2. 株価を押し上げる「保守的な為替前提」と上振れ期待
先行指標の改善に加えて、株価を押し上げているもう一つの大きな要因が「為替」です。
村田製作所の製品は、スマートフォンや電気自動車、データセンターのサーバーなどに搭載されますが、その主要な顧客は海外メーカーです。そのため、売上の多くが外貨建てとなり、為替レートの変動が業績にダイレクトに影響を与えます。
泉田氏は、同社の利益が為替によってどれほど変動するのか(為替感応度)に注目します。
「1年で換算した時に、1円動くと為替レートが45億円変わりますよって会社がまとめてくれています」
会社側が公表している資料によれば、対ドルで1円の円安が進むごとに、年間で約45億円もの営業利益が上乗せされる構造になっています。仮に5円円安に振れれば、それだけで225億円の利益が吹き上がる計算になります。
2.1 会社前提150円に潜む「10%上振れ」のポテンシャル
ここで投資家が注目すべきは、会社側が次期(2027年3月期)の業績予想を立てる際に用いている「為替前提レート」です。
村田製作所は、次期の前提レートを「1ドル=150円」と設定しています。これは、終わった期の実績レート(150.78円)とほぼ同じ水準です。
インタビュワーが、足元の為替水準(1ドル160円近辺)との乖離について指摘すると、泉田氏はこの保守的な前提こそが、業績の上振れ期待を生んでいると分析します。
会社が発表した次期の営業利益予想は3,800億円(前期比34.8%増)と、すでに大幅な増益を見込んでいます。
しかし、会社前提の150円に対し、仮に実勢の160円が通年継続したとすれば、10円の差額×45億円=450億円の利益がさらに上乗せされる計算になります。
これは、予想営業利益3,800億円に対して10%以上の上振れポテンシャルを秘めていることを意味します。
市場参加者は、こうした「隠れた利益のバッファー」を見逃さず、株価に織り込みにいっているのです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日