中学受験というと、首都圏や近畿圏を中心とした話というイメージがありますよね。地方で子育てをしていると、中学受験とは無縁で「学区の中学校に通う」というケースがほとんどです。しかし、2000年代半ば頃から各地で登場した公立中高一貫校により、地方の小学生を取り巻く環境が変わりつつあるのをご存知でしょうか?
「高学年からでは間に合わない」と焦る保護者が続出
中学受験は大都市限定の話のように思われますが、地方でも年々過熱しています。筆者が地方都市で塾講師として働いていた頃は、ちょうど全国各地で中高一貫校が開校した時期と重なっていました。
勤めていた教室でも、初年度は手探り状態で中高一貫校を希望する生徒を指導。2年目以降は過去問をもとに、学校側はどういった力を生徒に求めているのかを考えるようになりましたが、結果、先生全員が同じ認識を持つようになったのです。それは、短期間で合格に持っていくのは極めて困難ということでした。
公立中高一貫校の入試は普通の学力試験とは異なり、「適性検査」と呼ばれる国算理社をバランスよく混ぜた問題が出されます。問題を見ていると、あらゆる分野に興味関心のアンテナがないと解けないように工夫され、小学6年生になってから付け焼刃的に対策を講じるのが難しいことは明らか。低学年からの学習習慣が何よりも大切と感じました。
すると、そのことを認識し始めた保護者たちが、自分の子供たちに早い段階で塾通いをさせるようになってきたのです。
地方の教育産業も”儲けのチャンス”とばかり小学生の入会に力を入れるように
かつて身を置いた世界を悪くは言いたくありませんが、少子化は避けられない時代に公立中高一貫の登場は地方の塾業界にとっては願ってもないことでした。そのため、首都圏や近畿圏の子供達と同じように、小学4年からの本格的な通塾をアピールする塾が増えていきました。
かつての地方の塾では、中学2年生や3年生がメインターゲット。高校受験が終わると、トップ高校に進学する生徒を除けば、大半の生徒は塾を去っていきました。しかし、公立中高一貫校の登場で、小学校低学年からの入塾も珍しくなく、生徒の年齢層が広がる方向に変化してきたのです。
高校入試と異なり、親主導のケースが多い中学入試はお金のかけかたも尋常ではありません。「何としてでも狭き門に我が子を通したい」という親の情熱が、小学生からの高額な塾費用の投下につながっていきます。塾といえども、企業です。利益を上げなければいけません。そういったお金の面でも、中高一貫校ができる前と比べると、塾が力を入れ入会を勧める年齢層が格段に低くなってきているのです。