本日6月15日は、偶数月に一度訪れる公的年金の支給日でした。口座に振り込まれた金額を見て、「これだけで老後を乗り切れるのか」と不安を感じた方もいるのではないでしょうか。
「人生100年時代」と言われる今、日本人の平均寿命は男性81年、女性87年を超えました。
年金だけでは心もとない現状を背景に、65〜69歳の男性の6割、女性の4割以上が働き続けるなど、「就労」が老後を支えるもう一つの柱となっています。
しかし、60歳以降は給与が下がるケースも多く、健康上の理由でいつまで働けるか分からないリスクも潜んでいます。そこで重要になるのが、国が用意している公的年金「以外」のシニア向け給付金や手当です。
厄介なのは、日本の社会保障は自ら手続きをしないと受け取れない「申請主義」だという事実です。本記事では、もらい損ねを防ぐため、60歳・65歳以上なら確認必須の「申請しないと受け取れない5つの公的給付」を徹底解説します。
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1. 【手続きしないと受け取れない】老齢年金への上乗せ給付2種。年の差夫婦や少なめ年金なら対象かも!
老齢年金を受給中のシニアが一定要件を満たす場合、通常の老齢年金に上乗せして受け取れるお金を「2種類」紹介します。
1.1 制度1:加給年金
加給年金は「年金の扶養手当(家族手当)」と例えられることがある制度です。
一定要件を満たした場合、老齢厚生年金を受給中の人が年下の配偶者や子どもを扶養する場合に年金に上乗せして受け取ることができます。
加給年金の支給要件について
- 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
- 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)
(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年
それぞれ、上記で示したタイミングで、「65歳未満の配偶者」または「18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子」がいる場合、年金に上乗せされます。
ただし、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上あるもの)、退職共済年金(組合員期間が20年以上あるもの)を受給する権利がある場合、または障害厚生年金、障害基礎年金、障害共済年金などを受給している場合、配偶者加給年金額は支給停止されます。
2026年度における加給年金の年金額
「加給年金」の年金額(2026年度の年額)は以下のとおりです。
- 配偶者:24万3800円
- 1人目・2人目の子:各24万3800円
- 3人目以降の子:各8万1300円
なお、老齢厚生年金を受給中の人の生年月日により、配偶者の加給年金額に3万6000円から17万9900円の特別加算額が支払われます。
振替加算の概要
加給年金は対象となる配偶者が65歳になると支給は終わります。ただしその配偶者が老齢基礎年金を受け取る場合、一定の要件を満たせば老齢基礎年金に「振替加算」されます。
1.2 制度2:老齢年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給する人が一定の所得要件を満たす場合に受け取れるお金です。「老齢」「障害」「遺族」それぞれに給付金があり、支給要件が設けられています。
ここでは「老齢年金生活者支援給付金」に焦点を当てて解説します。
老齢年金生活者支援給付金の支給要件
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)である
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
老齢年金生活者支援給付金の給付基準額とは
2026年度において、老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5620円で、前年度より3.2%増額されました。
この基準額をもとにして、保険料納付状況等により給付金額が算出されます(下記①と②の合計額)。
老齢年金生活者支援給付金の給付額の計算方法
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1768円× 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
なお、保険料免除期間に乗ずる金額は、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて変わります。
2. 手続きしないと受け取れない!雇用保険への上乗せ給付3種。65歳以上の”失業手当”は一括給付
働き続けるシニアが気になる、就労に関連する給付金や手当についても見ていきます。
シニアの就労を支援する制度は整いつつありますが、一般的には60歳を境に収入が下がる傾向があります(※)。また、就職活動や就労継続が、若い頃のようにスムーズに進む人ばかりではないでしょう。
そこで、シニアが知っておきたい雇用保険に関連する手当や給付金についても「3種類」紹介します。
※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」による年齢階層別の平均給与:50歳代後半男性735万円、女性356万円、60歳代前半男性604万円・女性294万円、60歳代後半男性472万円・女性240万円
2.1 制度1:65歳未満の方が対象の「再就職手当」
再就職手当は、早期の再就職を促進するための手当で、「失業~再就職」「失業~事業開始」までの期間が短いほど、支給額が多くなります。
再就職手当の支給要件
- 対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
- 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給
再就職手当の給付率
- 手当の額:就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数により下記のとおり給付率が異なります。(1円未満の端数は切り捨て)
- 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の60%」
- 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の70%」
なお、再就職手当を受け取り再就職先で6カ月以上雇用され、かつ再就職先での6カ月間の賃金が離職前の賃金よりも少ない場合は「就業促進定着手当」の対象となります。
2.2 制度2:60歳以上65歳未満が対象の「高年齢雇用継続給付」
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の人が就労を続ける際、賃金が60歳到達時よりも減少した場合に支給される給付金です。
高年齢雇用継続給付の支給要件
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
- 支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合
高年齢雇用継続給付の支給率
- 支給額:最高で賃金額の10%(※)相当額
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は15%
老齢年金を受給しながら、厚生年金に加入して「高年齢雇用継続給付」を受け取る場合、在職による年金の支給停止に加え、最大で標準報酬月額の4%(※)に相当する金額が支給停止となる点に留意しておく必要があります。
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は6%
2.3 制度3:65歳以上が対象の「高年齢求職者給付金」
高年齢求職者給付金は、65歳以上の人が失業した際に支給される給付金です。
高年齢求職者給付金の支給要件
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
- 支給要件:下記の全ての要件を満たした人
- 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある
- 失業の状態にある:離職し「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」を指す
高年齢求職者給付金の給付金額
- 支給額
- 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
- 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額
なお、65歳未満が受け取る「失業手当」は4週間に一度ずつ失業認定を受けてから給付されるのに対し、この高年齢求職者給付金は一括で支給されます。
3. 2025年の年金制度改正で「遺族年金」はどう変わる?
