ではないでしょうか。 帰省のタイミングは、親の暮らしぶりや体調の変化を直接確認できる貴重な機会です。

LIFULL介護が公表した最新の調査結果によれば、例年お盆休みが明けた直後の時期は、老人ホームへの問い合わせが約30%も急増するとのこと。

帰省した際に親の“老いのサイン”に気づき、慌てて施設探しに動き出すご家族が多いのです。

また、インフレが長引く昨今、「親の年金と貯金だけで将来の生活や介護をカバーできるのか」といった不安の声も多く聞かれるようになりました。

高齢世帯の家計は物価高による圧迫を受けやすく、万が一の事態への備えが手薄になっているケースも散見されます。

熊谷 良子

筆者は、すでに親の介護を経験した50歳代です。

一足先に「介護を卒業」した立場として、最近は同年代の友人たちから相談に乗る機会も増えました。

その中でよく耳にするのが、「お金やこれからの暮らしについて、親には言いづらいし、聞きにくい」という悩みです。一番身近な子供だからこそ遠慮して踏み込めず、いざという時に困ってしまう……。

自分の経験からも、その難しさや葛藤は痛いほどよくわかります。

そこで今回は、シニアの年金事情を概観したうえで、子世代のライフプランをも揺るがしかねない「介護にかかる本当の費用」や「老人ホーム入居後に潜むコスト」について各種リリースをもとに深掘りしてみたいと思います。

1. この記事の3つのポイント

  • 今のシニア世代が受け取る「年金額のリアル」。毎月数万円の赤字に陥る家計の実態
  • 一人「約2300万円」ともいわれる介護費用の総額と、物価高による老人ホームの想定外コスト
  • 将来子世代に重くのしかかる「実家のゴミ屋敷化」や空き家放置の隠れリスク

2. 親世代のリアルな年金額。男女別の厚生年金・国民年金の実態

親が本格的な年金生活に入ると、「親の年金だけで不自由なく過ごせるのだろうか」と気になり始めるものです。

実際のところ、今のシニア世代はどのくらいの年金を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、リアルな平均年金月額を男女別に見てみましょう。

2.1 〈厚生年金の平均受給月額(※国民年金部分を含む)〉

  • 全体平均:15万289円
  • 男性平均:16万9967円
  • 女性平均:11万1413円

2.2 〈国民年金(老齢基礎年金)の平均受給月額〉

  • 全体平均:5万9310円
  • 男性平均:6万1595円
  • 女性平均:5万7582円
熊谷 良子
インフレの昨今は「親の年金や貯蓄だけで施設費用などをまかなえるのか」という切実な不安の声をよく耳にします。

グラフの通り、現役時代の働き方によって年金額には大きな差があり、もし親が自営業などで夫婦ともに国民年金のみの場合、世帯の年金収入は月11万〜12万円程度にとどまるケースも珍しくありません。

親世代のリアルな収入事情を早めに把握しておくことが大切です。


一方で、総務省の家計調査によれば、65歳以上の無職世帯では、年金を中心とした実収入に対して生活費や税金などの支出が上回り、毎月数万円の赤字が生じる傾向があることがわかっています。

日々の生活費だけでも貯蓄の取り崩しが必要になる傾向があるなか、さらに大きな負担としてのしかかるのが「介護費用」です。

3. 年金だけでは到底足りない?一人「約2,300万円」ともいわれる介護費用の実態

親が健康なうちは貯蓄の範囲内でやり繰りできても、いざ介護が始まると、状況は一変します。

株式会社LIFULL seniorが運営する「LIFULL 介護」の試算によると、要介護状態で1年間の在宅介護を経たのち、有料老人ホームに5年間入居した場合、一人あたりにかかる介護費用の総額は2295万円にのぼるとされています。

