5. 2027年2月期第1四半期は増収も一時的な減益に。映画・演劇が牽引する一方、アニメは事業再編の影響受ける

東宝が2026年7月15日に発表した2027年2月期 第1四半期(2026年3月1日〜5月31日)の連結業績は、主力である映画や演劇の興行が全体を引っ張り増収を確保したものの、グループ内の組織再編に伴う会計上の要因から減益での着地となりました。

5.1 1Q連結業績ハイライト

  • 営業収入:887億4,200万円(前年同期比 4.6%増)

  • 営業利益:138億6,900万円(同 28.3%減)

  • 経常利益:137億4,300万円(同 27.4%減)

  • 四半期純利益:81億9,600万円(同 29.1%減)

売上高にあたる営業収入は前年同期を上回る887億円超を記録しました。

一方で営業利益は約28%減少しています。

利益を押し下げた主な要因は、2026年3月1日付で海外ライセンス事業を100%子会社「TOHO Global株式会社」へ分割・承継させたことに伴う連結調整(一時的な会計処理)が発生したためです。

なお、通期の業績予想(営業収入3,450億円、営業利益620億円)は従来の計画をそのまま維持しています。

6. セグメント別動向:ヒット作が相次いだ映画・演劇が業績を底上げ

各事業セグメントの状況をコンパクトに確認していきます。

6.1 映画事業:コナン最新作などが大ヒットし増収増益

  • 営業収入:433億8,100万円(前年同期比 7.7%増)

  • 営業利益:95億9,800万円(同 6.1%増)

『劇場版「名探偵コナン ハイウェイの堕天使」』が空前のヒットとなったほか、『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』や『SAKAMOTO DAYS』も良好な推移を見せました。

TOHOシネマズ等の観客動員数は1,200万5,000人(同9.4%増)へ拡大。

2026年3月には「TOHOシネマズ 大井町」を新設し、集客網を一段と高めています。

6.2 IP・アニメ事業:グッズ販売は急増も、ライセンス調整が響き大幅減益

  • 営業収入:182億5,500万円(前年同期比 3.9%減)

  • 営業利益:5億2,000万円(同 91.8%減)

『僕のヒーローアカデミア』『呪術廻戦』『葬送のフリーレン』などの配信・配分金が安定した収益を生んだほか、「ゴジラ カードゲーム」をはじめとするキャラクターグッズ等の販売が53億8,600万円(同35.6%増)と大きく成長しました。

だた、前年同期のライセンス収益が高水準だった反動に加え、2026年3月のTOHO Globalへの事業移管に伴う会社分割・連結調整の会計負担が重く、セグメント利益は一時的に大きく落ち込みました。

6.3 演劇事業:外部劇場での盛況公演により利益は約6.7倍へ飛翔

  • 営業収入:59億800万円(前年同期比 15.5%増)

  • 営業利益:4億7,500万円(同 574.6%増)

自社のシアタークリエでの公演にとどまらず、外部劇場で上演した『メリー・ポピンズ』や『チャーリーとチョコレート工場』が大盛況を収めました。

これにより、営業利益は前年同期から跳ね上がる大入り決算となっています。

6.4 不動産事業:空室率0.3%と堅固な収益基盤を発揮

  • 営業収入:204億2,500万円(前年同期比 1.4%増)

  • 営業利益:55億5,600万円(同 6.8%減)

賃貸不動産の空室率は0.3%と極めて低い水準をキープし、底固い稼ぎ頭として機能しています。

道路事業における前年の価格スライド効果が剥落したことで若干の減益とはなったものの、高い利益水準をしっかり維持しています。

7. このまま株価回復の起爆剤となるか、映画『ちいかわ』大ヒット期待と今後の展望

1四半期決算自体は減益着地となった東宝ですが 、直近の株式市場で株価が跳ね上がった大きな要因は、2026年7月24日

に公開された映画『ちいかわ』の好スタート観測です。

封切り初日の24日は、前日比6%超と急騰して取引を終えました。

週明けの27日は、寄り付きこそ微下げとなったものの、一日を通して右肩上がりで推移しました。

  • 株価(終値):1,482.5円
  • 前日比:+2.49%
  • 出来高:8,017,100株
  • PER(会社予想):30.21倍
  • PBR(実績ベース):2.46倍
  • 配当利回り:1.48%

8. 株価は高値(1,752円)に向けた継続的な上昇トレンドを形成できるか注目

7月27日の株式市場で、東宝の株価は7月24日の急騰劇に続いて前日比+2.5%近くの続伸を見せました。

株価上昇の直接的な推進力となったのは、公開を迎えたばかりの映画『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』に対する好調な動員観測です。

8.1 SNSで反響拡大!物販収益への期待も

劇場公開の直後から、SNS上では鑑賞を終えたファンからの高い熱量を伴う投稿が目立ちます。

  • 高い作品評価:原作の世界観を丁寧に表現したシナリオ展開が高く評価されているほか、「最後まで夢中で楽しめた」「音楽や効果音のクオリティが素晴らしい」といったポジティブな口コミが広がっています
  • 強力な物販(グッズ)需要:映画館での配給・興行収入にとどまらず、SNS上では「魅力的で目移りするグッズラインナップ」に対する購入報告が続出しており、物販ビジネスによる収益の上乗せ期待も高まっています

こうしたポジティブな反応の広がりが興行成績への好見通しとなり、株価の買い注文に直結しました。

強力なファン層を抱える『ちいかわ』IPのポテンシャルと、グッズ展開を含めた総合的な収益力の高さが、マーケットで改めて評価された格好です。

8.2 市場が好感する「3つの注目ポイント」

今回の株価上昇の背景には、投資家が評価する以下の3つの要素が存在します。

  • 動員数の好スタート観測:公開直後から劇場への集客が非常に力強いとの見方が広がり、SNSの反響とともに市場の注目を一気に集めました
  • 2Q以降の業績上振れシナリオ:株式市場では「第2四半期以降の興行収入およびIP関連収益を大きく底上げする」との見通しから買い注文が膨らみ、株価を押し上げました
  • 東宝独自の堅牢な事業構造:映画の配給・興行だけでなく、アニメ・IPのマルチユース(多角展開)や、高収益を誇る不動産事業を組み合わせた盤石な経営基盤が、同社の根本的な強みとなっています

8.3 今後の株価動向と注視すべきポイント

直近の業績数値としては一時的な減益が見られたものの、夏興行の主力作品である今作が順調な興行成績を納めれば、今後の業績上振れも十分に期待できる展開です。

株式分割によって投資単位が引き下げられ、売買のハードルが下がった東宝株。

足元の株価浮揚が一過性の動きに終わらず、高値(1,752円)に向けた継続的な上昇トレンドを形成していけるかどうかが、今後の注視ポイントとなります。

9. 参考

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください

高原 祥子