6. コンセンサスは動く:「リビジョン(業績予想の修正)」という時間軸
決算発表でネガティブサプライズが起き、株価が急落した後、コンセンサスと会社予想の乖離はどうなるのでしょうか。ずっと乖離したまま下落が続くのかという疑問が湧きます。
実は、コンセンサスは一度出たら終わりではなく、時間とともに変化していきます。決算発表後、アナリストたちは企業のIR(インベスター・リレーションズ:投資家向け広報)担当者に取材を行います。
そこで「なぜこのような保守的な計画になったのか」「コストはどれくらい増えるのか」といった詳細を聞き出し、自身の業績予想モデルを修正して新しいレポートを作成します。この業績予想の修正プロセスを「リビジョン」と呼びます。
任天堂の経常利益コンセンサスが、時間とともにどのように下方修正(リビジョン)されていったかを見てみましょう。
このように、決算発表から時間が経つにつれて、アナリストのコンセンサスは5,793億円から5,546億円へと徐々に下がっています。
これは、市場の高い期待が少しずつ剥落し、現実に近づいていっていることを意味します。アナリストの取材やレポート作成には時間がかかるため、約1ヶ月程度かけてじわじわとコンセンサスが下がり、それに伴って株価も調整される期間が続くことがあります
7. コンセンサスの下げ止まり=「織り込み完了」のサインという見方
では、このコンセンサスの下方修正は、会社予想の4,300億円に到達するまで永遠に続くのでしょうか。そして株価も下がり続けるのでしょうか。
泉田氏は、必ずしもそうではないと指摘します。
「会社予想が保守的っていうふうに思えば、4300億までいかないでも4600億くらいまではあり得るなっていうふうに取材をして予想を変えてくるんですよ。そうすると4600億を織り込んだところで株価下落は止まります」
アナリストたちはプロの目利きとして、「会社の計画は少し慎重すぎる。実際にはもう少し利益が出るはずだ」と判断することがあります。その場合、コンセンサスは会社予想の4,300億円までは下がらず、例えば4,600億円あたりで下げ止まります。
この「コンセンサスが下げ止まったタイミング」が、投資家にとって重要なサインとなります。悪材料や失望感がすべて市場に「織り込み完了」したことを意味し、そこから株価の下落が止まる可能性が高いからです。
逆に、四半期ごとの決算発表(第1四半期など)で進捗がさらに悪ければ、アナリストは「やっぱり自分の予想はまだ強すぎた」と判断し、さらなる下方修正(リビジョン)を行うため、株価は再び下落基調に入ることになります。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日