そこで筆者は、家事労働のあれこれについて細々した作業を何度も要求するのではなく、一つのプロジェクトとして一任する方針に転換。またそれぞれの家事の範囲も明確にし、料理は後片付けまで、ゴミ捨ては次の袋準備までと共通認識をすり合わせました。やるべき範囲と終わらせるべき時間を伝えた上で「この家事を〇〇時まであなたに任せるからよろしくお願いします」「〇〇時には××をするので、それまでに掃除を終わらせてほしい」と言うようにしました。

このやり方を取り入れたところ、筆者夫婦にはピタリとハマりました。夫は最初こそ不慣れでやるべき範囲を上手にこなせなかったものの次第に慣れてテキパキと動けるようになり、筆者の夫の家事に対するストレスも軽減。

ここで重要なのは、やり方については本人に一任すること。せっかく頑張ったのに「やり方が違う」と嫌な顔をされればやる気もなくなってしまうのは、自分に置き換えてみても同じです。また夫の性格上、あれこれやり方を細かく指示をされるより、「ここからここまでの範囲の中でプロジェクトを成功させるために自由にやって」と言われた方がやる気が出たのでしょう。

家事を“やらせる”ことより、“モチベーションを上げる”ことの大切さ

筆者はこれまで、夫に何か家事をお願いした時に想定外の状態になっていたことで「せめてこれくらいはやってよ」という失望感からイライラを募らせていました。これは、「これをお願いしたのなら、他のあれもこれもやるに違いない」と勝手に期待してハードルを上げていたからです。

夫も夫で、本人なりにやったつもりなのに筆者からあれこれ「もっとこうやってよ」と細かく言われたり、少し休憩してから取りかかろうとしていたタイミングで「まだやらないの?」と急かされたりすることでストレスを感じ、家事に対するやる気もどんどん削がれていったのでしょう。

作業ではなくプロジェクトを一任する方針に変えて以降、夫は洗剤や掃除用具をネットで調べて購入したり、「こうやった方が簡単にできることに気付いたよ」と自ら見つけた効率の良いやり方を筆者に教えてくれたりするように。プロジェクトを一任したことでモチベーションがアップしただけでなく、質の向上や創意工夫して家事をこなす方向に考え方が変わっていったようでした。

筆者もこの一件を通して、相手への要求や物の言い方ひとつで物事が大きく変わることを再認識。たかが家事分担ですが、いかに相手のやる気を出させる方向に導けるのかは、夫婦間のコミュニケーションを考える上で非常に重要な視点だと感じました。

これはあくまで筆者夫婦のうまくいったケース。しかし、このようにお願いの仕方ややるべき家事範囲の明確化などを通して今より状況が良くなることもあるかもしれません。夫婦の家事分担で悩んでいる方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

秋山 悠紀