定年を迎えても、生活のために働き続けている人は少なくありません。2026年9月20日に総務省統計局が公表した「統計トピックスNo.149」(敬老の日にちなんだ高齢者の統計)によると、65歳以上の就業者数は943万人で22年連続の増加となり、過去最多を更新しました。就業者全体に占める割合も13.8%と過去最高です。
見落とされがちなのは、その働き方の中身でしょう。65歳以上の就業者のうち非正規職員・従業員の割合は76.1%に達しています。年齢を重ねてからの就労は、現役時代とは違う年金・雇用保険のルールと隣り合わせになることが少なくありません。本記事では公表されたばかりの最新統計から高齢者の就業実態を確認したうえで、働きながら年金を受け取る際に知っておきたい公的制度を整理します。
1. そもそも「高齢者の非正規雇用」とはどのような状態か
「非正規雇用」とは、パートタイマーやアルバイト、契約社員、嘱託社員など、正規の職員・従業員以外の雇用形態を指します。
多くの企業では60歳で定年を迎えたあと、希望者を継続雇用制度により再雇用する仕組みを設けているのが実情です。
この際、雇用形態が正社員から嘱託・契約社員へ切り替わるケースが一般的で、給与水準も現役時代から下がることが珍しくありません。65歳以上で働く人の間で非正規雇用の割合が高くなる背景には、こうした再雇用の仕組みが影響していると考えられます。
2. 65歳以上の就業者はどこまで増えているのか
先ほど触れた「統計トピックスNo.149」によると、65歳以上の人口は3624万人で前年より2万人増え、総人口に占める割合は29.6%と過去最高を更新しました。
65歳以上の就業者数は943万人にのぼり、22年連続の増加で過去最多を記録しています。就業者総数に占める65歳以上の割合も13.8%と過去最高です。主な就業先は卸売業・小売業や医療・福祉などが挙げられています。
2.1 どんな産業で働く人が多いのか?
内閣府が公表した「令和8年版高齢社会白書」(総務省「労働力調査」に基づく)によると、令和7年の65歳以上の就業者数は産業別に次のようになっています。
1/3
- 卸売業,小売業:131万人
- 医療,福祉:122万人
- サービス業(他に分類されないもの):108万人
また、各産業の就業者全体に占める65歳以上の割合をみると、農業,林業が50.6%と最も高く、不動産業,物品賃貸業が29.0%、サービス業(他に分類されないもの)が22.4%と続きます。
農業,林業では、働き手のおよそ2人に1人を65歳以上が占めている計算です。
2.2 年代・男女で非正規雇用の割合はどう違うのか?
同白書には、役員を除く雇用者のうち非正規職員・従業員が占める比率も年齢階級別・男女別に示されています(令和7年)。
- 男性:55〜59歳10.5%、60〜64歳39.8%、65〜69歳64.9%
- 女性:55〜59歳57.3%、60〜64歳71.7%、65〜69歳83.7%
たとえば男性の60〜64歳では非正規比率が39.8%となっており、55〜59歳の10.5%と比べるとおよそ4倍に跳ね上がる計算です。60歳を境に雇用形態が大きく変わる実態がうかがえます。
定年後も働き続ける人が増えている背景には、健康寿命の延伸や年金だけでは生活費を賄いきれないという事情、あるいは社会とのつながりを保ちたいという意向など、要因はさまざまです。
ただし、非正規雇用への切り替えは、賃金の低下だけでなく、雇用保険や社会保険の適用条件にも影響することがあります。契約形態が変わるタイミングで、勤務時間や見込み年収が加入条件を満たしているかどうかを、あらためて確認しておくことが大切です。社内の人事担当者に確認するだけでなく、ハローワークや年金事務所といった外部の窓口にも相談できることは、意外と知られていません。
「これまでと同じように働いているつもりでも、制度上の扱いが変わっている」というケースは珍しくないため、早めに確認しておきましょう。次のページでは、年金を受け取りながら働く際に特に注意したいポイントを整理していきます。
