本格的な夏を迎え、厳しい暑さとともに家計への「熱気」も増しています。株式会社帝国データバンクの調査によれば、この7月だけでも2500品目超の飲食料品値上げが予定されており、日々のやりくりに頭を悩ませている方も多いでしょう。

そんな中、先日6月15日は令和8年度(2026年度)の新しい年金額が反映された初めての年金支給日でした。

今年度は厚生年金が2.0%、国民年金が1.9%のプラス改定となったものの、物価上昇率には追いついておらず、将来に不安を覚える現役世代も多いはずです。

現在50代で会社員として働く筆者もその一人です。若い頃にフリーランスとして働いていた期間があるため、先日届いた「ねんきん定期便」を見て、想像以上の「年金格差」の現実に直面しました。

特に女性は、結婚や出産、キャリアチェンジなどライフステージの変化で働き方が変わるケースが多く、それが将来の年金額に直結する重要な選択となります。

そこで今回は、日本の年金制度が女性に与える影響に触れつつ、最新データをもとに女性の年金受給額の実態やライフコースによる違い、そして50代筆者の体験を交えた「これからの備え」について考えていきたいと思います。

1. 働き方によって変わる将来の年金

日本では、20歳以上で国内に住むすべての人が公的年金制度へ加入します。

ただし、就業状況によって加入する年金の種類は異なります。

国民年金の加入者は、第1号被保険者から第3号被保険者までの3区分に分けられています。

【図解】2階建ての年金制度1/4

【図解】2階建ての年金制度

出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成

多くの場合、20歳以降の学生は第1号被保険者として国民年金に加入し、就職後は会社員として厚生年金へ加入します。

一方で、結婚や出産・育児、家族の介護といったライフイベントをきっかけに、働き方を見直すケースは現在も女性に多く見られます。

では、受給額にはどの程度の違いがあるのでしょうか。

2. 女性が受け取る「年金額」の実態

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金受給者数は次のとおりです。

  • 国民年金受給権者数(男女計):3345万4617人
  • 厚生年金受給権者数(女性):540万5752人

今後は女性の社会進出が進むことで、厚生年金に加入する女性はさらに増えると考えられます。

では、それぞれの平均受給額を確認してみましょう。

2.1 国民年金の平均受給額と分布

女性の国民年金の平均受給月額は5万7582円です。

参考として、国民年金受給者全体の受給額分布は次のとおりです。

【女性の国民年金】受給額分布から見る個人差

【男女別グラフ】国民年金の受給額分布2/4

【男女別グラフ】国民年金の受給額分布

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 1万円未満:5万1828人
  • 1万円以上~2万円未満:21万3583人
  • 2万円以上~3万円未満:68万4559人
  • 3万円以上~4万円未満:206万1539人
  • 4万円以上~5万円未満:388万83人
  • 5万円以上~6万円未満:641万228人
  • 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
  • 7万円以上~:299万7738人

最も受給者が多いのは「6万円以上~7万円未満」の区分です。

ただし、女性の通算25年未満受給権者の平均受給月額は2万374円となっており、加入期間が短いと受給額は大きく減少します。

また、国民年金を満額受給できたとしても、それだけで老後の生活費をまかなうのは容易ではありません。

そのため、年金以外の資産形成も重要になります。

2.2 厚生年金の平均受給額と分布

女性の厚生年金の平均受給月額は11万1413円です。この年金額には国民年金の月額部分も含まれています。

平均額だけを見ると、国民年金の約2倍の受給水準となっています。

ただし、厚生年金は現役時代の給与や加入期間によって金額が決まるため、実際の受給額には大きな個人差があります。

【女性の厚生年金】受給額分布から見る個人差

【男女別グラフ】厚生年金の受給額分布3/4

【男女別グラフ】厚生年金の受給額分布

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • ~1万円未満:1万2953人
  • 1万円以上~2万円未満:3880人
  • 2万円以上~3万円未満:2万9993人
  • 3万円以上~4万円未満:6万3025人
  • 4万円以上~5万円未満:6万1945人
  • 5万円以上~6万円未満:6万9313人
  • 6万円以上~7万円未満:18万892人
  • 7万円以上~8万円未満:34万8764人
  • 8万円以上~9万円未満:54万1901人
  • 9万円以上~10万円未満:75万1358人
  • 10万円以上~11万円未満:81万3990人
  • 11万円以上~12万円未満:69万5128人
  • 12万円以上~13万円未満:52万2466人
  • 13万円以上~14万円未満:37万4169人
  • 14万円以上~15万円未満:27万1489人
  • 15万円以上~16万円未満:20万322人
  • 16万円以上~17万円未満:14万7604人
  • 17万円以上~18万円未満:10万5489人
  • 18万円以上~19万円未満:7万1561人
  • 19万円以上~20万円未満:4万8617人
  • 20万円以上~21万円未満:3万3387人
  • 21万円以上~22万円未満:2万1931人
  • 22万円以上~23万円未満:1万4116人
  • 23万円以上~24万円未満:8813人
  • 24万円以上~25万円未満:5491人
  • 25万円以上~26万円未満:3233人
  • 26万円以上~27万円未満:1811人
  • 27万円以上~28万円未満:927人
  • 28万円以上~29万円未満:479人
  • 29万円以上~30万円未満:223人
  • 30万円以上~:482人

