「将来、年金はいくらぐらいもらえるのか」そんな疑問を抱く方もいるかもしれません。令和8年度の年金額は、国民年金(基礎年金)が前年度比1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げとなり、6月15日の年金支給日には改定後の新しい金額が実際に支給されました。

物価や賃金の変動に伴う増額改定が実施された今、将来設計をリアルに考える重要性が高まっています。今回は厚生労働省の資料をもとに、ライフコースに応じた年金額の概算や、女性の働き方と将来の年金額の関係について分かりやすく解説します。

1. 【女性の厚生年金】33年勤務「平均月収35.6万円」の場合、将来の年金額はいくら?

働き方が多様化する今、キャリアを継続してきた女性が「将来、自分はどのくらいの年金を受け取れるのか」を知ることは、ライフプランニングの第一歩です。

厚生労働省の「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」から、それぞれのケースにおける支給額(令和8年度)と現役時代の前提条件を一覧で見てみましょう。

【多様なライフコースに応じた年金額(概算)】2/5

【多様なライフコースに応じた年金額(概算)】

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」

1.1 ケース①:女性・厚生年金期間中心(20年以上)

年金月額(見通し)

  • 令和7年度:13万2117円
  • 令和8年度:13万4640円(前年度比 +2523円)

経歴の前提条件

  • 平均厚生年金期間:33.4年
  • 平均収入:35.6万円(※賞与含む月額換算。年収換算で約427万円)

令和8年度の内訳

  • 基礎年金:7万1881円
  • 厚生年金:6万2759円

正社員等として約33年間着実にキャリアを積み、平均年収約427万円で推移した場合(ケース①)、受給額は月額13万4640円となる見込みです。

厚生年金の加入期間や現役時代の平均収入によって、将来の受給額は大きく変動します。今回の改定で各ケースとも増額となりましたが、住居費や生活費を考えると、この金額をベースに「不足分をどう準備するか」が鍵となります。

1.2 ケース②:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)

《年金月額》令和7年度:6万636円 → 令和8年度:6万1771円

  • 平均厚生年金期間:6.5年
  • 平均収入:25.1万円
  • 内訳(令和8年度):基礎年金 5万3119円/厚生年金 8652円

1.3 ケース③:女性・国民年金(第3号被保険者期間)中心(20年以上)

《年金月額》令和7年度:7万6810円 → 令和8年度:7万8249円

  • 平均厚生年金期間:6.7年
  • 平均収入:26.3万円
  • 内訳(令和8年度):基礎年金 6万9016円/厚生年金 9234円

1.4 ケース④:男性・厚生年金期間中心(20年以上)

《年金月額》令和7年度:17万3457円 → 令和8年度:17万6793円

  • 平均厚生年金期間:39.8年
  • 平均収入:50.9万円(※賞与含む月額換算。年収換算で約610万円)
  • 内訳(令和8年度):基礎年金6万9951円/厚生年金 10万6842円

1.5 ケース⑤:男性・国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)

《年金月額》令和7年度:6万2344円 → 令和8年度:6万3513円

  • 平均厚生年金期間:7.6年
  • 平均収入:36.4万円
  • 内訳(令和8年度):基礎年金 4万8896円/厚生年金 1万4617円

これらの年金額の例を見ても分かるように、厚生年金の加入期間や現役時代の平均収入によって、将来の受給額は大きく変動します。物価や賃金の変動に伴う改定により、令和8年度は各ケースとも増額となる見通しですが、自身のライフコースがどのパターンに近いかを知っておくことは、老後資金を計画する上で非常に重要です。

2. 【男女の賃金格差】月額13.9万円の差と将来の年金への影響をみる

将来の厚生年金額を決定する「報酬比例部分」に直結するのが、現役時代の賃金水準です。厚生労働省が発表した最新の「令和7年(2025年)賃金構造基本統計調査」のデータから、年齢階級別の賃金カーブを見てみましょう。

男女別に賃金カーブをみると、その上昇幅とピークの金額には依然として大きな開きが存在します。具体的には、男女のピーク時の賃金には月額13万9900円もの差があり、この現役時代の格差が将来受け取る厚生年金額の大きな開きへと直結しています。

2.1 男性の賃金ピーク

  • 55〜59歳で「445.6千円」
  • 20〜24歳の賃金を100とすると181.4まで大きく上昇し、その後下降します。

2.2 女性の賃金ピーク

  • 45〜49歳及び55〜59歳で「305.7千円」
  • 20〜24歳の賃金を100とした指数は127.6に留まり、男性に比べて賃金の上昇が緩やかとなっています。

この格差の背景には、ライフイベントに伴うキャリアの中断や、管理職比率の違いなどが影響していると考えられます。将来的に誰もが安定した年金受給を目指すには、単なる就業継続だけでなく、男女の賃金格差そのものを是正し、女性の賃金カーブを底上げしていく社会的な仕組みづくりが不可欠です。

3. 【女性の働き方】30歳代の正規雇用率「増加」傾向、共働き前提のライフプランへ

将来の年金受給額を左右するのは、現役時代の就業形態と期間です。内閣府「令和7年版男女共同参画白書」の「ライフコースの希望」によると、未婚女性の理想はかつての「専業主婦コース」から、仕事と育児を両立する「両立コース」へと大きくシフトしており、令和3年には34.0%と最多になっています。男性側もパートナーに「両立」を期待する割合が39.4%まで急増しており、男女ともに共働きを前提としたライフプランが主流となりました。

ライフコースの希望の推移4/5

ライフコースの希望の推移

出所:内閣府男女共同参画局「令和7年版男女共同参画白書」

3.1 M字カーブの底が浅くなる傾向に

一方で、女性の「正規雇用比率」の推移を見ると、出産・育児期に正規雇用が減少するいわゆる「M字カーブ」の底が以前より浅くなっており、30歳代の女性の正規雇用率は上昇傾向にあります。

正規雇用比率の推移(男女、年齢階級別)5/5

正規雇用比率の推移(男女、年齢階級別)

出所:内閣府男女共同参画局「女性版骨太の方針2025」

しかし、男性の正規雇用率が約8割で推移する背景がある一方で、女性はライフイベントに合わせてパートタイムなど柔軟な働き方を選択するケースも多く見られます。

自身のペースに合わせた働き方が可能になった反面、将来の年金額という視点で見ると、就業形態の変更が受給額に影響を与える側面もあります。先述のモデルケース(厚生年金33年・月額13.4万円)のような受給額を目指す場合は、多様な働き方を選びつつも、社会保険(厚生年金)の適用拡大などをうまく活用し、厚生年金への加入期間をできるだけ長く維持していくことが一つのポイントとなります。

4. まとめにかえて

今回は、すでに支給が始まっている令和8年度の年金額改定と、働き方による将来の受給額の違いについて解説しました。改定率は国民年金で1.9%、厚生年金で2.0%の引き上げとなり、モデル世帯では月数千円の増額となりました。

一方で、厚生年金の加入期間や現役時代の平均収入によって受給額には大きな差が生じること、そして最新の賃金データからも男女の格差が将来の年金水準に直結する現実が見えてきました。

まずは「ねんきん定期便」などで自身の加入状況を確認し、将来の支給見込み額を把握することが第一歩です。その上で、iDeCoやNISAなどの資産形成ツールの活用も含め、早めに老後資金の準備を始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料