5. なぜ「年金だけでは足りない」と感じるのか、60代・70代の本音

実際、年金だけで生活を維持できないと感じている人はどの程度いるのでしょうか。J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」では、二人以上世帯のうち60歳代の33.6%、70歳代の26.5%が「年金だけでは日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しています。

「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?5/5

「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

60代の方が70代よりも不安を感じる割合が高いという結果は、「まだ現役で比較を意識しやすい」「これから来る年金生活への不安が強い」ことの裏返しとも考えられます。

止まらない物価上昇の中、健康や介護への不安を抱えながら過ごすシニア世帯が一定数存在するのが実情です。

6. 50代・60代から今できる備え「4つのアクションプラン」

70代で明らかになる「老後格差」は、多くの場合、現役時代からの備えの差によって生まれます。50代・60代のうちに取り組めることを整理しておきましょう。

  • NISA・iDeCoを活用する:NISAは運用益が非課税になる制度、iDeCoは掛金が所得控除の対象になる制度です。いずれも長期の資産形成に向いた国の制度であり、早く始めるほど時間を味方につけやすくなります。
  • 就労継続を検討する:継続雇用や再雇用、シニア向けの求人など、健康なうちは収入を得る期間を延ばすことで、年金だけに頼る期間そのものを短くできます。
  • 固定費を見直す:通信費・保険料・サブスクリプションなど、一度見直せば効果が続く固定費は、赤字体質を改善する近道になります。
  • 資産の分散を意識する:貯蓄・年金・投資・就労収入など、複数の収入の柱を持っておくことで、どれか一つが目減りしても生活への影響を和らげやすくなります。
奥田 朝
NISAやiDeCoといった制度は心強い味方ですが、いきなり大きな金額を投資に回す必要はありません。FPとしておすすめしたいのは、まず「固定費の見直し」と「就労継続の検討」から始めることです。これらは市場の変動に左右されず、効果が比較的すぐに家計に反映されるため、心理的なハードルも低くなります。そのうえで、余裕が生まれた分をNISA・iDeCoなどで少額から積み立てていく、という順番で進めると、無理なく老後の備えを厚くしていくことができます。

ポイントは、「老後になってから慌てて対策する」のではなく、まだ収入があり選択肢の多い50代・60代のうちに、少しずつ準備を進めておくことです。今回見てきたように、貯蓄額の差は将来の「赤字への耐久力」の差そのものにつながります。

7. まとめ

65歳以上の無職夫婦世帯は毎月平均4万2434円の赤字を抱え、その多くを貯蓄の取り崩しで補っています。70代の貯蓄額は平均2416万円、中央値1178万円ですが、貯蓄ゼロの世帯が10.9%、3000万円以上の世帯が25.2%という「老後格差」が広がっているのも事実です。

この差を生むのは、多くの場合、現役時代からの準備の積み重ねです。NISA・iDeCoの活用や就労継続、固定費の見直しなど、できることから早めに取り組んでおくことが、将来の安心につながります。50代・60代のいまが、老後の「自分の数字」を見直す最適なタイミングだと言えるでしょう。

参考資料

奥田 朝