無配継続で財務体質改善が優先、還元姿勢は次段階へ
見るべきは、これほどの利益回復局面にあっても、株主還元は依然として無配継続という選択がされている点ではないでしょうか。
分割調整後の1株配当は過去期を通じてゼロが続いており、翌期の予想配当についても直近の通期短信では明示されていません。過去の赤字期を経て積み上がった財務健全化ニーズを、まずキャッシュフローで消化する段階に位置していると受け止められる姿です。
営業キャッシュフローは2026年3月期で6,165億円と潤沢な水準にあり、有利子負債の圧縮や研究開発投資への振り向けが続く局面と考えられます。過去5年で見た株主総利回り(TSR)は6.99倍と、同期間のTOPIX 1.35倍を大きく引き離しました。
株価は1年で20倍超に到達、2026年6月末には10万円を超える水準に一時到達
株価の直近1年(月末終値ベース、参照期間は2025年8月末〜2026年7月執筆時点)の推移は、業績回復の姿を大きく先取り・増幅して織り込んだ動きとなりました。
2025年8月末は2,500円台で推移していた後、9月末に4,800円台、10月末に1万円台と急伸を続け、2026年2月末には2万円台、4月末に3万円台、5月末に6万円台、そして2026年6月には直近1年の中で最も高い水準である10万円を超える水準にまで一気に切り上がりました。
その後は下押しに転じ、2026年7月には5万4,000円台まで戻しています。とはいえ、起点の2025年8月末と比較しますと、1年トータルで実に20倍を超える上昇となりました。
筆者コメント
一般に「半導体メモリはシクリカル業種であり、業績振幅が大きい」というイメージは広く共有されています。同社の過去5期の当期利益推移や、直近の急回復は、まさにその通念どおりの姿を示しています。
一方で、業績のサイクル特性そのものが強い場合、株価がそれを大きく上回る変動幅で反応する姿は、通念だけでは捉えにくい局面と読み取れます。1年で株価が20倍を超える動きは、業績数値の実勢と、市場が織り込んだ将来サイクルの姿の間に大きな時間軸のギャップがあることを示唆しているとも言えるでしょう。
サイクル性の強い銘柄を眺めるときは、単一期の業績数値の姿だけでなく、業種サイクルのどの位相にあるか、そして株価がどの程度先取りしているかを同時に見ていく着眼点が有効ではないでしょうか。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
石津 大希