厚生年金は受給額の幅が広いため、「厚生年金だから安心」と考えるのではなく、自分の収入や加入期間を踏まえて将来の受給見込みを確認し、資金計画を立てることが大切です。

また、加入期間が短くなったり、パート勤務などで収入が減少したりすると、将来受け取る年金額にも影響します。

働き方を見直す際には、老後の年金への影響もあわせて考えることが重要です。

3. 【専業主婦・会社員・自営業】3つのモデルケースで見る「女性の年金」と男女格差

厚生労働省が公表した「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」をもとに、女性の働き方別の年金受給額の目安を紹介します。

ご自身の経歴に近いモデルケースを確認してみてください。

3.1 【女性の3つのライフコース別】年金月額の目安

ライフコース別《65歳以降の年金めやす》5つのパターン4/4

ライフコース別《65歳以降の年金めやす》5つのパターン

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(色枠はLIMO編集部で加筆)

① キャリアを重ねた女性(厚生年金が中心)

  • 想定: 平均年収約427万円で33年間就業
  • 年金月額の目安: 13万4640円

② 自営業として働いた女性(国民年金が中心)

  • 想定: 厚生年金加入期間約6.5年
  • 年金月額の目安: 6万1771円

③ 専業主婦の期間が長い女性(第3号被保険者が中心)

  • 想定:厚生年金加入期間約6.7年
  • 年金月額の目安: 7万8249円

3.2 男性のモデルケースとの比較

現役時代の働き方によって、将来の年金額には数万円規模の差が生じます。また、同資料に示されている男性のモデルケースと比較すると、受給額の男女差も確認できます。

男性の「会社員経験が長い(厚生年金が中心)」ケース(平均収入50.9万円・年収約610万円で39.8年就業)では、年金月額の目安は17万6793円と試算されています。キャリアを重ねた女性のモデル(13万4640円)と比較すると、月額で約4万2000円の違いがあります。

これは、就業期間の長さ(男性約40年、女性33年)や現役時代の平均年収の差が影響していると考えられます。

一方で、「自営業・フリーランス(国民年金が中心)」の男性の目安は6万3513円であり、同じく国民年金が中心の女性(6万1771円)との間に大きな金額差はありません。

国民年金は加入期間に応じて定額で計算されるため男女差が出にくい傾向にありますが、報酬比例である厚生年金は就業期間や収入の差が受給額に反映されます。

女性の場合、出産や育児などのライフイベントによって就業期間が短くなることや、働き方をセーブする期間が生じやすいことが、男女間の厚生年金受給額の差につながっていると考えられます。

同世代でも働き方によって受給額は異なるため、自身の年金加入歴に応じた生活資金の計画や、公的年金以外の収入源の確保を検討することが求められます。

4. フリーランスから会社員へ。50歳代筆者が直面した「年金見込額」のリアルと資産形成の壁

記事の前半で見てきた通り、女性は働き方によって将来の年金額に大きな差が生じます。

現在50歳代で会社員として働く筆者自身も、まさにその「働き方の変化」による影響を実感した一人です。

30歳代から40歳代にかけてはフリーランス(第1号被保険者)として働き、その後会社員(第2号被保険者)となった筆者。

先日、誕生月に届いた50歳以上の「ねんきん定期便」には、60歳まで現在の条件で働き続けた場合のリアルな「年金見込額」が記載されていました。

それを見てハッとさせられたのです。

国民年金のみに加入していた期間が長かった分、ずっと会社員として厚生年金に加入してきた同年代の知人と比べ、受給見込額が心もとない数字だったからです。

さらに、株式会社帝国データバンクの調査によると、この7月の飲食料品値上げは2566品目に上り、年間では2万品目ペースになることが想定されています。

長引く物価高を目の当たりにし、「限られた年金と今の預貯金だけで本当に老後を乗り切れるのか」という強い危機感を抱きました。

そこで老後資金の対策を考えたものの、投資には二の足を踏んでしまうのも事実です。

株式会社NEXERの調査によれば、資産形成の課題・不安の第1位は「元本割れのリスクが怖い」であり、「始めた方が良いと思いつつまだ始められていない」人が約17%いることが分かっています。

投資の必要性を感じつつも行動に移せずにいる方は少なくないでしょう。しかし、物価高で現金の価値が目減りしていくリスクを考慮し、筆者もNISAを活用した少額からの資産形成をスタートさせました。

5. まとめにかえて

今回は、最新の統計データや筆者の実体験をもとに、女性の年金受給額の実態やライフコースによる格差について確認しました。

女性の厚生年金平均受給月額は約11万円ですが、ボリュームゾーンは「10万円以上~11万円未満」であり、余裕のある額を受け取れる人は決して多くありません。ま

た、過去にフリーランスや専業主婦の期間がある場合、老後の年金が国民年金中心となるため、受給額はさらに下がってしまいます。

平均寿命が延びて老後の期間が長くなる一方で、容赦なく続く物価高。公的年金だけでゆとりある生活を送るのは極めて難しい時代になっています。

だからこそ、現役世代のうちに「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自身の年金見込額を正確に把握することが重要です。

今の働き方が将来の年金にどう影響するのかを知り、早い段階から家計の見直しや、自分に合ったリスクの範囲内で資産形成を進めるなど、具体的な行動を起こすことが、安心できる老後への第一歩となるでしょう。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定はご自身の判断で行ってください

参考資料