6. 激しい需給戦の中、個人投資家はどう立ち回るべきか
個人の信用買いと機関の空売りが激しくぶつかり合うサンリオ株。この波乱含みの相場において、私たち個人投資家はどのように立ち回るべきなのでしょうか。泉田氏は、投資家のポジション(現在の投資状況)ごとに明確な指針を示しています。
まず、自己資金のみで「現物株」として保有している投資家です。サンリオはROE(自己資本利益率)が41.6%(決算短信より)という極めて高い水準を誇ります。
これは、会社が株主の資本を使って非常に効率よく利益を生み出していることを意味します。現物であれば追証の心配はないため、この高いROEによる複利効果を信じて「長期のガチホ(しっかりと保有し続けること)」で問題ありません。
むしろ、会社側もそうした長期目線の株主を望んでいます。
次に、現在「信用買い」をしている投資家です。前述の通り、短期的な急落時には売りが売りを呼ぶ雪崩に巻き込まれ、ヘッジファンドの思うつぼになるリスクがあります。
そのため、どこまで下がったら損切りをするのか、明確な「撤退タイミング」をあらかじめ決めておくなど、シビアな判断が求められる局面です。
そして、現在「ポジションを持たない(まだ買っていない)」投資家です。需給の戦いが激しい間は、無理に手を出さず「様子見」に徹するのが賢明です。
需給が落ち着き、株価がしっかりと上がりだしたのを確認してから買っても決して遅くはありません。
中には、空売り機関の動きを見て「自分も一緒に空売り(信用売り)をして儲けよう」と考える個人投資家もいるかもしれません。しかし泉田氏は、この「小判ザメ戦法」には警鐘を鳴らします。
「ヘッジファンドに便乗して個人が信用売りする『小判ザメ戦法』は、情報戦やスピードで機関に出遅れるため難しいです」
機関投資家は圧倒的な情報量とシステムを持っており、彼らが買い戻し(ショートカバー)に転じる瞬間に個人がついていくのは至難の業です。
最終的に、この需給の戦いに決着をつけるのは何でしょうか。泉田氏の結論は明快です。
「鍵を握るのは企業の決算、つまりファンダメンタルズです」
信用の買い残も空売り残高も多い現在のサンリオ株は、ちょっとしたニュースで上下に大きく動きやすい状態にあります。
短期的な株価の動きは需給によって決まりますが、中長期的な株価の方向性を決めるのは、結局のところ企業が稼ぎ出す利益(ファンダメンタルズ)です。次の決算で会社がポジティブサプライズを出して空売り機関を黙らせるのか、それとも失望売りを誘うのか。
投資家は、目先の株価の乱高下に惑わされることなく、企業の「稼ぐ力」を冷静に見極める必要があります。
※本記事は決算資料および動画内で語られた情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。
参考資料
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日