定年退職を迎える60歳や、老齢年金の支給が本格化する65歳というタイミングは、個人のキャッシュフローを支える社会保障制度が大きく入れ替わる重要な節目です。

ファイナンシャルアドバイザーとして老後資金や家計管理のサポートを行う業務の中では、「退職した後に収入が減ってしまったが、国の年金だけでは生活費が心もとない」といった、制度の複雑さに対する疑問や戸惑いの声が聞かれます。

特にリタイア前後の家計においてよく発生するのが、老齢年金そのものの手続きは行っていても、その周辺にある「加給年金」などの福祉的な加算や、ハローワーク経由で受け取れる「高年齢求職者給付金」といった雇用保険関連の給付制度を正確に把握できておらず、本来受け取れるはずだったお金を申請し損ねてしまう実務上の損失です。

日本の社会保障給付の大半は、対象要件を満たしていても自動的に口座へ振り込まれることはなく、本人側からの積極的な請求を必須とする「申請主義」の原則で運営されています。

少しの知識と手続きの有無によって、老後の総収入に数十万円から数百万円の格差が生じる仕組みになっているのです。

ここでは、60歳や65歳から対象となる5つの重要な公的給付金をはじめ、現在の働き方に直結する年金制度改正のポイントについて、官公庁の公式資料をもとに論理的に整理していきます。

1. この記事の3つのポイント

  •  日本の社会保障は「申請主義」が大原則であり、本人が請求手続きを行わないと給付金は受給できません。
  •  60代以降のシニアには、老齢年金への上乗せ2制度と、就労・求職状況に合わせた雇用保険の3手当などが存在します。
  •  年金制度見直しを見据え、世帯の年金記録と課税状況を客観的に把握することが必須です。

齊藤 慧

本記事は、編集部が厚生労働省や日本年金機構などが公表する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。

2. 意外と多い?申請しないと受け取れない公的なお金

老齢・障害・遺族年金といった公的な制度は、暮らしの大きな支えになります。ただ、受給資格があるからといって、自動的に支給が始まるわけではないので注意が必要です。

受け取りをスタートさせるには、必ず自分自身で「年金請求書」を出して、請求手続きを行わなければなりません。

国や自治体の給付金や補助金もこれと同じで、基本的には「申請」がセットになっています。

万が一、期限に間に合わなかったり書類が不足したりすると、受給額が減る、あるいは受け取れなくなるといった不利益が生じる可能性もあります。

せっかくの支援を賢く利用するためにも、まずは自分が対象となる制度を正しく理解し、確実に手続きを完了させるようにしましょう。