将来手にする公的年金について、「一体どの程度の金額が支給されるのか」「老後の生活をまかなえる水準なのか」と不安や疑問を抱く方は少なくありません。
受け取れる年金の支給額は、現役時代の年収だけでなく、加入する年金制度の区分やこれまでの就労形態によって大きく変動します。
とりわけ、ベースとなる国民年金だけを受け取るのか、あるいは厚生年金の上乗せがあるのかによって、将来の受給額には決定的な違いが生まれます。
そこで今回は、日本の公的年金が持つ基本的な仕組みをおさらいしつつ、「平均年収800万円・勤続期間38年」という具体的なモデルケースを設定して、将来もらえる年金額の目安をシミュレーションしていきます。
さらに、年収300万円〜800万円の年収別早見表、現役シニア世代のリアルな受給額データ、支給額から天引きされる税金・社会保険料のインパクトについても解説し、老後生活のリアルな資金水準を紐解いていきます。
なお、公的年金の2階建て構造や天引きの仕組みに関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. この記事の3つのポイント
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「平均年収800万円・勤続38年」の年金額は月約20万6000円(額面) -
ただし月20万円以上を受け取っている人は、受給者全体の18.8%にとどまる -
額面から税金・社会保険料が10〜15%ほど引かれ、手取りの目安は約17万5000円〜18万5000円
2. 老後に支給される公的年金の仕組みとは?「国民年金」と「厚生年金」の基本構造
たとえ生涯の平均年収が800万円という高水準であっても、38年間にわたる現役生活の中で厚生年金の加入対象だったか否かによって、老後の年金収入には非常に大きな格差が発生します。
具体的な試算に入る前に、まずは日本の公的年金がどのような制度設計になっているかを確認しておきましょう。
我が国の年金制度は、一般的に「2階建て」と呼ばれる構造で運用されています。
その基盤となる1階部分がすべての国民に共通する「国民年金(基礎年金)」であり、その上に会社員などが上乗せして加入する2階部分の「厚生年金」が積み上がる仕組みです。
- 第1号被保険者:フリーランスや自営業者、学生、未就業の方など
- 第2号被保険者:民間企業の会社員や公務員など
- 第3号被保険者:第2号被保険者の扶養に入っている配偶者
1階部分の国民年金は、日本国内に住所を持つ20歳から60歳までの全員に加入の義務がある一律の制度です。
毎月の保険料が定額で設定されているため、将来受け取る基礎年金の金額についても個人ごとの格差が生じにくいのが特徴です。
一方の厚生年金は、基礎年金にプラスして支給される仕組みで、主に企業に雇用されている会社員や官公庁に勤める公務員などが対象となります。
こちらは現役時代の報酬額に連動して保険料が算出されるため、将来の受給額に大きな個人差が生まれやすいという性質を持っています。
それでは次章にて、これら2つの年金を両方とも受給できるケースを想定し、「平均年収800万円」「加入期間38年」という条件で、将来的に毎月いくら年金がもらえるのか具体的な試算結果を見ていきましょう。
3. 【シミュレーション】平均年収800万円で38年間勤務した場合の年金受給額
ここでは、現役時代の平均年収を800万円と設定し、民間企業に38年間サラリーマンとして勤務したケースを想定して、以下の条件に基づいて将来の年金受給額を算出します。
- 2003年4月以降、厚生年金に38年間加入している
- 国民年金は20歳から60歳までの40年間のうち、学生納付特例(追納なし)などにより実質納付期間が38年と仮定する
3.1 現役時の収入に応じた「厚生年金」の試算結果
老後に支給される厚生年金の額は、国が定める所定の計算手順に則って計算されます。
年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額
※「経過的加算」とは定額部分と老齢基礎年金の差額を埋めるための給付であり、「加給年金」は所定の要件を満たす配偶者や子が家族にいる場合に上乗せされる家族手当のような制度です。
今回の試算値においては、受給額の大部分を構成する「報酬比例部分」の計算にフォーカスし、経過的加算や加給年金額といった各種の上乗せ要素は考慮せずに算出を行っています。
この報酬比例部分は、加入時期に応じた以下の計算式を用いて弾き出されます。
報酬比例部分=A+B
- A(2003年3月までの加入期間):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
