6. 【シミュレーション】厚生年金15万円の場合、生活費は毎月いくら不足する?

厚生年金受給者の平均年金月額は15万289円ですが、この金額だけで老後の生活費をまかなえるとは限りません。

総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯では、1カ月の可処分所得が11万8465円であるのに対し、消費支出は14万8445円です。

その差は2万9980円となっており、平均的には毎月約3万円の不足が生じています。

では、厚生年金の平均月額15万289円を受け取るケースを想定し、毎月の生活費との差額を試算してみましょう。

  • 生活費が月額18万円の場合:毎月約2万9700円不足
  • 生活費が月額20万円の場合:毎月約4万9700円不足
  • 生活費が月額25万円の場合:毎月約9万9700円不足

この不足が20年間続くと仮定した場合、必要となる金額はそれぞれ約713万円、約1193万円、約2393万円です。

ただし、ここで用いた厚生年金の平均月額15万289円は、税金や社会保険料が差し引かれる前の額面です。

実際に生活費として使える金額はこれより少なくなる可能性があるため、家計の不足額はさらに大きくなることも考えられます。

老後資金を考える際は、平均年金額だけを見るのではなく、自分が受け取る見込み額と必要な生活費との差を把握することが重要です。

山﨑 夏子
「毎月3万円の不足」と言われると小さく感じるかもしれませんが、20年間続けば700万円を超える金額になります。子育て世代のご相談でも、現役時代のうちにこの差額をどう埋めるかを考えておくことが、老後の安心につながるとお伝えしています。

7. 【相談事例】教育費が落ち着いた50代からの資産形成の見直し

老後資金への不安は、実際の相談の場でもよく聞かれます。特に教育費の負担が大きくなる時期に、将来への焦りを感じる方が多いようです。

50代のお客様
子どもが大学に進学して教育費がかさんだことで、老後資金に強い不安を感じています。まとまった貯蓄や企業型DC、変額保険もありますが、「40代のうちからもっと本格的に資産運用を始めておけばよかった」と感じています。夫婦で加入している保険についても、保障の重複や運用効率に課題を感じていました。

このように、ご自身で資料を見ているだけでは制度の仕組みが分からず、不安ばかりが募ってしまう方も少なくありません。

ただ、相談を重ねる中で「これまで貯めてきたことは無駄ではなく、それがあるからこそ今後の選択肢が取れる」と前向きに捉えられるようになる方も多く見られます。老後に向けた資産形成は、現状を正しく把握することが最初の一歩になります。

7.1 老後資金に備える4つの選択肢

こうした悩みに対して、年金以外に備えておきたい4つの選択肢を紹介します。

1. 既存保険の見直し
まず見直したいのは、現在加入している保険の整理です。既存の保険の一部を解約・減額して、浮いた保険料を新たな資産形成に回す方も少なくありません。今の保障内容と保険料のバランスを再確認することは、無理なく投資原資を捻出するための重要なステップです。

2. NISAの活用
次に検討したいのが、NISAを活用した積立投資です。投資へのハードルを感じる方は多いものの、「自由度が高く、無理のない範囲で積立を継続できる」という点は大きな魅力です。柔軟に資金を引き出せるため、教育費や住宅の修繕費用など、老後以外のライフイベントにも備えやすい仕組みとして、多くの方の資産形成の土台になり得ます。積立を長期間続けた場合にどの程度資産が育つのか、具体的な試算を知っておくと計画が立てやすくなります。
【新NISAシミュレーション】月10万円×15年積立+放置で資産はどう化ける?月3万円の少額戦略も公開

3. iDeCoや企業型DCの活用
3つ目は、老後資金に特化したiDeCoや企業型DCの活用です。定年が近づく中で運用方針に悩む方は多いですが、「60歳までは株式中心で運用し、受け取り時期が近づいてから安定資産に寄せていく」という長期的な視点を持つことで、安心感を得やすくなります。税制メリットを生かしながら、じっくりと老後に備える視点は、若い頃以上に大切になります。

4. 変額保険や個人年金保険の活用
最後は、保険の機能を持ちながら運用もできる変額保険や個人年金保険の活用です。万が一の保障を持ちながら資産を増やす可能性を探る手段として変額保険に魅力を感じる方もいます。また、個人年金保険による安定的な運用や通貨の分散を組み合わせることで、より強固な備えが期待できます。

老後資金への不安から「もう遅いかもしれない」と感じる方が少なくありませんが、既存保険の見直し、NISA、iDeCo・企業型DC、変額保険・個人年金保険を一つずつ整理してみることが、将来に向けた資産形成の出発点になります。

8. 監修者コメント:「気づいてから動く」までの距離を縮めるために

中本 智恵

今回確認したとおり、厚生年金を月額15万円以上受け取れている人は49.8%にとどまり、平均額の15万289円で暮らすとしても、生活費が20万円であれば毎月約5万円が不足する試算になります。数字だけを見ると不安になりますが、大切なのは「不足額を知った上で、いつから何を始めるか」です。

窓口でご相談を受けていた際、教育費や住宅費用が一段落したタイミングで「老後資金にようやく目を向けられるようになった」という方によくお会いします。50代・60代からのスタートであっても、既存保険の見直しや積立投資を組み合わせることで、老後の選択肢を広げることは十分可能です。

まずはご自身の年金見込額を「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認し、生活費との差額を把握するところから始めてみてください。差額が分かれば、NISAやiDeCoでどの程度積み立てる必要があるか、具体的な目標も立てやすくなります。

9. 現役時代から老後の備えをしておこう

本記事では、国民年金と厚生年金の仕組みや2026年度の年金額、厚生年金の受給額分布について解説しました。

厚生年金を月額15万円以上受け取る人は全体の49.8%で、半数を下回ります。

また、厚生年金を月額15万289円受給していても、生活費が月額18万円なら毎月約3万円、20万円なら約5万円が不足する試算です。

自身の年金見込額と老後に必要な生活費を確認し、不足が見込まれる場合は、働き方や貯蓄、資産形成などを早めに検討しておきましょう。

参考資料