老後になると当たり前に受け取れると思いがちな「年金」。実は年金の支給をうけるには申請を行う必要があること、なおかつ年金請求書受付から2~3カ月で支給スタートになることをご存知でしょうか。

一般的な年金受給開始年齢は65歳からですが、年金請求の手続きから支給まで数カ月かかりますし、年金は繰上げ受給や繰下げ受給といった受け取り方も可能です。不安が叫ばれる年金ですが、65歳よりももっと前から制度や平均額などを知り、自分の場合はどうするかを知ることが大切なのです。

石津 大希
金融や年金に関する記事を、これまで数えきれないほど編集してきました。読者の方の関心がとくに高いのが「同世代のふつうの人は、年金をいくらもらっているのか」という点です。制度の解説を重ねるなかで感じるのは、平均額や家計の数字を知るだけで、漠然とした不安が「見通し」に変わっていく、ということです。「思ったより厳しい」と受け止める方もいれば、「意外となんとかなりそう」と胸をなでおろす方もいます。いずれにせよ、出発点になるのは正確な数字を知ることです。

本記事では、年金受け取り開始~実際の支給までの手続きと、年金の平均額について元銀行員の筆者がご紹介します。夏季休暇で時間をとりやすい今だからこそ、現役世代であるうちから年金に興味を抱き、自身の年金生活について考えましょう。

1. この記事を読んだらわかる3つのポイント

  •  2026年度に改定された年金額と、男女で差がつく厚生年金・国民年金の平均受給額
  •  65歳以上・無職世帯(夫婦/単身)の毎月の収支と、貯蓄から補う不足額
  •  年金を受け取るための条件と、忘れると損をする「請求手続き」の流れ

2. 年金はいつからもらえる?受給要件と申請手続きとは?年金請求の4ステップ

まず「年金は何歳から、どうすればもらえるのか」について、あらかじめ知っておきたいところです。

老齢年金を受け取るには、まず受給資格期間を満たす必要があります。保険料を納めた期間や免除された期間などを合算して、10年以上あることが条件です。これを満たしていれば、原則として65歳から受け取れます。

気をつけたいのは、年金は自動では支給されないことです。受け取るには、自分で年金請求の手続きをする必要があります。

日本年金機構「年金請求のご案内(書面申請用)」1/4

日本年金機構「年金請求のご案内(書面申請用)」

出所:日本年金機構「年金請求のご案内(書面申請用)」

受給開始年齢に達する3カ月前になると、日本年金機構から「年金請求書」が届きます。これに必要事項を記入し、添付書類をそろえて、郵送または年金事務所の窓口に提出します。審査が終わると、支給が始まります。

年金請求書の審査結果については、受付日から1~2カ月程度で「年金証書・年金決定通知書」等で届き、通知書到着後、1~2カ月後に年金の支払いに関する年金振込通知書などが届き、支給がはじまります。つまり、申請書の受付からおよそ2~3カ月かかることを覚えておきましょう。

詳細についてや年金の加入記録に漏れがないか気になる場合や、繰上げ・繰下げを検討している場合は、請求の前に最寄りの年金事務所へ相談しておくと安心です。

「気づいたら請求し忘れていた」ということのないよう、案内が届いたら早めに動いておきたいところです。

3. 年金のしくみ

では、年金の仕組みについておさらいしましょう。

日本の公的年金は「2階建て」にたとえられます。

厚生年金と国民年金の仕組み2/4

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」

1階は20歳以上のすべての人が加入する「国民年金(老齢基礎年金)」、2階は会社員や公務員が上乗せで加入する「厚生年金」です。自営業やフリーランスの方は1階が中心になります。どのような働き方をしてきたかで、受け取る年金の姿は変わってきます。

4. 「ふつう」のシニアは年金を月いくらもらってる?

では、実際に現代のシニアはどれくらい年金を受給しているのでしょうか。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均の年金月額は次のとおりです。

  • 厚生年金:全体15万289円(男性16万9967円/女性11万1413円)
  • 国民年金:全体5万9310円(男性6万1595円/女性5万7582円)

厚生年金では男女で6万円ほどの差があります。働き方や賃金、加入期間の違いが反映されるためです。

平均だけでなく、加入歴による個人差が大きい点もおさえておきたいところです。

現役時代のうちから平均額を知り、「なぜこれほど年金の受給額に個人差が出るのか」を考えて興味をもち、できる対策について考えることが大切でしょう。

5. 65歳以上・無職夫婦世帯の生活費は月いくらかかっている?年金だけでは不足か

受け取る額がわかったら、次は「暮らしていけるのか」です。総務省の家計調査(2025年)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の毎月の家計は次のとおりです。

  • 実収入:25万4395円(うち社会保障給付22万8614円)
  • 消費支出:26万3979円
  • 非消費支出:3万2850円
  • 毎月の赤字:およそ4万2000円

収入の約9割を年金などの社会保障給付が占め、それでも毎月4万円ほどの赤字です。

このような平均的なデータを知り、「自分の場合はいくらになるか」を計算することで、老後資金の備えがより具体化されるでしょう。

6. 65歳より前に考えたい、年金受け取り前後をどう過ごすか?いつまで働くか?の具体的な計画

今回確認したように、年金は「手続きを知っているか」で受け取り方が変わります。

まずはねんきん定期便やねんきんネットで、受給資格期間(10年)を満たしているか、加入記録に抜けがないかを早めに確認しておきましょう。

また、年金は自動で支給はされず、請求しなければ受け取れません。

石津 大希
年金は、請求してはじめて受け取れる制度です。裏を返せば、しくみと制度、手続きさえ早めに押さえておけば、「もらい忘れ」はしっかり防げるということ。平均額に一喜一憂するより、まず自分の記録と受給要件を確かめておきたいですね。

受給開始の3カ月前に届く年金請求書は、しまい込まずにその場で目を通し、手続きから実際に支給までかかる間の生活費などを考えましょう。

もし繰上げ・繰下げを迷うなら65歳よりも前に考えたり、年金事務所へ相談をしたりなどの行動をしましょう。

数字と手続きを早めに押さえておくことが、「もらい忘れ」という、いちばんもったいない失敗を防いでくれます。

参考資料

石津 大希