生き物は生まれた限り、いつかは死んでしまう。人間も当然ながら同じで、私たちには必ず逃れようのない死が訪れます。しかし、「死」をどう捉え、それにつながる「生」をどう生きるかは、考え方によって変わっていくのではないでしょうか。

今回は近年増えている若者の自殺について、ベストセラーとなった書籍を取り上げながら、現代の若者がどのように生きることに向き合っていくかについて、考えていきたいと思います。

「未来に希望がない」増加する10代の自殺

今現在、日本の自殺率は減少傾向にあると言われています。しかし、その中で10代の自殺が増えていることをご存知でしょうか。

厚生労働省の調べによると2018年の自殺者数は2万840人で9年連続で減少しています。しかし、年代別で見てみると、10代の自殺者率は32人増加の599人となっています。

私たちが過ごした1日分の24時間の中で、自ら命を落としている若者が少なからず1人はいるのです。このように考えると、とても深刻な問題だと捉えることができるのではないでしょうか。

また、10代の自殺者の原因のうち、特定できたもので最多を占めたのは「学校問題」です。学校問題というとすぐに頭に浮かぶのはいじめかと思いますが、実はその中で最も多いのは「学業不振」となっています。

社会を取り巻く不景気により、「良い学校に入って、良い企業に就職しなければ」「新卒で就職できなければ、生活できるだけの給料がもらえない。そのためには良い成績を納めなければいけない」というプレッシャーが、若者をも追い詰めているのかもしれません。

若くして自殺した人々の著書、一部はベストセラーも

新潮社が1976年から毎年夏に開催している、「新潮文庫の100冊」というキャンペーンをご存知でしょうか。

このキャンペーンは、新潮社から発行されている中でイチオシの文庫を100選ピックアップするもので、今年の100冊の中には20歳で亡くなった女子大生、高野悦子さんの『二十歳の原点』も選出されています。

この著書は当時立命館大学文学部に在籍していた高野さんが、20歳になった1969年1月2日から、鉄道自殺をする2日前の同年6月22日までの日記をまとめたものです。赤裸々な心情や、死や愛を考えて苦悩しながらも生きる高野さんの姿は、没後50年が経った今でも多くの人の胸を打ち、現在までで230万部を売り上げるベストセラーとなっています。

また、同じく新潮文庫から発行されている、18歳で自ら命を絶つ選択をした南条あやさんの著作『卒業式まで死にません』では、若くして心の病を抱えた南条さんの「死にたい」と「生きていたい」が交差する叫びが、同じ悩みを抱える若者たちに支持されています。

他にも2003年に自死を選び、2013年にネット上のブログをまとめた『八本脚の蝶』が復刊された編集者の二階堂奥歯さんなど、死を思いながら生きようとした人々の著作は今も多くの人に読まれているのです。

死をタブー視しない動き「自殺を扱うことは死の促進ではない」