

ただし、年金収入のすべてに税金がかかるわけではなく、公的年金等控除などを差し引いた後の金額をもとに税額が計算されます。

収入が年金のみであっても、一定額を超えると源泉徴収の対象となり、年金の支給時に所得税および復興特別所得税が差し引かれます。

(2)住民税および森林環境税

住民税は、前年の所得をもとに市区町村が計算する税金です。年金収入がある人も、所得の状況によっては住民税の課税対象になります。

年金から特別徴収される場合は、あらかじめ決められた金額が支給額から差し引かれる仕組みです。

また、2024年度からは森林環境税も住民税とあわせて徴収されています。年金生活に入っても、前年の所得に応じて税負担が発生する点に注意が必要です。

(3)国民健康保険料

会社を退職して職場の健康保険を外れた後、国民健康保険に加入する人もいます。その場合、国民健康保険料が年金から差し引かれることがあります。

保険料は、前年の所得や世帯の状況、住んでいる自治体などによって異なります。

医療保険料は老後の家計に影響しやすいため、退職後にどの医療保険へ加入するのかも確認しておきたいところです。

(4)後期高齢者医療保険料

75歳以上になると、原則として後期高齢者医療制度に加入します。

後期高齢者医療保険料は、所得や地域によって金額が異なり、原則として年金から差し引かれます。

年金額を確認する際は、医療保険料がどの程度引かれているかも見ておくと、実際の手取り額を把握しやすくなります。

(5)介護保険料

65歳以上の人は、介護保険の第1号被保険者となります。

介護保険料は、要介護認定を受けているかどうかにかかわらず、所得などに応じて負担するものです。

多くの場合、年金から天引きされます。介護サービスを利用していない人でも保険料の負担は続くため、年金生活の固定的な支出として考えておく必要があります。

このように、年金からは所得税・住民税に加えて、加入する医療保険や介護保険の保険料まで、複数の項目が差し引かれます。

先ほど試算した月額や平均月額は、あくまでこれらが差し引かれる前の金額である点を、あらためて意識しておきましょう。

加藤 聖人
年金からの天引き項目は、現役時代の給与から差し引かれる税金・保険料と似た構造ですが、年金額そのものが現役時代の収入より少なくなりやすい分、天引き後の手取り額への影響をより強く実感しやすいという特徴があります。加えて、65歳からは介護保険料、75歳からは後期高齢者医療保険料へと天引きの内容が段階的に変わっていきます。ご自身が将来加入する医療保険や介護保険の目安額を、お住まいの自治体の窓口等で確認しておくと、年代ごとの手取り額の変化も見通しやすくなります。

【FPからのアドバイス】50歳代夫婦が今のうちに準備しておきたいこと

先ほど紹介したような「見込み額と手取り額の混同」以外にも、50歳代夫婦に特有の準備不足を目にすることがあります。

ここでは、今のうちに確認しておきたいポイントを3つに整理してご紹介します。

夫婦それぞれの年金見込み額を、必ず個別に確認する

共働き夫婦の場合、どちらか一方の年金額だけを見て安心してしまうケースがあります。しかし、勤続年数や収入水準、加入している年金制度(会社員か自営業か等)が夫婦で異なれば、当然受給額も変わります。まずは夫婦それぞれが、ねんきんネットなどで自分自身の見込み額を確認しましょう。

「世帯の年金額」と「世帯の生活費」を、手取りベースで突き合わせる

本記事で試算したような年金額はあくまで目安であり、そこから税金・保険料が差し引かれます。夫婦2人分の年金の手取り見込み額を合算し、現在の生活費と比較しておくことで、退職後にどの程度の不足が生じるかを、早い段階で把握できます。

不足額が見えたら、「働き方」と「資産形成」の両面で対策を考える

50歳代は、定年までの残り時間を使って対策を打てる、実質的に最後のタイミングです。不足額が明確になった時点で、再雇用や再就職による収入の確保、あるいはNISAなどを活用した資産形成など、複数の選択肢を組み合わせて検討することが大切です。

年金額は、加入してきた制度によってすでに大枠が決まっている部分もありますが、「どう受け取り、どう使うか」については、まだ調整できる余地があります。

50歳代のうちに夫婦で年金の実態を共有し、早めに老後の計画を立てておきましょう。

加藤 聖人
50歳代は、年金の見込み額や現役時代の働き方をまだ調整できる、実質的に最後のタイミングです。夫婦で年金額と生活費を手取りベースで早めに突き合わせておくことで、不足額が明確になった段階で、再雇用や再就職、NISA等を使った資産形成など複数の選択肢を落ち着いて比較検討する時間を確保できます。年金額そのものは加入してきた制度によって大枠が決まっていても、「どう受け取り、どう使うか」はまだ調整できる部分です。まずは夫婦それぞれの「ねんきん定期便」を見比べてみることから始めてみてください。

まとめ

公的年金は老後収入の柱ですが、受給額は加入してきた制度や現役時代の収入、保険料を納めた期間によって変わります。

今回の試算では、平均年収400万円・加入期間38年の場合、国民年金と厚生年金を合わせた年金額は月額約13万6500円となりました。

一方、実際の受給者の平均月額は15万289円であり、男女間でも5万円以上の差があるなど、平均額だけを見ても自分の老後生活を正確にイメージするのは難しいのが実情です。

さらに、実際の年金生活では、所得税・住民税に加え、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料、介護保険料といった複数の項目が年金から差し引かれます。

ねんきん定期便に記載された見込み額は、あくまで差し引かれる前の金額である点を、あらためて押さえておきましょう。

参考資料

加藤 聖人