2. 最高益が株価を押し上げるも、頭を重くする「信用需給」の罠
ソフトバンクグループの株価変動が激しい理由の一つに、個人投資家を中心とした「信用取引」の動向が挙げられます。
信用取引とは、証券会社から資金を借りて自己資金以上の株式を売買する仕組みです。
泉田氏の分析によると、5月29日時点での同社の信用取引残高は、売り残が約460万株であるのに対し、買い残は約2,600万株に上り、信用倍率は5.7倍となっていました。
ピーク時の3月20日には信用倍率が13.03倍(買い残約5,200万株)に達しており、多くの投資家が「今後も株価は上がる」と予想して借金をしてまで株を買っている状態が続いています。
一見すると買い意欲が旺盛で良いことのように思えますが、インタビュワーから「信用買いの残高が多いとどのような影響があるのか」と疑問が投げかけられると、泉田氏は次のように解説します。
「信用取引ってもともとお金を借りて投資をしてるっていう構造なので、金利負担が発生するんですよ。なのでずっと長期では持ちづらいんですよね」
借金をして株を買っている投資家は、金利を払い続ける必要があるため、利益が出たらできるだけ早く売却したいという心理が働きます。
「買残が多いと、利益確定の動きで売る人が多くなるから、なかなか突き抜けて上がる頭が重くなるっていう言い方をするんですね」
つまり、好決算を背景に株価が上昇しようとしても、過去に信用取引で買った投資家たちの「利益確定の売り」が大量に出るため、株価の上昇が抑え込まれてしまうのです。
さらに恐ろしいのは、株価が下落した局面です。信用取引では、株価が一定水準まで下がると「追証(追加保証金)」と呼ばれる追加の担保を求められます。
これ以上の損失に耐えられなくなった投資家が強制的に株を売却させられるため、売りが売りを呼んで株価が急落する要因にもなります。このように、信用需給の偏りが、同社の株価の激しい乱高下を生み出す構造的な原因となっているのです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日