昨今の物価上昇は、日々の生活費を年金で賄う世帯にとって大きな課題です。「年金だけでは少し心もとない」「もう少し生活にゆとりが欲しい」と感じている方も少なくないでしょう。

実は、こうした状況を支援するため、公的年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」という制度が存在します。これは、所得が一定基準以下の年金受給者を対象とした国の支援策です。

この記事では、2026年度の改定内容を踏まえ、「年金生活者支援給付金」の具体的な仕組みを徹底解説します。

どのような人が対象になるのか、いくら受け取れるのか、そして手続きはどうすればよいのか。

対象者に届く請求書のパターン別に、具体的な申請方法まで詳しく解説します。ご自身が対象かどうかを正確に判断し、必要な手続きを進めるための知識をつけてください。

1. 年金生活者支援給付金の制度概要

年金生活者支援給付金制度について1/9

年金生活者支援給付金制度について

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

年金生活者支援給付金は、公的年金の受給額に加えて支給される給付金で、以下の3つの種類に分けられます。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

この制度は、「老齢」「障害」「遺族」のいずれかの基礎年金を受給している方で、公的年金などを含めた所得が一定の基準を下回る場合に、2カ月に一度、年金とは別に支給されるものです。

2. 年金生活者支援給付金の支給要件とは?年金とは別に支給される対象者を解説

3種類の年金生活者支援給付金には、それぞれに支給要件が定められています。全種類に共通する基準は、受給者本人の「前年の所得額」です。

特に老齢年金生活者支援給付金には、所得以外にもいくつかの要件が設けられています。

2.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件

「老齢年金生活者支援給付金」支給要件2/9

「老齢年金生活者支援給付金」支給要件

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税である
  • 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)である

※1 障害年金・遺族年金などの非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下の方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

2.2 「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」の対象者

  • 障害基礎年金または遺族基礎年金を受給している
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族の人数に応じて増額)

※ 障害年金、遺族年金などの非課税収入は所得に含みません。

それぞれの給付金について、上記の要件をすべて満たす場合に、年金生活者支援給付金を受け取ることができます。

3. 【2026年度】年金生活者支援給付金の基準額は3.2%増額!種類別の支給額

2026年度における年金生活者支援給付金の支給額は、前年の物価変動率を基に、3.2%の増額改定となりました。

3.1 【2026年度】年金生活者支援給付金の給付額

年金生活者支援給付金の給付額3/9

年金生活者支援給付金の給付額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級 月額7025円・2級 月額5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円

老齢年金生活者支援給付金については、上記の基準額をベースに、個人の「保険料納付済期間や免除期間」に応じて実際の支給額が算出されます。

4. 年金生活者支援給付金の手続き方法|対象者には日本年金機構から請求書が届く

年金生活者支援給付金の手続き方法4/9

年金生活者支援給付金

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金」

年金生活者支援給付金の支給対象と判断された方には、日本年金機構から請求手続きに関する案内が郵送されます。

書類の形式や送付時期は年金の受給状況によって異なるため、ここでは3つのケースに分けて手続きの流れを解説します。

4.1 【ケース1】これから老齢年金を受け取り始める方(緑の封筒)

65歳になり、これから老齢年金の受給を開始する方には、65歳になる3カ月前に「年金請求書(事前送付用)」が届きます。その中に「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。

必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日前日以降に、年金の請求書とあわせて年金事務所へ提出してください。

4.2 【ケース2】すでに年金を受給している方(うす緑の封筒)

年金生活者支援給付金請求書の封筒6/9

年金生活者支援給付金請求書の封筒

出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)送付用封筒」

すでに基礎年金を受給中で、新たに給付金の対象となる方には、2025年9月1日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送付されます。

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)7/9

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)

出所:日本年金機構「令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の送付について」

はがきに必要事項を記入し、同封の目隠しシールを貼付後、差出人欄に自身の住所・氏名を書いて切手を貼り、ポストへ投函します。

※支給要件に該当するか確認できない方には、A4サイズの請求書と所得状況届が送付されます。

4.3 【ケース3】老齢基礎年金を繰上げ受給中の方(うすだいだい色の封筒)

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用8/9

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用

出所:日本年金機構「65歳の誕生日を迎えた方で、老齢基礎年金を繰上げ受給している方」

老齢基礎年金を繰上げ受給している方で、給付金の対象になると見込まれる場合、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの方は前月初旬)に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届きます。

手続きはケース2と同様で、必要事項を記入し、目隠しシールを貼って切手を貼り、ポストに投函します。

※支給要件に該当するか確認できない方には、A4サイズの請求書と所得状況届が送付されます。

一度申請して支給が決定すれば、支給要件を満たし続ける限り、2年目以降の手続きは原則として不要です。もし所得の増加などで要件を満たさなくなった場合は、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届き、支給が停止されます。

なお、2025年1月以降に65歳に到達し、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき)」が届いた方は、郵送だけでなく「電子申請」も可能になりました。

電子申請を利用した場合、請求書を郵送する必要はありません。

5. 高齢者世帯の収入実態|約4割が「公的年金のみ」で生活

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の収入源に関する実態を確認します。

調査によると、高齢者世帯全体の平均所得構成では、「公的年金・恩給」が63.5%を占め、次いで就労による「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%という結果でした。

しかし、これはあくまで全体の平均値です。

「公的年金・恩給を受給している世帯」に限定して見ると、全収入が「公的年金・恩給」である世帯の割合は43.4%に達しており、年金収入のみで生計を立てている世帯が多数派であることが分かります。

※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成されるか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯

5.1 【総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成】

  • 公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.0%

このように、シニア世代全体で見ると稼働所得なども一定の割合を占めていますが、年金受給世帯に焦点を当てると、その半数近くが公的年金収入のみに依存して生活している実態が明らかになります。

6. まとめ:確実な手続きでインフレ社会に備えよう

高齢者世帯の収入実態が示す通り、多くのシニア層が国からの支給額だけで生活をやり繰りしており、わずかな上乗せでも家計の生命線になり得るのが現代のリアルです。

今回解説した支援金は、条件さえ満たせば毎月の手取りを恒久的に底上げしてくれる優れたセーフティネットですが、「知らなければ1円ももらえない」という厳しい一面も持ち合わせています。

これからの時代を生き抜くために大切なのは、ご自宅のポストに届く郵便物を「よくわからないから」と後回しにしないことです。

特に、定年退職や配偶者との離別などで世帯の収入状況が大きく変わった年は、新たに対象者となる可能性が高まります。

まずは改定通知書を確認するとともに、今後日本年金機構から送られてくる色付きの封筒(緑やうす緑など)の存在を頭の片隅に置いておきましょう。

そして、もし該当する書類を見つけたら、早めに記入・投函を済ませるという小さな行動力が、インフレに負けない安心のセカンドライフを築く第一歩となるかもしれません。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

渡邉 珠紀