物価高や社会保険料の負担増が続く中、将来の生活資金や家計管理への影響が懸念されています。特に、令和8・9年度の後期高齢者医療制度の保険料改定は、シニア世代の家計に直結する重要な課題です。

本稿では、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点から、今後の保険料の負担見通しを整理するとともに、家計の防衛策として活用したい「医療費控除」などの税制について解説します。

1. 【後期高齢者医療保険料】7.8%上昇、平均保険料「月額7989円」へ

後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について1/3

後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について

出所:厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」

令和8・9年度における後期高齢者の医療保険料(医療分)は、全国平均で一人あたり月額7989円となる見通しです。前回の改定時(令和6・7年度の月額7411円)と比較すると、578円(プラス7.8%)の引き上げとなります。

1.1 値上がりの背景は「医療費の増大」と「負担割合の変更」

保険料が引き上げられる主な要因は、一人あたりの医療給付費が約4.89%増加していることや、医療給付費全体に対して後期高齢者が負担する割合が13.27%へ引き上げられた点にあります。ただし、急激な負担増を緩和するための対策として、過去の剰余金や財政安定化基金を活用するなどの措置も講じられています。

2. 【後期高齢者医療保険料】都道府県別ランキング!保険料の「高い地域・安い地域」トップ5

後期高齢者医療保険料は、各都道府県の「後期高齢者医療広域連合」ごとに定められており、地域の実情や医療給付費の伸び率などによって金額に大きな差が生じています。

2.1 「保険料が高い」都道府県トップ5(医療分・月額見込み)

  1. 東京都:1万352円
  2. 神奈川県:9842円
  3. 愛知県:9045円
  4. 大阪府:9010円
  5. 沖縄県:8731円

2.2 「保険料が安い」都道府県トップ5(医療分・月額見込み)

  1. 青森県:4990円
  2. 岩手県:5496円
  3. 福島県:5744円
  4. 秋田県:5847円
  5. 新潟県:5852円

月額保険料が最も高額な東京都と、最も低額な青森県を比較するとその差は5362円となり、2倍以上の開きがあります。居住地によって負担額が大きく変わるという事実は、あらかじめ把握しておきたい重要なポイントです。

住む場所や制度の改定によって医療費の負担増が避けられない今、自身でできる対策を知っておくことは大きな強みとなります。ここからは、医療費が多くかかった年に税負担が軽減される可能性がある「医療費控除」や「セルフメディケーション税制」について確認していきます。

3. 【医療費控除】最大200万円の控除「対象になるのはどんな医療費?」

窓口負担の上限を超えた分が健康保険から払い戻される「高額療養費制度」とは異なり、「医療費控除」は1年間で支払った医療費の合計が一定金額(基本的には10万円)を超過した際、確定申告を行うことで納めた税金(所得税など)の一部が還付される制度です。

3.1 ■対象となる医療費

1月1日〜12月31日の期間に、本人および生計を一にする家族のために支払った以下の費用が該当します。

  • 医師・歯科医師による診察や治療費
  • 治療目的でのあん摩マッサージ指圧師などによる施術費
  • 通院にかかった公共交通機関の運賃(電車やバスなど)
  • 風邪などの治療目的で購入した市販薬の代金

(※健康診断の費用や美容目的の整形手術などは対象外です)

3.2 ■計算方法(上限200万円)

以下の式で算出した金額(上限200万円)が所得から差し引かれます。

  • (1年間に支払った医療費の総額)-(生命保険の給付金や高額療養費などで補てんされる金額)-(10万円 または 総所得金額等の5%のいずれか少ない方の金額)

3.3 ■手続き方法(領収書は5年保管)

確定申告書とともに「医療費控除の明細書」、もしくは健康保険組合等が発行する「医療費通知」を提出します。申告時に領収書の添付は求められませんが、確定申告期限等から5年間は手元で保管する義務があります。病気やケガで出費が重なった年は、家族全員分の医療費を合算して確認することが推奨されます。

4. 【セルフメディケーション税制】年間1万2000円超の市販薬代で「税負担を軽減」

健康診断や予防接種を受けるなど、日頃から健康管理や疾病予防に努めている人が、特定の市販薬を1年間で1万2000円分より多く購入した場合に活用できる特例制度です。なお、先述の「医療費控除」とは選択制となっており、併用することはできません。

4.1 ■対象となる医薬品

薬局やドラッグストアで購入可能な「スイッチOTC医薬品」などの特定一般用医薬品等が対象です。対象となる商品を買った際のレシートや領収書には、この税制の対象品目であることが印字されています。

4.2 ■計算方法(上限8万8000円)

セルフメディケーション税制に係る医療費控除額の計算方法3/3

セルフメディケーション税制に係る医療費控除額の計算方法

出所:国税庁「パンフレット「暮らしの税情報」(令和8年度版)医療費を支払ったとき」

以下の計算式で出した金額(上限8万8000円)が所得控除の対象となります。

  • (1年間で購入した対象医薬品の総額)-(保険金などで補てんされる金額)- 1万2000円

4.3 ■手続き方法(領収書は5年保管)

確定申告の際、「セルフメディケーション税制の明細書」を作成・添付して提出します。こちらも、対象薬を購入したレシートや領収書は申告期限等から5年間保管しておく必要があります。市販薬を購入した際は、レシートの表示を確認する習慣をつけることが大切です。

5. まとめにかえて

社会保険料の引き上げなど、自身ではコントロールが難しい支出が増加する一方で、医療費控除やセルフメディケーション税制のように、活用することで負担を軽減できる制度も用意されています。

日頃から医療費の領収書や薬のレシートを保管し、支出額を正確に把握しておくことが重要です。確定申告の手間を惜しまず適切な制度を利用することが、結果として家計を守る有効な手段となります。マネープランを見直す上で、これらの制度を十分に活用することが求められます。

参考資料

徳田 椋