「先月より年金の振込額が減っている気がする」「10月になったら急に受け取れる金額が変わった」——年金を受け取り始めた方から、こうした声が聞かれることがあります。実は、年金からは所得税や住民税だけでなく、介護保険料や国民健康保険料、後期高齢者医療保険料などが天引きされており、その天引きの決まり方には「仮徴収」と「本徴収」という2段階のしくみが関わっています。
本記事では、10月を境に年金の振込額(手取り額)が変わりやすい理由を、天引きのしくみから解説したうえで、厚生年金・国民年金の平均月額もあわせて確認していきます。
この記事では、一部データを以下の記事から引用しています。
- 年金の天引きには「仮徴収」と「本徴収」の2段階があり、切り替わりで受取額が変わる
- 10月は「本徴収」が始まる最初のタイミングで、振込額が変わりやすい
- 厚生年金(国民年金含む)の平均月額は15万289円
1. 年金の振込額が10月を境に変わる理由「仮徴収」と「本徴収」のしくみ
65歳以上で、年額18万円(月額1万5000円)以上の年金を受け取っている方の多くは、介護保険料や、対象者であれば国民健康保険料・後期高齢者医療保険料、住民税などが、年金から前もって差し引かれる「特別徴収」という仕組みの対象になっています。
特別徴収は、年金の支払月である偶数月(4月・6月・8月・10月・12月・2月)の年6回に分けて行われます。このうち、4月・6月・8月の3回を「仮徴収」、10月・12月・2月の3回を「本徴収」と呼びます。
- 4月・6月(仮徴収):前年度2月分と同額を、いわば「仮の金額」として納めます。これは、その年の正式な保険料額が確定する前の時期にあたるためです。
- 8月(仮徴収):その年度の確定保険料額から4月・6月分を差し引いた額をもとに調整されます。
- 10月・12月・2月(本徴収):その年度の確定保険料額から、4月・6月・8月に仮徴収した分を差し引いた残りを3回に分けて納めます。
つまり、4月から8月まではいわば「見込みの金額」で天引きされ、10月からは「確定した金額」をもとに天引きされる仕組みです。この見込みと確定額に差があるほど、10月の振込額の変化も大きくなりやすいというわけです。
2. 令和8年度の年金額はいくら?
公的年金の受給額は、物価や賃金の動向を踏まえて年度ごとに見直されます。2026年6月支給分(4月・5月分)からは、国民年金(基礎年金)が前年度から1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられました。
- 国民年金(老齢基礎年金・満額、1人分):7万608円(前年度比+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分のモデル年金):23万7279円(前年度比+4495円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(前年度比+1300円)
※厚生年金のモデル年金は、「男性の平均的な収入(平均標準報酬〈賞与含む月額換算〉45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金〈満額〉)の給付水準
ここで注意したいのは、年金額そのものが増える改定であっても、天引きされる介護保険料や後期高齢者医療保険料などが、その年金の伸び以上に上がっていれば、10月からの本徴収額が仮徴収額を上回り、振込額(手取り)はむしろ減ってしまう可能性があるということです。年金額の改定と、天引きされる保険料の改定は、別々の仕組みで決まっているため、両方を確認しないと「実際の振込額」は見えてきません。
このモデル年金23万7279円は、あくまで平均的な収入で40年間働いた世帯を想定した「例」であり、実際に受給者一人ひとりが受け取っている平均額とは異なります。次の章では、実際の受給者全体の平均額を確認してみましょう。



