アルゼンチンは財政行き詰まりへの懸念から信用格下げに

ハイパーインフレに苦しんだアルゼンチンでしたが、アルゼンチン・ペソを米ドルに連動させるドルぺッグ制を導入します(後にカレンシーボード制へ移行)。ドルが後ろ盾になったことでペソ通貨は安定。インフレを抑えることに成功し、1990年には失業率が9%まで改善するほどのV字回復を見せました。

しかし、2001年には、主要貿易相手となっていた隣国ブラジルが、1999年以降の経済危機から通貨レアルを引き下げざるを得なくなり、アルゼンチンからブラジルへの輸出は一気に冷え込んで、2001年には通算6回目のデフォルト(債務不履行)に陥るという事態に直面しました。

2001年の破綻後のアルゼンチン経済

アルゼンチンは、このデフォルトを新たに発行する国債に交換する債務の再編を行いました。また、自国通貨を通貨安に誘導し、富裕層優遇政策を廃止する政策を採りました。そしてリーマンショックも乗り越え、一時8%の経済成長を実現しています。

しかし、この債務再編に応じなかった米国の投資ファンドをはじめとする投資家が、デフォルトした国債の元利支払いを求めてアルゼンチン政府を米国で提訴し、勝訴したことで、2014年に再度、計画的ではありますがデフォルトとなりました。その後、2016年に投資家側と和解してデフォルトを解消。2年ぶりに国際金融市場へ復帰しました。

中道右派のマクリ政権は、2015年の大統領選挙でペロン党(左派)候補を僅差で破り、政権を獲得しました。前述の通り、IMFから支援を受けて、財政・経済運営の正常化を目指してきました。健全化が期待されましたが、緊縮財政への国民の不満は根強く、本選挙では相当に苦戦が予想されます。

一方で、過去の左翼政権での財政政策・経済政策での失政の記憶も根強く、ハイパーインフレやデフォルトを幾度となく繰り返してきたアルゼンチンが、同じ失敗に陥ることを市場は懸念しています。

アルゼンチンの大統領選挙制度では、10月実施予定の1回目の本選挙で勝利を決めるためには、1位の候補者が45%以上の得票率を得るか、得票率40%以上で、2位の候補との得票率の差が10%以上になることが必要となります。そうならなければ、11月に上位2候補による決選投票が行われることになります。10月の大統領選挙を控え、経済的には厳しい状況が続くでしょう。

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長谷川 建一
  • 長谷川 建一
  • ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク
  • 取締役兼CIO (Chief Investment Officer)

京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。
2004年末、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に移り、リテール部門マーケティング責任者として活躍。2009年からは国際部門でアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク)にてCOOに就き、2017年3月よりCIOを務める。