サラリーマンの専業主婦は国民年金の保険料を払わなくて良い、という制度は廃止すべきだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。
年金改革の議論は一時しのぎ
「公的年金は2割減る」という厚生労働省の報告書が話題になりました。あまり報道されませんでしたが、実は報告書の後半には年金制度を改革した場合の試算が載っているのです。
一つは「中小企業の短時間労働者も厚生年金に加入するようになれば、年金財政は改善する」というものです。年金制度が賦課方式、すなわち現役世代の払った年金保険料で高齢者を支える制度になっていることを考えると、それは当然のことです。
しかし、これは一時しのぎです。中小企業の短時間労働者が高齢者になった時には、今より多くの年金を受け取るようになるので、年金財政は今と同様に苦しい状態に戻るからです。
今ひとつは「75歳まで働いて75歳まで年金保険料を払い、75歳から年金を受け取る選択肢を認めると、現役世代と遜色ない年金額が受け取れる」といった内容です。これも同様です。彼らが75歳から多額の年金を受け取るということは、年金財政はその時には厳しくなっている、ということですから。
年金制度の抜本改革は支給額の減額と主婦優遇の廃止
年金制度を抜本的に改革する選択肢の第一は、支給額を大幅に減らすことです。「年金支給額を大幅に減らすから、普通のサラリーマンは年金だけで生活するのは難しいだろう。ただし、75歳まで働いて75歳から年金を受け取る選択をすれば、老後も何とか年金だけで暮らせるはずだ」ということですね。
人生100年時代ですから、「20歳から60歳まで40年間働いて、その後40年間を働かずに年金で暮らそう」というのは虫が良すぎるわけで、70歳か75歳くらいまで働こう、というわけですね。
今ひとつ、筆者が強く求めたいのは、「サラリーマン(公務員等を含む。以下同様)の専業主婦(サラリーウーマンの専業主夫を含む、以下同様)は国民年金保険料を払わなくて良い」という制度の廃止です。
現在、サラリーマンの専業主婦(パート収入が130万円未満であれば原則として専業主婦と見なされます)は、夫が厚生年金保険料を払っていることをもって、自分も国民年金保険料を払ったものと見なされて、老後は年金が受け取れるのです。
この制度を廃止して、サラリーマンの専業主婦から国民年金保険料を徴収すれば、年金財政は一気に改善します。900万人が年間20万円の保険料を支払い、しかも彼等が老後に受け取る年金額は今と変わらないのですから。
不公平解消の観点から、ぜひ
自営業者の妻は、専業主婦であっても国民年金の保険料を払わなくてはいけません。失業者の妻もです。つまり、サラリーマンである夫がリストラされると妻に請求書が来るようになるわけです。