3. 「新NISA貧乏」にならない積立投資額の考え方

積立額を検討するうえで、まず押さえておきたいのが「生活防衛資金」の考え方です。

3.1 生活防衛資金を確保できているか

生活防衛資金とは、病気や失業など予期しない事態が起きた際に、投資資産を取り崩さずに生活を維持できるお金のことです。一般的には、生活費の3〜6カ月分が目安とされています。

この資金が確保できていない状態で積立額を増やしてしまうと、急な出費が発生した際に、非課税期間中の投資商品を売却せざるを得なくなることがあります。せっかくの非課税メリットを十分に活かせなくなってしまう点は、意識しておきたいところです。

次に、具体的なモデルケースで積立額の考え方を見てみます。

3.2 モデルケースで考える「無理のない積立額」

仮に、世帯の年間収入が500万円(税金・社会保険料等を差し引いた実収入は月35万円程度と仮定)、毎月の生活費(住居費・食費・保険料などを含む)が28万円のAさん夫婦を例に考えてみましょう。

  • 毎月の世帯の実収入(目安):約35万円
  • 毎月の生活費:28万円
  • 手元に残る額:7万円

この場合、生活防衛資金がまだ十分に確保できていないのであれば、7万円をすべて新NISAの積立に回すのではなく、まずは5万円程度を生活防衛資金の積立に、残りの2万円を新NISAの積立に、といった配分も一つの考え方です。

生活防衛資金が目標額(生活費の3〜6カ月分、この場合 84万〜168万円)に達したタイミングで、投資に回す割合を増やしていくという段階的な進め方も現実的でしょう。

総務省の家計調査(2025年平均)によると、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の可処分所得は月平均53万2408円、消費支出は月平均34万6297円でした。可処分所得から消費支出を差し引いた「黒字」は18万6111円で、黒字率は35.0%となっています。

世帯主の年齢階級別にみると、可処分所得は40〜49歳が57万8733円と最も高い一方、消費支出は50〜59歳の世帯が37万4940円と最も高くなっています。子育てや教育費の負担が大きい時期ほど、手元に残る余裕が小さくなる傾向がうかがえます。

勤労者世帯の年齢階級別 可処分所得・消費支出(1カ月あたり、2025年平均)1/1

勤労者世帯の年齢階級別 可処分所得・消費支出(1カ月あたり、2025年平均)

出所:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」

グラフを見ると、年代によって手元に残る余裕(可処分所得と消費支出の差)が変わることが分かります。積立額を検討する際は、一般的な平均値よりも、まず自分の年代・世帯の可処分所得と消費支出の実態を確認することが欠かせません。

4. まとめ

「毎月いくら積立てるのが正解か」という問いに、すべての人に共通する答えはないというのが実感です。SNSで見かける他の人の積立額は、あくまでその人の収入や生活費を前提にした数字であり、そのまま自分に当てはめる必要はありません。

大切なのは、生活防衛資金という土台を保ちながら、無理なく続けられる額を自分の家計から逆算することです。積立額を一時的に増やすことよりも、10年、20年と積立を止めずに続けられることの方が、最終的な資産形成の結果を大きく左右します。

まずはご自身とご家族の毎月の生活費、そこで手元に残る余裕資金を、あらためて数字で確認してみることから始めてみませんか。

5. 【筆者からのアドバイス】

和田 直子

新NISAは非課税保有限度額が1800万円まで拡大し、時間をかけて枠を使い切ることも十分可能な制度です。

無理に急ぐ必要はないと、あらためてお伝えしたいと思います。積立額を考える際に大切にしたい視点を、いくつか挙げておきます。

  • 生活防衛資金(生活費の3〜6カ月分)を最優先で確保する
  • 積立額は「増やせる限界」ではなく「取り崩さずに続けられる額」で決める
  • ボーナスなど一時的な収入は、毎月の積立額の基準に含めない
  • 年に1回程度、家計の状況に合わせて積立額を見直す

金融メディアで日々こうした一次資料を読み解く中で感じるのは、投資額の「正解」を探すより、家計全体のバランスを整えることの方が、結果的に資産形成を長続きさせるということです。

積立額を増やすこと自体は前向きな選択ですが、生活防衛資金というクッションがあってこそ、相場が下がった時も慌てずに積立を継続できます。まずはご自身の生活費を把握し、無理のない額から始めていくことを、最初の一歩にしていただければと思います。

参考資料

和田 直子