6. 【20歳代~50歳代】89.1%が「ただの貯金では将来困る」と回答も、行動を阻む「わかっているけど動けない」壁

シニア世代を中心に貯蓄残高が積み上がる一方で、これから「貯蓄4000万円」を目指す現役世代には、厳しい壁が立ちはだかっています。

6.1 89.1%が回答「とりあえず貯金するだけでは将来が不安」

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金融教育スクール「FEラボ」を運営する株式会社トラストが2026年7月に実施した調査によると、現役世代の実に89.1%が「とりあえず毎月貯金しているだけでは、将来困ることがあると思う」と回答しています。

「貯金だけでは危ない」と頭では理解しつつも、30歳代では「生活費・物価高」を筆頭に「老後資金(57.7%)」「教育費(29.5%)」「住宅ローン(24.4%)」の負担が直撃し、悩みが複雑化しています。

さらにライフステージが進むにつれて、40歳代の「老後資金(64.7%)」、50歳代の「健康問題による収入減(30.6%)」へと出費の悩みが連鎖し、対策を先延ばしにしたまま「わかっているけど動けない」状態に陥っているのが実態です。

7. 心理的ハードルの裏にある「負債超過」というリアル

「貯金だけでは危ない」と自覚しつつも多くの現役世代が動けない背景には、単なる心理的な要因や目先の物価高だけでなく、家計を根本から圧迫する「負債(借金)」という構造的な問題があるのです。

先述のトラスト社の調査でも、30歳代の約4人に1人(24.4%)が「住宅ローン」をお金の悩みとして挙げていましたが、総務省の家計調査データ(2025年平均・二人以上の世帯)を見ると、その負債が現役世代の家計にどれほど重くのしかかっているかが浮き彫りになります。

同調査によると、世帯主が50歳以上の年齢階級では、貯蓄額が負債額を上回る「貯蓄超過」となっています。

しかし、50歳未満の現役世代においては、すべての年齢階級で負債額が貯蓄額を上回る「負債超過」に陥っているのが実態です。

7.1 【世代別・純貯蓄額】40歳未満は平均888万円の負債超過、50歳代からプラス転換へ

【負債超過の世代(50歳未満)】

  • 40歳未満:貯蓄994万円に対し、負債1882万円(純貯蓄額:マイナス888万円)
  • 40〜49歳:貯蓄1381万円に対し、負債1483万円(純貯蓄額:マイナス102万円)

【貯蓄超過の世代(50歳以上)】

  • 50〜59歳:貯蓄1756万円に対し、負債743万円(純貯蓄額:プラス1013万円)
  • 60〜69歳:貯蓄2843万円に対し、負債234万円(純貯蓄額:プラス2609万円)
  • 70歳以上:貯蓄2471万円に対し、負債81万円(純貯蓄額:プラス2390万円)

7.2 物価高×重い負債。ただ「真面目に働いて節約」だけでは大台突破は難しい…

このように、多くの現役世代は住宅ローンをはじめとする大きな負債を抱え、「実質マイナス」の極めて厳しいスタート地点から資産形成を進めなくてはなりません。

長引く物価高で日々の生活費が圧迫される中、同時に重い負債を返済していかなければならない現役世代にとって、ただ真面目に働いて節約に励むだけで「貯蓄4000万円」という高い壁を突破するのは、極めて至難の業だと言わざるを得ません。

8. まとめにかえて:予期せぬ事態に備える「お金の逃げ道」と分散投資のすすめ

本記事では、ふたり以上世帯のリアルな貯蓄額や、現役世代が直面する負債の現状についてデータとともに見てきました。

冒頭でも触れましたが、先日の大地震のような予期せぬ事態が起きた際、ご家族の生活を守るために第一に必要となるのは、当面の生活費を支えるための「手元の現金(生活防衛資金)」です。

筆者もファイナンシャル・アドバイザーとして日々ご相談を受ける中で、まずはこの生活防衛資金(一般的に生活費の3〜6カ月分程度)をしっかりと銀行預金などで確保しておくことが、いざという時の安心感に直結するとお伝えしています。

そのうえで、将来に向けた資産形成においては、一つの場所にすべてを集中させるのではなく、特徴の異なる資産へ分散しておくことが大切です。

物価高などでお金の実質的な価値が目減りするリスクに備え、長期的な視点で家計のバランスを整えることが、突発的な事態への対応力を格段に高めます。

被災された地域の一日も早い復興を心より願いつつ、皆様もこの機会に、ご自身の家計の現在地を確認し、いざという時の備えについて見直してみてはいかがでしょうか。

熊谷 良子

物価高や負債により、給与収入と節約だけで資産を築くのが難しい時代ですが、希望となるデータもあります。

野村総合研究所の推計(2025年2月)によれば、純金融資産1億円以上を保有する富裕層世帯は増加傾向にあり、その中には40歳代後半〜50歳代を中心とした会社員の「いつの間にか富裕層」が存在します。

彼らは親からの相続などに頼らず、給与収入に加えて計画的な「資産運用」を長期で継続したことで大台を突破しました。

日々の生活防衛資金を確保しつつ、特徴の異なる資産への分散投資や、中長期的な視点で資産を「運用で増やす」仕組みを取り入れることが、これからの時代を乗り切る大きなヒントとなりそうですね。

参考資料

9.1 【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

9.2 【ご参考】年間収入とは

総務省統計局の「家計調査」における「年間収入」とは、世帯全体の過去1年間の収入(税込み収入)です。以下1~6の収入の合計金額となっています。
1. 勤め先収入(定期収入、賞与等)
2. 営業年間利益(原材料費、人件費、営業上の諸経費等を除く。)
3. 内職年間収入(材料費等を除く。)
4. 公的年金・恩給、農林漁業収入(農機具等の材料費、営業上の諸経費等を除く。)
5. その他の年間収入(預貯金利子、仕送り金、家賃収入等)
6. 現物消費の見積り額

渡邉 珠紀