2025年6月に成立した「年金制度改正法」の大きな狙いの一つは、働き方や家族構成の多様化に応じた年金制度の整備です。
今回の改正では、いわゆる「106万円の壁」撤廃に関連する社会保険加入要件の拡大のほか、遺族年金に関する見直しも盛り込まれました。
3.1 遺族厚生年金の男女差解消に向けた見直しの内容
現在の遺族厚生年金のしくみでは、受給者の性別によって下記のような男女差がありました。
現行の遺族厚生年金の仕組み
- 女性
- 30歳未満で死別:5年間の有期給付
- 30歳以上で死別:無期給付
- 男性
- 55歳未満で死別:給付なし
- 55歳以上で死別:60歳から無期給付
こうした男女差の解消に向けた見直しは、2028年4月から施行される予定です。
2028年4月施行予定の新しい仕組み
「原則5年間の有期給付」の対象となるための要件が、男女ともに詳細に定められました。
- 女性:施行直後(2028年4月)に原則5年間の有期給付の対象となるのは、「18歳年度末までのこどもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方」です。(※既に遺族厚生年金を受給している方や、2028年度に40歳以上になる女性は見直しの影響を受けません。)
- 男性:新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのは、「18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の方」です。
- こどもがいる場合:18歳年度末までのこどもがいる場合は、こどもが18歳年度末になるまでは現行制度と同じであり、見直しの影響はありません。こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付および継続給付の対象となります。
3.2 有期給付と継続給付の拡充について
配慮が必要な場合の給付についても、金額や要件が具体化されています。
- 有期給付の増額:有期給付には新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。
- 継続給付(5年目以降の給付継続)の要件:5年間の有期給付終了後も、障害状態にある方や収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給できます。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は継続給付が全額支給され、概ね月額20~30万円を超えると全額支給停止となります。
なお、今回の改正では「遺族基礎年金」の見直しも盛り込まれました。
同一生計にある父または母が遺族基礎年金を受け取れなかったケースでも、2028年4月からは、こどもが単独で「遺族基礎年金」を受け取れるようになります。
4. まとめにかえて:知らなきゃ損する「申請主義」。通知の見落としにも要注意
今回は、60歳・65歳以上を対象とした「申請しないと受け取れない5つの公的給付」をご紹介しました。
年金生活のベースを底上げする「加給年金」や「老齢年金生活者支援給付金」、そして働き続けるシニアを支える「再就職手当」や「高年齢雇用継続給付」など、国はさまざまな制度を用意しています。
しかし、これらの制度は「知っている人だけが得をし、知らない人は損をする」のが現実です。
なかには「年金生活者支援給付金」のように事前にお知らせが届くものもありますが、届いたハガキを他の書類に紛れて見落としたり、手続きを後回しにして期限を過ぎてしまえば、本来もらえるはずだったお金をドブに捨てることになりかねません。
「もしかして自分も対象かも?」と思ったら、決して放置せず、お近くの年金事務所やハローワークへ早めに問い合わせるなど、自ら行動を起こすことが大切です。
参考資料
- 内閣府「令和7年版高齢社会白書」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
- 日本年金機構「加給年金額」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」
マネー編集部社会保障班