- B(2003年4月以降の加入期間):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
まず「平均標準報酬月額」とは、2003年3月より前の加入期間において、各月の標準報酬月額の総額を加入した月の数で割って求めた平均値です。
一方、2003年4月以降の期間に適用される「平均標準報酬額」は、毎月の標準報酬月額だけでなく、支払われた賞与(ボーナス)も含めて算定期間の月数で割ったものになります。
一例として、2003年4月以降に38年にわたって厚生年金を納め続け、現役時代の平均年収が800万円だった場合、年間のボーナスを含めた総収入の12分の1である約66万7000円が平均標準報酬額の目安となります。
この前提を用いて報酬比例部分を簡易的にシミュレーションすると、厚生年金単体での受給額は月額約13万9000円となります。
※標準報酬月額には等級ごとの上限が設けられているため、月給部分が高い方の場合、実際の平均標準報酬額は上記の目安を下回ることがあります。
3.2 ベースとなる「国民年金(老齢基礎年金)」の支給額
会社員として厚生年金に加入していた方は年金制度の「第2号被保険者」となるため、将来は2階建ての両方の年金を受け取ることができます。
ここからは、その土台を支える1階部分にあたる国民年金(老齢基礎年金)の支給金額をチェックしていきましょう。
基礎年金の支給額については、国が定めた次の数式に基づいて計算が行われます。
84万7300円に対し、「保険料を納めた月数 ÷ 加入可能年数(12か月換算)」を乗じて算出します(※昭和31年4月2日以後生まれの方が対象)。
今回のケースのように、保険料を実際に納めた期間が通算38年間(456か月)であると仮定した場合、国民年金としての受給額は月額約6万7000円という結果になります。
3.3 厚生年金と国民年金の合計額
これらを合算すると、「平均年収800万円」の条件で「38年間」会社員を務め上げた場合、老後に手にする金額は次のようになります。
- 厚生年金(報酬比例部分):月額約13万9000円
- 国民年金(老齢基礎年金):月額約6万7000円
- 合計月額(額面):約20万6000円
では、年収がこの水準に届かない場合、年金額はどう変わるのでしょうか。次のページで、年収300万円から800万円までの早見表を確認していきましょう。
4. 【年収別早見表】平均年収300万円〜800万円・勤続38年の年金月額はいくら?
ここまでは平均年収800万円のケースを見てきましたが、ご自身の年収に近い水準ではどうなるのかが気になるところです。
同じ「勤続38年」という条件のまま、平均年収だけを変えて試算した結果が以下の一覧です。
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※2003年4月以降に38年間(456か月)厚生年金へ加入し、国民年金の納付済期間も38年間と仮定してLIMO編集部が試算。経過的加算・加給年金は含みません。標準報酬月額の上限の影響は考慮していないため、あくまで目安としてご覧ください。
現役時代の平均年収別の年金受給額(目安)
- 平均年収 300万円の場合
- 厚生年金(月額):約5万2000円
- 国民年金(月額):約6万7000円
- 合計月額(額面):約11万9000円
- 平均年収 400万円の場合
- 厚生年金(月額):約6万9000円
- 国民年金(月額):約6万7000円
- 合計月額(額面):約13万6000円
- 平均年収 500万円の場合
- 厚生年金(月額):約8万7000円
- 国民年金(月額):約6万7000円
- 合計月額(額面):約15万4000円
- 平均年収 600万円の場合
- 厚生年金(月額):約10万4000円
- 国民年金(月額):約6万7000円
- 合計月額(額面):約17万1000円
- 平均年収 700万円の場合
- 厚生年金(月額):約12万1000円
- 国民年金(月額):約6万7000円
- 合計月額(額面):約18万9000円
- 平均年収 800万円の場合
- 厚生年金(月額):約13万9000円
- 国民年金(月額):約6万7000円
- 合計月額(額面):約20万6000円
ここから読み取れるのは、平均年収が100万円変わるごとに、将来の年金月額がおよそ1万7000円ずつ動くという関係です。
年収300万円と800万円では、毎月の年金額に約8万7000円、年間では約104万円もの開きが生じる計算になります。
一方で、土台となる国民年金の約6万7000円は年収にかかわらず共通です。年収差がそのまま年金差になるわけではなく、差がつくのは2階部分だけである点も押さえておきたいところです。




