5. 年金だけで生活できる人とできない人を分けるものとは?

ここまで見てきたように、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、公的年金を中心に生活しているケースが一般的です。しかし実際には、「年金だけで十分暮らせる世帯」と「毎月赤字になる世帯」が存在し、その差は決して小さくありません。

老後の家計を左右する要因として大きいのが、「毎月の支出水準」と「貯蓄や就労収入の有無」です。

5.1 年金収入だけでは平均的な家計は赤字になる

これまで見てきた家計調査のデータによると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均的な家計は次のようになっています。

  • 実収入:25万4395円
  • 支出合計:29万6829円
  • 毎月の赤字:約4万2434円

平均的な家計では、年金を中心とした収入だけでは支出をまかないきれず、毎月約4万円の不足が生じています。

単純計算では、年間で約51万円の赤字となり、その不足分は貯蓄の取り崩しなどで補う必要があります。

5.2 貯蓄がある世帯は赤字を吸収しやすい

もっとも、老後の家計は毎月の収支だけで判断できるものではありません。

世帯主が65歳以上の二人以上世帯の貯蓄額を見ると、中央値は1658万円となっています。十分な貯蓄を確保できている世帯であれば、毎月数万円の赤字であっても、長期間にわたって生活を維持することは可能です。

一方で、貯蓄が少ない世帯では、同じ赤字額であっても家計への負担感は大きくなります。老後の安心感を左右するのは、年金額だけでなく、それまでにどれだけ資産を準備できているかという点でもあります。

5.3 就労収入が家計を支えるケースも増えている

近年は、年金に加えて働き続けるシニアも増えています。

短時間勤務やパート収入であっても、月数万円の収入があるだけで家計収支は大きく改善します。例えば月5万円の就労収入があれば、平均世帯の赤字額をほぼ補える計算になります。

そのため、「年金だけで暮らせるか」という視点だけでなく、「貯蓄」「就労収入」「支出の管理」を含めて家計全体で考えることが重要です。

5.4 老後の暮らしを左右するのは年金額だけではない

同じ年金受給額であっても、住宅ローンの有無や住まいの形態、貯蓄額、就労状況によって家計の余裕は大きく変わります。

年金だけで生活できるかどうかは一律には判断できませんが、統計データからは、多くの世帯が年金収入だけでは不足分を抱えていることが分かります。

だからこそ、現役時代からの資産形成や、老後を見据えた家計管理の重要性が高まっているといえるでしょう。次章では実際にシニア世帯はどう感じているのか、その実態を見ていきます。