5. 【65歳以上】働きながら年金を受け取る人はどれくらい増えているのか
年金生活というと「仕事を引退した後の暮らし」をイメージしがちですが、実際には65歳以降も働き続ける人が年々増えています。
総務省統計局「労働力調査(2025年)」によると、65歳以上の就業者数は約950万人に達し、過去最高水準で推移しています。
また、高齢者の就業率を見ると、
- 65~69歳:約55%
- 70~74歳:約35%
- 75歳以上:約12%
となっており、65歳代では2人に1人以上が何らかの形で就業している状況です。
5.1 就労収入は老後家計を支える重要な柱
背景にあるのは、平均寿命の延伸だけではありません。年金を中心とした収入だけでは不足する部分を補うため、再雇用やパート勤務、自営業などで収入を得る人が増えています。
特に近年は物価上昇の影響もあり、「生活費の補填」「将来の医療費や介護費への備え」「貯蓄の取り崩しを抑えるため」などを理由に働き続けるケースが少なくありません。
5.2 在職老齢年金の仕組みも知っておきたい
65歳以降に厚生年金に加入しながら働く場合は、「在職老齢年金」の対象となります。
在職老齢年金とは、給与と厚生年金の合計額が一定基準を超えた場合に、厚生年金の一部または全部が支給停止となる制度です。
近年は制度見直しが進み、以前よりも年金を受け取りながら働きやすい環境が整備されています。
5.3 「年金+就労収入」が新しい老後のスタンダードに
老後資金を考える際には、「年金だけで生活する」という前提だけでなく、「年金に就労収入を組み合わせる」という選択肢も現実的なものになっています。
実際に統計を見ると、多くの高齢者が年金を受給しながら働き続けており、就労収入は老後家計を支える重要な収入源の一つになっています。
今後は受給額だけでなく、「何歳まで、どのような働き方をするのか」という視点も、老後設計を考えるうえで欠かせないテーマといえるでしょう。
6. まとめにかえて:年金だけに頼らない老後資金の考え方
ここまで見てきたように、年金額は増額改定が続いているものの、実際の暮らしでは「生活費を十分にまかなえるか」という実感との間にギャップを感じる人も少なくありません。
その実態を知るうえで参考になるのが、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が実施したシニア世帯の生活実感に関する調査です。
調査によると、70歳代の単身世帯では35.5%が「日常生活費の確保が難しい」と回答しており、老後の家計に不安を抱える世帯が一定数存在していることがわかります。
2026年度は年金額が引き上げられましたが、その一方で物価上昇への対応も大きな課題となっています。
調査では、「生活にゆとりがない」「家計が苦しい」と感じている人の割合が、二人以上世帯・単身世帯ともに87.7%に達しています。その背景として多く挙げられているのが、食料品や日用品を中心とした物価上昇による負担増です。
さらに、公的年金の支給は「原則として偶数月の15日に、2カ月分がまとめて振り込まれる」仕組みです。毎月一定額の給与が入る現役時代とは異なり、奇数月には定期的な年金収入がありません。
インフレが続く環境下で老後資産を守るためには、年金額の少なさをカバーするだけでなく、「2カ月単位で支出を見通す」という年金生活特有の計画的な家計管理の視点が欠かせません。
まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で将来の受給見込み額や利用できる加算制度を確認し、そのうえで預貯金や資産運用、保険、そして「長く働く」という選択肢も組み合わせながら、長期的な視点で老後資金の準備を進めていくことが大切です。
参考資料
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 政府広報オンライン「年金の手続。国民年金の第3号被保険者のかたへ。」
- 日本年金機構「国民年金の第3号被保険者制度のご説明」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命
