2026年6月2日現在、米国の10年国債の金利は4.4%台で推移しています。
信用力の高い米国が発行する高金利債券。しかし、手元に米ドルがない場合は日本円で購入することになるため為替レートが気になります。
直近の為替レートは1ドル=159円後半。為替介入が警戒される記録的な円安です。
今後、さらに円安が進行するのか、円高になっていくのかはわかりません。
では、現在の相場環境で4.4%の米国債を購入した場合、10年後にいくらまでの円高なら「損」しないのか。損益分岐点をシミュレーションしてみましょう。
1. 米国債の2つの選択肢「利付債」と「ストリップス債」の違い
米国債は大きく「利付債」と「ストリップス債(割引債・ゼロクーポン債)」の2つに分けられます。
この2つは「利息の受け取り方」が異なります。
1.1 【利付債】年2回定期的に利息を受け取る
- 年2回、決められた利息(クーポン)が定期的に米ドルで支払われる
- 満期時には額面通りの元本が戻る
- 途中で受け取った利息を再投資しない場合は単利運用となる
【どんな人に向いてる?】
半年ごとに利息を受け取って楽しみたい人(円転する場合は為替レートを要確認)
1.2 【ストリップス債】利息を「再投資」して満期時にまとめて受け取る
- 保有期間中に利息を受け取れない
- 将来もらえる利息分があらかじめ差し引かれ「最初から割引された安い価格」で購入できる
- 満期時には額面通りの金額が戻る
- 実質的に利息が自動で再投資され「半年複利」となる
【どんな人に向いてる?】
途中の利息は不要。”複利”で効率よく資産を最大化したい人
2. 米国債を購入するメリット・デメリット
米国債投資における基本的なメリットとデメリットを整理しておきましょう。
2.1 米国債投資の3つのメリット
- 【安全性】世界最大の経済大国である米国政府が元利金を保証しているため、債券としてのデフォルト(債務不履行)リスクは極めて低いとされている
- 【金利水準】4.4%前後という高いインカムゲインが期待できる(※日本の10年債利回りは2.6%前後)
- 【値上がりの可能性】将来、米国の金利が下落すると債券の市場価格が上昇。満期償還を待たずに途中売却して利益(キャピタルゲイン)を得るチャンスもある
2.2 注意すべき2つのデメリット(リスク)
- 【為替リスク】ドル建てでは元本が保証されていても、日本円に換算した際、購入時より円高が進んでいると円建てで損失が出る可能性がある
- 【金利変動リスク】満期前に途中で売却する場合、購入時よりも世の中の金利が上がっていると、債券価格が値下がりしているため売却損が出る可能性がある
3. 【10年シミュレーション】円高はいくらまで耐えられる?損益分岐点を検証
では、「1ドル=159円」「金利4.4%」「保有期間10年」という条件で米国債を購入した場合、将来の為替レートによって円建ての資産がどう変化するのか、期待値を一覧表で確認してみましょう。
今回は、利付債(単利運用)とストリップス債(半年複利運用)の2パターンを比較します。
3.1 利付債(単利運用)のシミュレーション結果
10年間、半年ごとに受け取る利息の合計は、元本のプラス44%となります。
この場合の損益分岐点は、1ドル=110.42円です。
利付債(単利運用)シミュレーション
利付債(単利運用)シミュレーション2/3
LIMO編集部作成
将来の為替:円建て損益率
- 60.42円:-45.28%
- 65.42円:-40.75%
- 70.42円:-36.23%
- 75.42円:-31.70%
- 80.42円:-27.17%
- 85.42円:-22.64%
- 90.42円:-18.11%
- 95.42円:-13.58%
- 100.42円:-9.06%
- 105.42円:-4.53%
- 110.42円:0.00%←損益分岐点
- 115.42円:4.53%
- 120.42円:9.06%
- 125.42円:13.58%
- 130.42円:18.11%
- 135.42円:22.64%
- 140.42円:27.17%
- 145.42円:31.70%
- 150.42円:36.23%
- 155.42円:40.75%
- 160.42円:45.28%
3.2 ストリップス債(半年複利運用)のシミュレーション結果
利息が出ない代わりに、半年複利の効果で10年後の資産は元本の約1.55倍(プラス約55%)に膨らみます。
資産がより効率よく増えるため、損益分岐点はさらに円高に耐えられる1ドル=102.89円まで下がります。
ストリップス債(半年複利)シミュレーション
ストリップス債(半年複利)シミュレーション3/3
LIMO編集部作成
将来の為替:円建て損益率
- 52.89円:-48.59%
- 57.89円:-43.74%
- 62.89円:-38.88%
- 67.89円:-34.02%
- 72.89円:-29.16%
- 77.89円:-24.30%
- 82.89円:-19.44%
- 87.89円:-14.58%
- 92.89円:-9.72%
- 97.89円:-4.86%
- 102.89円:0.00%←損益分岐点
- 107.89円:4.86%
- 112.89円:9.72%
- 117.89円:14.58%
- 122.89円:19.44%
- 127.89円:24.30%
- 132.89円:29.16%
- 137.89円:34.02%
- 142.89円:38.88%
- 147.89円:43.74%
- 152.89円:48.59%
※上記は税金や買付手数料、為替手数料等を考慮していない税引前のシンプルな理論値です。
4. 満期を待たずに利益を狙う「途中売却」という選択肢
米国債は、満期償還まで持ち続けることで、購入時に確定していた金利を確実に受けとれます。
しかし、保有期間中に米国の金利が下がった場合には、途中で売却して利益確定するという選択肢もあります。
債券の世界には、
- 金利が下がると債券の価格が上がる
- 金利が上がると債券の価格が下がる
という絶対的なシーソー関係が存在します。
もし購入後に米国の金利が下降した場合、保有中の「4.4%の債券」のドル建て価格は値上がりします。
このタイミングを狙って途中売却をすることで「売却益(キャピタルゲイン)」が得られるチャンスも。
4.1 中途売却時の注意点:「その時の為替レート」に左右される
途中売却してすぐに日本円に交換する場合は、必ず「為替レート」を確認して円ベースで利益を確認しましょう。
金利低下によって「ドル建ての債券価格」が上昇していても、急激な円高進行により円転した段階で値上がり益が相殺またはマイナスになる可能性があるからです。
売却益を狙って途中売却をする場合は、「ドル建ての価格上昇」と「為替レート」で試算し、トータルがプラスになっているかをチェックしてください。
5. まとめ
1ドル=159円という現在の水準だけを切り取ると、「歴史的な円安局面での購入は避けたい」と躊躇してしまうのは自然なことです。
しかし、年4.4%という高い利回りを10年間にわたって積み上げていくことは、将来的な円高リスクに対する強力な緩衝材となるでしょう。
もちろん、10年後に予測を超えるような想定外の超円高時代が訪れるリスクも当然ゼロではありません。
本記事は特定の金融商品を推奨するものではありませんが、「高金利がもたらすリターン」と「為替の変動リスク」のバランスをご自身の許容度と天秤にかけながら、客観的で冷静な投資判断を行うためのヒントとしてお役立てください。
【免責事項】
- 投資にはリスクが伴います。
- 本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
参考資料
ファイナンス部