5. ライフイベントと年金の関係を「見える化」する

前章で触れたように、女性の厚生年金額が低くなる主な要因はライフイベントに伴う働き方の変化です。

これをカバーするためには、働き方が変わるタイミングで「将来の年金への影響」を夫婦や家族で共有しておくことが大切になります。

5.1 育休・産休期間中の年金保険料、どうする?

例えば、出産や育児休業の期間中は、「産前産後休業・育児休業等期間中の社会保険料免除制度」を利用することで、保険料の支払いが免除されます。

この制度の大きなメリットは、保険料を支払わなくても、将来の年金額の計算上は「保険料を全額納めた」ものとして扱われる点にあります(自営業やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者にも「産前産後期間の免除制度」があります)。

また、パートタイムで働く場合でも、近年は「被用者保険の適用拡大(社会保険の適用拡大)」が進んでいます。

「週の所定労働時間が20時間以上」「所定内賃金が月額8.8万円(年収106万円相当)以上」などの一定の条件を満たせば、パートタイムでも自ら厚生年金に加入し、将来の受給額(2階部分)を増やすことが可能です。

さらに、現在進められている年金制度改正では、この厚生年金加入のハードルとなっていた「企業規模要件」や「賃金要件(月額8.8万円以上)」を段階的に撤廃していく方針が示されており、今後は勤務先の規模や労働時間に関わらず、より多くの方が厚生年金に加入しやすくなる見込みです。

いわゆる「年収の壁」を意識した「目先の手取り」だけでなく、こうした制度を活用した「将来の年金増額」も考慮に入れた働き方の選択肢を持つことが、長期的な安心につながります。

6. 「ねんきんネット」を活用して想定外の出費に備える

記事冒頭で触れた約2300万円という生涯介護費用をはじめ、老後は医療費や住まいの修繕費など、想定外の出費が重なる可能性があります。

公的年金だけでこれらをすべて賄うのは難しいため、不足分を自助努力で補う資産形成が不可欠です。

そこで活用したいのが「ねんきんネット」です。マイナポータルと連携することでスマートフォンから簡単にアクセスでき、「もし今後、パートから正社員に働き方を変えたら」「受給開始を65歳から68歳に繰り下げたら」など、条件を細かく設定して将来の受給見込額をシミュレーションできます。

「毎月いくら足りなくなるのか」を具体的な数字として把握できれば、新NISAやiDeCoを活用して毎月いくら積み立てるべきかという現実的な目標額が見えてきます。

7. まとめにかえて

今回は最新の統計データから、女性の厚生年金受給額の実態について解説していきました。月額15万円以上の厚生年金を受け取る女性は約12.3%と、少数派であることが確認できました。

女性は結婚や出産、育児、そして親の介護といったライフイベントにより、男性と比較すると働き方の変更を余儀なくされやすいことが、将来の年金額に直結しているといえます。

公的年金だけで、老後資金や介護・終活の費用まですべてを賄うのは容易ではありません。

まずは「ご自身の現在地」を知るために、ねんきん定期便などで受給見込額を確認してみてはいかがでしょうか。

その際、ねんきん定期便は年齢によって記載内容が異なる点に注意しましょう。

50歳以上の場合は、現在の働き方のまま60歳まで納め続けたと仮定した「65歳からの年金見込額」が記載されるため、実際の受給額により近いリアルな数字を確認することができます。

一方で、50歳未満の場合は「これまでの加入実績に応じた年金額」が記載されており、今後の納付によって金額は増えていきます。

将来の不安を少しでも安心に変えるため、無理のない範囲で早めに老後資金準備を始めていきたいものですね。

8. 監修者コメント

熊谷 良子

老後資金の不安を解消するには、正確な現状把握と制度の理解が不可欠です。

産前産後・育休中の社会保険料免除制度など、利用できる公的制度は漏れなく活用しましょう。

その上で、新NISAやiDeCoといった非課税制度を上手に取り入れ、長期的な視点でコツコツと資産形成を進めていけたら良いですね。

参考資料

菅原 美優