自分の貯蓄額がどの程度なのかを知るためにも、平均貯蓄額は把握しておきたいもの。とはいえ、貯蓄の状況は世代によっても大きく異なります。
とくに、なにかと支出が重なる40代と、多くの人が定年を迎える60代ではかなりの差があるでしょう。その具体的な状況と、差が開く原因を探ってみましょう!
1世帯あたりの貯蓄額の平均値と中央値
総務省は、2019年5月17日に「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2018年(平成30年)平均結果-(二人以上の世帯)」を公表しています。その結果、2人以上世帯の1世帯当たり平均貯蓄現在高は1,752万円となりました。
ここで、「平均値」の注意点を踏まえておきましょう。「すべて値の合計をデータの数で割った数字」である平均値は、極端に大きな数字によって引き上げられるケースがあります。そのため、「貯金が数億円ある」といった人がいた場合、実態とかけ離れた平均値が算出されることも。
そこで、「中央値」もあわせて把握しておくといいでしょう。これは、データを順番に並べた際に真ん中にある値を指します。先ほどの調査では、中央値は1,036万円、貯蓄「0」世帯も含めた中央値は978万円となっています。
平均値の1,752万円と比較すると、700万円以上も低い結果になりました。「平均値の高さに驚いたが、中央値の数値を見て少し安心した」という方も多いのではないでしょうか。
40代と60代で貯蓄額が違う理由は退職金?
先ほどの結果には、さまざまな世代が混在しています。そこで、40代と60代の2人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)を、金融広報中央委員会(知るぽると)の「家計の金融行動に関する世論調査 [二人以上世帯調査] (平成30年)」のデータからチェックしていきましょう。
40代…平均値942万円、中央値550万円
60代…平均値1849万円、中央値1000万円
両者を比較すると、平均値・中央値ともに2倍近い差があります。60代でここまで資産が増えるのは、「退職金」の影響があると考えられるでしょう。
厚生労働省が発表した「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」では、企業の80.5%が「退職給付(一時金・年金)制度がある」と回答しています。60代の多くは、この退職金によって資産が一気に増加するのでしょう。
また、2019年に日本経済団体連合会が発表した「2018年9月度退職金・年金に関する実態調査結果」では、「学校卒業後直ちに入社し、その後標準的に昇進・昇格した者」を例にした「標準者退職金」を以下のように示しています。
標準者退職金の支給額(総額)
管理・事務・技術労働者
(総合職) 生産・現業労働者
大学卒 2255.8万円 -
高校卒 2037.7万円 1817.2万円
ただし、この調査の対象は従業員500人以上の企業が81.0%も占めています。そこで、東京都産業労働局が公表した「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」をもとに、中小企業のモデル退職金もみておきましょう。
モデル退職金(卒業後すぐに入社し、普通の能力と成績で勤務したケースの退職金水準)
大学卒 1203.4万円
高校卒 1126.8万円
大企業の退職金は2000万円前後であるのに対し、中小企業は1100~1200万円という結果に。両者には約1000万円の差があると分かりました。