5. 現役受給者の実態は?シニア世代が実際に受け取っている年金月額のデータ
前章においては、年収別の将来の年金支給額の目安を算出しました。
それでは、現在の高齢者の方々は、実際に国からどれくらいの年金を受け取っているのでしょうか。リアルな統計データを見てみましょう。
政府がまとめた「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(厚生労働省年金局)のデータによると、基礎年金を含む厚生年金保険の受給権者における支給額別の分布は以下の通りとなっています。
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 20万円未満の割合:81.2%
- 30万円以上の割合:0.12%
2階建ての年金を同時に受給している層の中で、毎月15万円以上の年金を確保できている人は全体の約49.8%と、ほぼ半分を占めています。
ここで注目したいのが、今回のシミュレーション結果である「平均年収800万円・38年勤務」の受給目安、約20万6000円という金額です。
この水準は分布上「20万円以上」の層に該当しますが、そこに入っている受給者は全体のわずか18.8%にすぎません。
裏を返せば、残る約81.2%の受給者は月20万円未満で暮らしているということになります。平均年収800万円を38年間維持するという条件が、いかにハードルの高いものかがうかがえます。
先ほどの早見表と照らし合わせると、月15万円以上を確保するには平均年収でおよそ500万円が必要という計算になり、これが受給者のちょうど半数のラインとおおむね重なる点も興味深いところです。
ただし忘れてはならないのは、これらの統計データにある金額はすべて「額面」の数字であり、実際の手取り収入はここから税金や保険料が引かれた状態になるという事実です。
6. 見落とし厳禁!老後の年金から差し引かれる税金と社会保険料のリアル
先ほど「平均年収800万円で38年間勤務した場合」をベースに将来の年金支給額を計算しましたが、あの金額は口座にそのまま振り込まれるわけではありません。
在職中の毎月の給料と同じように、公的年金からも所定の税金や社会保険料が自動的に天引きされるため、手元に残る実質的な手取り額は目減りすることになります。
毎月の年金から差し引かれる主な控除項目には、以下のような項目が存在します。
- 所得税
- 住民税
- 健康保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)
- 介護保険料
ここからは公的な統計資料として、総務省の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」に掲載されている、65歳以上の単身無職世帯の平均的な家計データを確認してみましょう。
- 実収入(額面の金額):13万1456円
- 可処分所得(手取り収入):11万8465円
- 消費支出:14万8445円
- 非消費支出(税金・社会保険料):1万2990円
このデータが示す通り、年金などによる額面の収入が13万1456円あったとしても、そこから税金や保険料として1万2990円が引かれるため、実際に使えるお金は11万8465円まで減少します。
天引きされる具体的な金額はお住まいの自治体や年金収入の多さ、扶養家族の有無によって上下しますが、一般的な目安として額面の10%〜15%程度が差し引かれるケースが多く見られます。
6.1 「月20万6000円」の手取りはいくらになるのか
この10%〜15%という目安を、今回の試算結果である額面20万6000円に当てはめてみましょう。
- 額面:月20万6000円
- 差し引かれる税金・社会保険料(10〜15%):約2万1000円〜3万1000円
- 手取りの目安:約17万5000円〜18万5000円
額面では20万円を超えていても、実際に自由に使えるお金は18万円前後まで下がる計算です。
先ほどの家計調査における65歳以上・単身無職世帯の消費支出は月14万8445円でした。この水準と比べると、手取り18万円前後であれば毎月およそ3万円の余裕が生まれる計算になります。
ただしこれはあくまで単身世帯の平均支出との比較です。配偶者がいる世帯や、住宅ローンの残債、持病による医療費の負担がある場合には、必要となる金額は大きく変わってきます。
また、天引きされる税・社会保険料の水準は自治体や個々の状況によって差があります。ご自身の正確な見込み額については、お住まいの市区町村や年金事務所でご確認ください。
なお、年金には条件を満たすことで上乗せされる公的な給付金も存在します。あわせて確認しておきたい方は、以下の記事もご参照ください。
年金に上乗せでもらえる「年金生活者支援給付金」とは?対象者・給付額・申請方法を解説 緑色・薄緑色・薄橙色の封筒が届いたら確認
7. 監修者コメント:「額面のシミュレーション」を過信しないために
今回のシミュレーションでは、平均年収800万円・勤続38年という好条件でも、額面の年金月額は約20万6000円にとどまり、手取りベースではさらに17万5000円〜18万5000円まで下がるという結果になりました。しかも、実際にこの水準の年金を受け取れている人は全体の18.8%に過ぎません。
「平均年収」や「モデル世帯」の数字を自分ごととして受け止め、実際の受給者データと照らし合わせないまま老後の資金計画を立てようとしてしまう方は多いです。今回の早見表のように、ご自身の年収に近い水準で試算し、さらに全体の中でどの位置にいるのかを確認することで、より現実的な見通しが立てられます。
また、年金生活者支援給付金のように、所得が一定基準以下であれば申請によって上乗せを受けられる制度もあります。年金額のシミュレーションだけで安心・不安を判断するのではなく、公的年金以外の上乗せ制度や自助努力もあわせて確認し、額面と手取りの両方を踏まえた資金計画を立てることをおすすめします。
8. まとめ:老後を安心して迎えるために年金構造と実質手取りを正しく把握しよう
今回の記事では、日本の公的年金が持つ基本的な仕組みを踏まえた上で、「平均年収800万円・38年間勤務」というモデルケースにおける将来の受給見込み額について詳しく見てきました。
この条件で試算を行った結果、基礎年金と厚生年金を合算した年金月額は約20万6000円(額面)になることが分かりました。
しかしながら、実際のシニア世代の給付分布を確認すると、この水準に到達している「月20万円以上」の受給者は全体の約18.8%にとどまります。誰もがこの金額を手にできるわけではなく、現役時代の働き方によって受給額には大きな開きが出るのが現実です。
加えて、老後の年金は額面そのままの金額を受け取れるわけではなく、税金や社会保険料の天引きによって実際の手取り額は10%〜15%ほど少なくなり、今回のケースでは約17万5000円〜18万5000円が目安となります。
豊かなシニアライフの生活設計を立てるためには、単に額面の試算額を見るだけでなく、公的制度の仕組みや手元に残る最終的な手取り額までを見越して、多角的に資産形成を計画していくことが肝要です。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- LIMO「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説 【元厚労省担当記者監修】年収200万~700万円の年金額は?「ねんきん定期便」の額面と実際の手取りの違い、男女別の平均受給額」
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中本 智恵


