Microsoft、Alphabet(Google)、Amazon、Meta——AI開発を牽引する米国の「ハイパースケーラー」4社。ハイパースケーラーとは、世界規模でデータセンターを保有・運営し、大量の計算資源を自社サービスや外部企業に供給する巨大IT企業を指します。
各社が四半期あたり数百億ドル規模の巨額投資をデータセンターなどのAIインフラに注ぎ込んでいますが、その投資を「どこで、どうやって回収するのか」は意外と知られていません。実は同じように見えるAI戦略でも、自社でビジネスソフトウェアを持っているか、あるいは広告が主体かによって、その収益構造には明確な差が生まれ始めています。一体なぜ、特定の事業構造を持つ企業のクラウドが急成長しているのでしょうか。
この秘密について、元機関投資家の泉田良輔氏が事業構造と財務体質を分析し、業績好調の本当の理由を解説します。
1. この記事の3つのポイント
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泉田氏は、AIへの巨額投資を回収する主戦場は「クラウド事業」だとみている -
ビジネスソフトウェアを持つMicrosoftとGoogleのクラウド成長率が急伸している -
泉田氏は、法人向けの「AIによる固定費削減提案」が最も企業に刺さるとみている -
クラウドの外部売上を持たないMetaは、AIによる広告効率化が自社の売上に跳ね返りかねないジレンマを抱える
2. AI投資の回収は「クラウド事業」にかかっている
現在、株式市場ではAI半導体メーカーなどの関連銘柄が大きな注目を集めていますが、その発注元であるハイパースケーラー自身の状況を理解しなければ、AIトレンド全体の行方を見通すことはできません。泉田氏は、各社が四半期あたり数百億ドル規模の設備投資(データセンターなどの有形固定資産の購入)を行っている中で、その巨額の投資を回収する受け皿として「クラウド事業」が極めて重要な役割を担っていると指摘します。
実際に、直近の2026年4-6月期の決算数値を見ると、クラウド事業が各社の「稼ぐ柱」として大きく成長していることがわかります。
Alphabetの「Google Cloud」部門は、売上高が前年同期比82%増の248億ドルに達しました。さらに注目すべきは営業利益率で、前年同期の20.7%から35.6%へと大幅に改善しています。これは、先行して行ってきたインフラ投資の回収が着実に進み、利益を生み出すフェーズに入っていることを示しています。
また、Amazonのクラウド部門である「AWS(Amazon Web Services)」は、売上高が422億ドルと4社の中で実額トップを誇ります。営業利益率も32.9%から39.4%へと上昇しており、利益率が10%未満にとどまる主力のeコマース事業を支える、同社最大の収益源となっています。
Microsoftのクラウド事業を含む「Intelligent Cloud」セグメントも、売上高393億ドル(前年同期比32%増)、営業利益率40.6%という極めて高い収益性を維持しています。
(※Microsoftの「Intelligent Cloud」セグメントにはAzure以外の事業も含まれており、Azure単体の売上実額は非開示です)
各社のクラウド事業の売上推移(2023年4-6月期〜2026年4-6月期・四半期・億ドル)1/4
出所:各社のSEC EDGAR 8-K Exhibit 99.1を基にイズミダイズム作成。図には比較の参考としてOracleのクラウド事業も併記しています
泉田氏は、これまで期待先行で語られてきたAIの収益化について、次のように分析します。
「クラウドサービスもAIを載せることによって顧客に付加価値を提供しますよっていう話が元々あったんですよね。それが本当にそうなのかっていう議論はずっとされてきたんだけども、数字として見えてきたのは今回の四半期が初めてなんじゃないかなって気がします」
3. クラウド3社の明暗を分ける「ビジネスソフトウェア」の有無
クラウド事業の売上実額ではAWSが首位を独走していますが、「成長率」という観点で見ると競争環境に変化の兆しが現れています。
2026年4-6月期の各社クラウド事業の前年同期比成長率は、Google Cloudが+82%、MicrosoftのAzureが+43%(現地通貨ベース=為替変動の影響を除いた、会社開示の成長率)と際立った伸びを示しました。一方で、AWSの成長率は+37%でした。AWSの成長率自体は過去5四半期連続で加速しており好調を維持していますが、泉田氏はGoogle CloudやAzureと比べるとAWSの伸びは見劣りしてきているとして、相対的な立ち位置の変化を指摘しています。
各社のクラウド売上の前年同期比成長率の推移(2023年4-6月期〜2026年4-6月期)2/4
出所:各社のSEC EDGAR 8-K Exhibit 99.1を基にイズミダイズム作成。図には比較の参考としてOracleのクラウド事業も併記しています
なぜ、同じようにAIへ巨額投資を行っているにもかかわらず、成長率にこれほどの差が生まれているのでしょうか。泉田氏の見立てによれば、その鍵を握るのは「ビジネスソフトウェア(法人向け業務ツール)を持っているかどうか」だと言います。
MicrosoftとGoogleは、クラウド基盤の上で動く法人向けの業務ソフトウェアを自社で持っています。泉田氏は、この事業構造の違いが成長率の差に表れていると分析します。
「ビジネスソフトウェア、みんな一口に『AI、AI』って言うんだけれども、ビジネスソフトウェアにAIが乗った会社の方が伸び率が高くなってるなっていう風には僕には見えます」
これはあくまで泉田氏の独自の分析による見解ですが、クラウドインフラを手がけるだけでなく、その上で動く業務アプリケーションとAIをセットで提供できる企業が、顧客からより高い評価を得ているという見方です。