この年代の人は、働くにはまだまだ十分な体力があります。
総務省統計局の「労働力調査(基本集計)平成30年(2018年)平均(速報)結果の概要」によると、定年後に再雇用になったり、アルバイトを始めたりしており、この年代の男性は81.1%もの人が何らかの形で働いています。女性は56.8%となっています。
先程ご紹介した厚生労働省の「中高年者縦断調査」にあるように、生活費のために働く人、定年になり時間を持て余している人など様々な人がいます。
いずれにせよ、体力的にはまだまだ十分働ける年代です。
住宅ローンを抱えていた人はそろそろ完済となる人も多いでしょう。
これまであまり貯蓄ができなかった人でも、この時期に挽回することは十分可能です。
65歳から74歳
この年代は、保険組合からも「前期高齢者医療制度」という制度があるように、いわゆる老齢期に突入します。
若い頃よりは健康不安を抱える人が増える時期でもあります。
とはいえ、65~69歳の男性では57.2%もの人が働いており、70~74歳でも38.1%の人が働いています。女性では65~69歳は36.6%、70~74歳は23.1%となっています。
65歳からは年金の支給も始まります。
個人差が大きいとは思いますが、依然、体力や気力が十分ある人は、この時期にもしっかり働いて老後資金不足の足しにすることは十分可能です。
75歳以上
ここでも個人差はあると思いますが、さすがに体力の衰えを顕著に感じる人が多くなる年代です。
医療保険も「後期高齢者医療制度」に変わります。
現役収入がない人は医療費の負担は1割になりますが、それでも通院や入院などの医療費の負担が大きくなるでしょう。
75歳以上で働いている男性は14.8%と急激に減少しており、体力的に働いて収入を得ることを諦める人が多いようです。女性は6.5%となっています。
こうして老後の3つのステージを見てみると、個人差はありますが60歳から74歳までの間はまだまだ働ける体力がある人が多く、この時期にこれまでの老後資金の不足を挽回できる可能性が十分にあるということです。
もちろん、80歳以上でも働ける体力がある人もいらっしゃいます。
老後資金の不足を考える場合、健康への投資をすることで長く働ける体力を養うことが大切だと考えられるのではないでしょうか。
定年までの「貯蓄目標」はどうなる?
定年後も元気に働けることがわかると、これまで目標としてきた「定年までの貯蓄目標」はいったいどうなるのでしょうか。
これまでの貯蓄目標は、定年後は一切働かず、年金と貯蓄だけで生活をしていくという前提でした。
ですので、老後資金として2,000万円から3,000万円が必要だと言われてきたのです。
人生100年を生きる時代、日本人の賃金も減少傾向にあるなか、60歳や65歳でリタイアせず、定年後も元気に働くことで極端な話、定年後に老後資金が少なくても大丈夫だということが言えるのではないでしょうか。
今、現役で働いている世代は、65歳以上も何らかの形で働くことを視野に入れて、老後資金の貯蓄目標を再設定する必要があるかもしれません。
老後のイメージづくりが大切
これまで厚生年金の保険料は2002年の法改正により70歳まで払うことができましたが、政府は70歳以降も保険料を払えるよう議論しています。
保険料の払い込みが増えると家計を圧迫しますが、体が元気で働けるうちに保険料を少しでも長く払うことができれば、将来もらえる年金額が増え、働けなくなる年代の老後生活に少しゆとりができます。
「定年後にやりたいことがある」「老後はゆっくり過ごしたい」「定年後もバリバリ働きたい」といったイメージや設計に基づいてシミュレーションすることがとても大切です。
何歳まで働くのかを決めておけば、自ずと老後資金が不足しているのか十分なのかがわかるようになり、貯蓄目標が変わってくると思います。
一方で、思い描いた通りに健康に働くことができないリスクも想定しながら、余裕資金を確保する必要性も認識しておきましょう。
【参考】
「65歳以上で勤めている人はどれくらいいる?」公益財団法人生命保険文化センター
「中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)特別報告の概況」厚生労働省
「労働力調査(基本集計)平成30年(2018年)平均(速報)結果の概要」総務省統計局
モトリーフール・ジャパン