2026年8月7日、総務省は「家計調査報告(家計収支編)2026年6月分及び4〜6月期平均」を公表しました。
二人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり29万886円で、前年同月比実質3.3%の減少となり、7カ月連続のマイナスを記録しています。 節約志向が続いているとはいえ、生活費そのものの負担が軽くなったとは言えない状況です。
とりわけ年金を主な収入源とするシニア世帯にとっては、年金だけで生活費をまかなえるのかという不安は根強いのではないでしょうか。
2026年度の公的年金額は前年度から引き上げられ、国民年金の満額は月額7万608円、厚生年金のモデル額は夫婦2人分で月額23万7279円となりましたが、実際には年金収入だけでは生活費をまかなえないシニア世帯も少なくありません。
本記事では、国民年金と厚生年金の仕組みや2026年度の年金額、厚生年金の受給額分布を確認します。
年金月額15万円の場合に生じる生活費の不足額を試算しているので、参考にしてください。
なお、厚生年金の受給額分布や年金額の詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. この記事を読むとわかる3つのポイント
-
厚生年金を月額15万円以上受け取っている人は49.8%で、受給者の半数に届かない -
2026年度の年金額は、国民年金の満額が月額7万608円、厚生年金の夫婦モデル額が月額23万7279円に改定 -
年金月額15万円のケースで、生活費が月20万円なら毎月約5万円が不足する試算に
2. 公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2層構造
日本の公的年金制度は、土台となる「国民年金(基礎年金)」と、その上に上乗せされる「厚生年金」で成り立っています。
このような制度設計は、一般的に「2階建て構造」と呼ばれます。
まずは、国民年金と厚生年金の加入対象や保険料、受給額の違いを確認しましょう。
【1階部分】国民年金(基礎年金)
- 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
- 保険料:全員定額、ただし年度ごとに改定される(※1)
- 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる
※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円
【2階部分】厚生年金
- 加入対象:会社員や公務員、またパートなど、特定適用事業所(※3)で働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入
- 保険料:収入に応じて(上限あり)決定される(※4)
- 受給額:加入期間や納付済保険料により、個人差が出る
厚生年金は、会社員や公務員などが国民年金とあわせて加入する制度です。
国民年金と厚生年金では、加入する人の範囲だけでなく、保険料の算出方法や将来の受給額の決まり方も異なります。
このため、老後に受け取る年金額には、加入していた制度や現役時代の収入、加入期間などによって差が生じます。
また、公的年金の金額は固定されているわけではなく、物価や現役世代の賃金の変動を反映し、毎年度改定される仕組みです。
※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
3. 2026年度の「国民年金と厚生年金」はいくらになった?
公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金の変化に応じて、年度ごとに改定されます。
厚生労働省は2026年1月23日、2026年度(令和8年度)の年金額の目安を公表しました。
2026年4月分から適用される改定率は、国民年金(基礎年金)が前年度比1.9%増、厚生年金の報酬比例部分が同2.0%増です。
- 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分 ※1)
- 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(前年度比+1300円)です。
※2 平均的な収入(賞与を含む月額換算で45万5000円)の男性が40年間就業した場合に受け取り始める年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準です。
国民年金のみを受給する場合、保険料を全期間納めて満額(※3)だったとしても、月額はおよそ7万円程度であり、受給開始を75歳まで遅らせる「繰下げ受給(※4)」を利用した場合でも、月額は13万円に届かない水準となっています。
※3 国民年金の保険料を40年間(480カ月)納付した場合に、65歳から受け取れる満額の年金額を指します。
※4 繰下げ受給とは、年金の受け取り開始を66歳から75歳までの間で遅らせる制度です。1カ月遅らせるごとに0.7%増額され、75歳開始では最大84%増額されます。
なお、厚生年金の月額23万7279円は、特定の夫婦世帯を想定したモデル額です。
実際に受け取る金額は、現役時代の収入や働き方、年金への加入期間によって異なります。
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などを利用し、自身の見込額を確認しておくことが重要です。
4. 厚生年金を「月額15万円以上」受け取る人は半数未満
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者全体の平均年金月額は15万289円です。
この金額には、1階部分にあたる国民年金(老齢基礎年金)の月額も含まれています。
厚生年金の受給額がどのように分布しているのか、金額別の受給権者数を確認しましょう。
4.1 厚生年金の受給額別人数を確認
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金を月額15万円以上受け取っている人の割合は49.8%で、受給者全体の半数を下回ります。
さらに、厚生年金に加入しておらず、国民年金のみを受け取っている人まで含めると、月額15万円以上を受給する人の割合はより低くなります。
5. 月15万円に届いた人は、現役時代に年収いくら稼いでいた?平均年収400万円・勤続38年で試算
厚生年金を月額15万円以上受け取るには、現役時代にどの程度の年収・加入期間が必要になるのでしょうか。
ここでは、平均年収400万円で38年間(456カ月)厚生年金に加入し続けたケースを例に、老齢厚生年金の報酬比例部分を試算します。
- 平均標準報酬額(賞与を含む月額換算):400万円÷12カ月=約33万3000円
- 加入期間:38年(456カ月)
老齢厚生年金の報酬比例部分は、次の計算式(本来水準、2003年4月以後の加入期間分)で求められます。
- 報酬比例部分(年額)=平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数
この式に当てはめると、報酬比例部分は年額約83万3000円、月額に換算すると約6万9000円となります。
これに、老齢基礎年金の満額(月額7万608円、40年間の保険料納付を想定)を加えると、月額の合計はおよそ13万9000円です。
つまり、平均年収400万円・勤続38年という決して短くないキャリアであっても、月額15万円にはわずかに届かない計算になります。実際には、現役時代の賃金の推移や賞与の有無、加入期間の長さなどによって金額は変わりますが、15万円という基準が「相応の年収・加入期間があっても届きにくい水準」であることがうかがえます。
なお、この試算はあくまで一定の前提を置いた簡易的なものであり、実際の受給額は個々の加入履歴によって異なります。より正確な見込み額は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認しましょう。




