世界中の企業が「景気が悪化するかもしれないから、設備投資は手控えよう」と考えると、本当に景気が悪化してしまいかねません。「株価は美人投票の如し」と言われますが、景気にも似たようなところがあるのです。

単に景気悪化を予想した設備投資の先送りではなく、冷戦激化を懸念した設備投資の見合わせが広がれば、影響は甚大なものとなるかもしれません。

最終的には「米国と取引したい企業は、中国と取引をするな」ということになるかもしれませんから、そうなることを懸念した輸出企業が中国向けの生産ラインを絞っていくこともあり得るでしょう。

その際、「ベトナム等への輸出が増えるのだから、輸出企業は設備投資を絞るべきではない」と筆者は考えるのですが、経営責任を負っている経営者としては、「ベトナム等への輸出が増えないリスクも考えると、とりあえずリスクを避けて1年は様子を見よう」と考えるかもしれません。世界中の輸出企業が同じように行動すれば、世界景気への悪影響は甚大でしょう。

事態の推移を固唾を飲んで見守る日々が続きそうです。

本稿は、以上です。よろしければ、関連する拙稿、『米国と中国は、ともに妥協できない全面対決へ』、『米中経済戦争で米国は「肉を切らせて骨を断つ」』も併せてご覧ください。

なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義