もちろん介護度や入居する施設によって金額は異なりますが、親自身の年金と貯蓄だけでこの高額な費用を賄いきれない場合、不足分は子世代が支援することになりかねません。

3.1 物価高が直撃!「介護施設の値上げ」と「想定外の追加費用」リスク

さらに近年、物価高の影響で介護施設の費用負担も上昇傾向にあります。

株式会社Speeeが運営する「ケアスル 介護」の調査によると、入居時に提示された金額よりも現在実際に支払っている月額費用が増加した(高くなった)家族は、4人に1人以上(26.4%)に達しています。

また、施設から利用料の値上げを通知された経験がある家族は約4割(39.35%)にのぼり、その理由として「物価・光熱費の上昇(60.31%)」や「食料品・日用品の値上がり(48.97%)」が多く挙げられています。

こうした費用負担の増加を理由に、施設の転居や退去を検討・実行した家族が約34%(3人に1人)も存在するという厳しい現実があります。

熊谷 良子
施設費用の恐ろしいところは、こうした値上げだけではありません。

筆者自身も親の介護で痛感したのですが、パンフレットの基本料金は安く見えても、見学時に詳しく確認をしてみると、日用品代や通院の付き添い費用、レクリエーション代などが毎月の支払いにチリツモで加わっていくケースが多いのです。

結果的に予算をオーバーしてしまうケースが本当に多く、同年代の友人たちからも「こんなに追加でお金がかかるとは想定していなかった!」という悲鳴をよく聞きます。

3.2 実家のゴミ屋敷化や空き家リスクといった「隠れコスト」も

介護費用に加えて、親が住む「実家」の管理も子世代の貯蓄や労力を奪う問題として浮上しています。

親の体力が低下して日常の片付けが困難になり、実家がゴミ屋敷化してしまえば、将来の処分・片付けに数十万円から100万円超の業者費用がかかることがあります。

また、誰も住まなくなった実家を放置して「特定空家」に指定されると、固定資産税の優遇措置が外れて税負担が跳ね上がるリスクもあります。

4. 夏の帰省は「親の変化」に気づく絶好のタイミング。手遅れになる前のコミュニケーションを

 

実は、お盆休みが明けた直後の時期は、老人ホームへの入居に関する問い合わせが例年30%ほど急増すると言われています。

株式会社LIFULL seniorが運営する「LIFULL 介護」の『帰省時の親の衰え・違和感についての意識調査』によれば、帰省時に親の様子に衰えや違和感を覚えた人のうち、約7割(68.0%)が「歩行・運動機能」、半数以上(51.7%)が「記憶・認知機能」の異変を感じていることが分かっています。

このように、久しぶりの帰省で「歩行がおぼつかない」「記憶があやふやになっている」といった日常生活における親の”老いのサイン”を目の当たりにし、慌てて施設探しに動くご家族が多いのです。

介護の問題はある日突然発生するわけではなく、こうした日々の小さな違和感の積み重ねから始まっています。

もし親自身の資産や年金で介護費用や施設の追加コストを賄いきれなくなれば、その負担は子世代の家計や老後資金を直撃することになります。

久しぶりに家族が顔を揃える夏休みは、タブー視されがちな「お金」や「これからの暮らし方」について対話をする良いチャンスです。

「最近、買い物や片付けで困ることはない?」といった日常の延長線上から、少しずつ将来に向けた話し合いの糸口を見つけてみてはいかがでしょうか。

熊谷 良子

私自身も親の介護を経験しましたが、親子だからこそ「最近、足腰弱ってない?」と日常の異変には気づきやすい反面、肝心の「貯金や年金だけで施設のお金は足りそう?」といったリアルなお金の話は、親のプライドもあってかえって踏み込みにくいものです。

親も「子どもには金銭的な迷惑をかけたくない」と強がりを言いがちです。

だからこそ、いきなり通帳を見せてもらうのではなく、「物価も上がってるけど、毎月のやりくり大変じゃない?」と日常の話題から寄り添い、少しずつ”親の懐事情”と”将来の希望”をすり合わせていくことが、双方の家計を守る第一歩になると感じています。

参考資料