2. 老後のおひとりさま、1カ月の月の生活費はいくら?
では、老後のおひとりさまは、毎月どのくらいのお金で暮らしているのでしょうか。総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕(2025年)」によると、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の1カ月の家計収支は、次のようになっています。
2.1 高齢単身無職世帯の収入と支出(1カ月)
1カ月の収入と支出の内訳は、次のとおりです。
- 実収入:13万1456円(うち年金などの社会保障給付が9割超)
- 可処分所得:11万8465円(実収入から税・社会保険料を引いた手取り)
- 消費支出:14万8445円
- 毎月の不足分:約3万円(▲2万9980円)
支出の中身をみると、最も大きいのは食料で、消費支出のおよそ3割を占めます。次いで、教養娯楽や光熱・水道、交通・通信などが続きます。さらに、人とのつき合いにかかる交際費も1割を超えており、食費や水道光熱費といった基本の生活費以外にも、一定の出費がかかることがうかがえます。
ここで注目したいのは、収入よりも支出のほうが多いことです。手取り収入に対する消費支出の割合(平均消費性向)は125.3%で、手取りだけではまかなえていません。つまり、毎月「約3万円」、1年では「約36万円」を貯蓄から取り崩して暮らしている計算になります。
3. 不足分とどう向き合う?年金改定もふまえて
この不足を補うのが、これまで蓄えてきた貯蓄です。さきほどの貯蓄の中央値は60歳代で300万円、70歳代で500万円。毎月およそ3万円・年間約36万円という取り崩しのペースを照らし合わせると、貯蓄の重要性がわかります。
収入の柱である年金は、2026年度(令和8年度)に国民年金で1.9%、厚生年金で2.0%引き上げられました。とはいえ、この改定率は物価の上昇率(3.2%)を下回っています。賃金の伸びに合わせる仕組みや、年金財政を長く保つための調整(マクロ経済スライド)が働くためで、年金額が増えても物価の伸びには追いついていない面があります。
だからこそ、できることから備えておきたいものです。たとえば、通信費や保険などの固定費を見直す、健康なうちは長く働いて収入を得る、年金の受け取りを遅らせて毎月の額を増やす(繰下げ受給)といった選択肢があります。新NISAなどの制度を使って資産運用を取り入れる方法もありますが、運用には値下がりのリスクがあり、生活に必要なお金まで投じないなどの注意も欠かせません。
いずれの選択肢もメリット・デメリットやリスクを洗い出した上で対策を考えましょう。
4. まとめにかえて
60歳代・70歳代おひとりさまの貯蓄は、平均で60歳代「1364万円」・70歳代「1489万円」、中央値は「300万円」「500万円」でした。グラフを見ると個人差の大きさがうかがえます。
一方で、65歳以上の単身無職世帯では、毎月およそ3万円の赤字を貯蓄で補っているのが実情です。年金は2026年度に引き上げられたものの、物価高のなかで家計の見直しはこれからも大切になります。まずは自分の現状(年金の見込み額・毎月の支出・貯蓄残高など)を一度確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)〔単身世帯〕」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」
宮野 茉莉子