最新の国税庁「令和6年度版 国税庁統計年報」によると、令和6年中に相続や遺贈などにより財産を取得した人は49万3955人にのぼりました。相続は一部の資産家だけの問題ではなく、多くの家庭にとって身近なテーマとなっています。
私はこれまで生命保険会社や総合保険代理店で1000世帯以上のご相談を担当してきましたが、「どの商品で運用すればよいか」という相談だけでなく、「もし自分に万が一のことがあったら、この資産は家族にどう引き継がれるのか」という質問を受ける機会も少なくありませんでした。
特に個人向け国債は、安全性の高さからシニア世代を中心に人気がある一方で、相続時の手続きや取扱いについては意外と知られていません。
そこで今回は、個人向け国債の最新金利を確認するとともに、相続時のルールや手続きについて分かりやすく解説します。
1. この記事の3つのポイント
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2026年7月募集の個人向け国債の金利は「固定5年1.95%」「変動10年1.8%」「固定3年1.56%」 -
200万円購入時の手取り利息は、固定5年で15万5385円、変動10年(利率一定と仮定)で28万6866円、固定3年で7万4585円 -
発行から1年経過後は中途換金が可能だが、直近2回分の利子相当額に0.79685を掛けた金額が差し引かれる
2. 個人向け国債とは?元本割れなしで1万円から購入可能
個人向け国債は、日本国が発行する個人向けの債券です。
満期まで保有すれば額面どおりに償還されるため元本割れの心配がなく、1万円から購入できます。
また、最低金利0.05%が保証されているほか、発行から1年経過すれば原則として中途換金も可能で、初めて資産運用に取り組む人にも利用しやすい商品です。
商品は「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類があり、金利が変動するタイプと、満期まで金利が変わらない固定タイプから選べます。

2026年7月募集分の個人向け国債について、それぞれに適用される金利を確認します。
満期まで金利が変わらない固定タイプのうち、固定5年の金利は1.95%に設定されています。
また、より期間の短い固定3年の金利は1.56%となっています。
一方、実勢金利に応じて半年ごとに適用利率が見直される変動10年の金利は1.8%です。
固定タイプのうち、より長期の固定5年がもっとも高い利率となっています。実勢金利に応じて半年ごとに見直される変動10年も、じわりと水準を切り上げてきました。
3. 親が亡くなったら、個人向け国債はどうなる?
個人向け国債は「相続にも対応」と説明されていますが、実際に相続が発生すると、現金や預金とは異なる独自のルールが適用されます。ここを知らずに手続きを進めると、思わぬ損失や手間につながりかねません。
3.1 相続税評価額は「額面+経過利子-調整額」で計算する
個人向け国債も相続税の課税対象です。評価額は死亡日(相続発生日)を基準に、以下の計算式で算出します。
- 相続税評価額=額面金額+経過利子相当額(税引前)-中途換金調整額
中途換金調整額とは、いわば国債を解約する際の手数料にあたるもので、直前2回分の利子相当額(税引前)に0.79685を掛けて計算されます。現金や上場株式と違い、この調整額を差し引く分だけ評価額が目減りする点は覚えておきたいポイントです。
3.2 「名義変更してそのまま保有」か「中途換金して現金化」かを選べる
相続人は、被相続人の口座から名義変更を行い、そのまま国債を保有し続けることも、中途換金して現金として受け取ることもできます。
- 名義変更を選ぶ場合:満期まで保有すれば当初の利率をそのまま享受できる
- 中途換金を選ぶ場合:まとまった現金がすぐに必要な場合や、相続人が複数いて遺産分割で端数が出やすい場合に選ばれやすい(国債は1万円単位のため、相続人の人数によっては綺麗に分割できないことがある)
4. 知っておくべき個人向け国債の中途解約の注意点
個人向け国債は、発行から1年が経過すれば1万円単位で中途換金することが可能です。
急な資金が必要になった場合でも、柔軟に対応できる仕組みが整っています。
ただし、中途換金を行う際には一定の金額が差し引かれる点に注意しなければなりません。
具体的には、直近2回分の各利子相当額に0.79685を掛けた金額が差し引かれます。
満期を迎える前に解約すると差し引かれる金額が発生するため、余裕資金での運用が前提となります。
4.1 見落としがちな特例:相続なら「1年未満」でも中途換金できる
個人向け国債は通常、発行から1年経過しないと中途換金ができません。しかし、相続によって取得した場合は、この「1年縛り」の対象外となり、購入から1年未満でも中途換金が可能になります。
「まだ1年経っていないから解約できない」と思い込んで放置してしまうと、本来使えるはずの選択肢を見逃すことになりかねません。
相続の際は、被相続人が国債を購入していた金融機関へ連絡し、案内に従って戸籍謄本や遺産分割協議書などの必要書類を準備します。金融機関によって求められる書類が異なるため、事前に電話などで確認しておくとスムーズです。
5. 金利の魅力とあわせて、相続時の備えも忘れずに
2026年7月募集分の個人向け国債は、変動10年が1.8%、固定5年が1.95%、固定3年が1.56%という金利でした。
商品性や金利面から、個人向け国債の購入を検討する人もいるでしょう。
一方で、個人向け国債は相続財産としての評価方法や中途換金のルールが独特であり、「1年未満でも相続なら解約できる」といった特例を知らないまま手続きを進めてしまうケースも見られます。
ご自身が保有する場合はもちろん、親世代が個人向け国債を保有している場合も、相続時にどう扱われるのかを家族間であらかじめ共有しておくことをおすすめします。
6. 【元銀行員のアドバイス】相続で慌てないために、知っておきたい個人向け国債のポイント
銀行窓口で勤務していた頃、個人向け国債を保有されているお客様や、そのご家族から相続に関するご相談を受けることがありました。
「元本保証の商品だから、相続の手続きも預貯金と同じだと思っていた」という声は少なくありませんでしたが、実際には評価方法や手続き、中途換金のルールなど、預貯金とは異なる点があります。
特に誤解されやすいのが、中途換金に関するルールです。通常、個人向け国債は発行から一定期間は中途換金に制限がありますが、相続によって取得した場合には、この制限の対象外となります。 この特例を知らず、「すぐには換金できない」と思い込んでしまうケースも見受けられました。
また、相続人が複数いる場合は、国債をどのように分けるかも事前に考えておきたいポイントです。遺産分割の方法によっては、名義変更して保有を続けるのか、中途換金して現金で分けるのかを話し合う必要が生じます。
個人向け国債は安全性の高い金融商品として人気がありますが、相続時の取扱いまで理解している方は決して多くありません。
ご本人だけでなく、ご家族にも「どの金融機関で、どれだけ保有しているのか」「相続時にはどのような手続きが必要になるのか」を共有しておくことで、いざというときの負担を大きく減らすことができます。
資産を「増やすこと」だけでなく、「円滑に引き継ぐこと」まで見据えて準備しておくことが、将来の安心につながるでしょう。
参考資料
- 財務省「個人向け国債」
- 財務省「個人向け国債 受取利子シミュレーション」
- 財務省「中途換金について」
- 財務省「個人向け国債の発行条件等」
- 財務省「国債金利情報」
- 財務省「個人向け国債窓口トップページ」
- 財務省「変動10年「第158回債」」
- 財務省「知る|個人向け国債」
- 財務省「個人向け国債の発行条件等」
- 財務省「個人向け国債についてのよくある質問」
- 国税庁「個人向け国債の評価」
- 国税庁「令和6年度版 国税庁統計年報」
徳田 椋
