3. 2025年の年金制度改正で「遺族年金」はどう変わる?

2025年6月に成立した「年金制度改正法」の大きな狙いの一つは、働き方や家族構成の多様化に応じた年金制度の整備です。

今回の改正では、いわゆる「106万円の壁」撤廃に関連する社会保険加入要件の拡大のほか、遺族年金に関する見直しも盛り込まれました。

3.1 遺族厚生年金の男女差解消に向けた見直しの内容

現在の遺族厚生年金のしくみでは、受給者の性別によって下記のような男女差がありました。

現行の遺族厚生年金の仕組み

  • 女性
    • 30歳未満で死別:5年間の有期給付
    • 30歳以上で死別:無期給付
  • 男性
    • 55歳未満で死別:給付なし
    • 55歳以上で死別:60歳から無期給付

こうした男女差の解消に向けた見直しは、2028年4月から施行される予定です。

2028年4月施行予定の新しい仕組み

「原則5年間の有期給付」の対象となるための要件が、男女ともに詳細に定められました。

  • 女性:施行直後(2028年4月)に原則5年間の有期給付の対象となるのは、「18歳年度末までのこどもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方」です。(※既に遺族厚生年金を受給している方や、2028年度に40歳以上になる女性は見直しの影響を受けません。)
  • 男性:新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのは、「18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の方」です。
  • こどもがいる場合:18歳年度末までのこどもがいる場合は、こどもが18歳年度末になるまでは現行制度と同じであり、見直しの影響はありません。こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付および継続給付の対象となります。

3.2 有期給付と継続給付の拡充について

配慮が必要な場合の給付についても、金額や要件が具体化されています。

  • 有期給付の増額:有期給付には新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。
  • 継続給付(5年目以降の給付継続)の要件:5年間の有期給付終了後も、障害状態にある方や収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給できます。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は継続給付が全額支給され、概ね月額20~30万円を超えると全額支給停止となります。

なお、今回の改正では「遺族基礎年金」の見直しも盛り込まれました。

同一生計にある父または母が遺族基礎年金を受け取れなかったケースでも、2028年4月からは、こどもが単独で「遺族基礎年金」を受け取れるようになります。

4. まとめにかえて:知らなきゃ損する「申請主義」。通知の見落としにも要注意

今回は、60歳・65歳以上を対象とした「申請しないと受け取れない5つの公的給付」をご紹介しました。

年金生活のベースを底上げする「加給年金」や「老齢年金生活者支援給付金」、そして働き続けるシニアを支える「再就職手当」や「高年齢雇用継続給付」など、国はさまざまな制度を用意しています。

しかし、これらの制度は「知っている人だけが得をし、知らない人は損をする」のが現実です。

なかには「年金生活者支援給付金」のように事前にお知らせが届くものもありますが、届いたハガキを他の書類に紛れて見落としたり、手続きを後回しにして期限を過ぎてしまえば、本来もらえるはずだったお金をドブに捨てることになりかねません。

「もしかして自分も対象かも?」と思ったら、決して放置せず、お近くの年金事務所やハローワークへ早めに問い合わせるなど、自ら行動を起こすことが大切です。

参考資料

マネー編集部社会保障班