この記事の読みどころ

オリンピックの金メダルは、銀メダルに金メッキがされたものです。純金製ではないため、評価価格も驚くほど安くなっています。

銀相場は過去2回の大相場がありました。1度目はハント兄弟の買い占め、2日目はバフェット氏の買い占め示唆が発端となりました。

銀の特需が期待された太陽光ビジネスが不発に終わりそうなため、価格上昇は期待し難いです。将来の3度目の大相場に期待するしかないのでしょうか。

五輪の優勝者に贈呈される金メダルは純金ではない

ふと気が付くと、リオデジャネイロ五輪大会の開幕まで、残すところあと140数日となりました。今から本当に楽しみです。

ところで、オリンピック競技の優勝者に贈呈される燦然と輝く金メダルは、純金ではないということをご存知でしょうか。これは、オリンピック憲章で「純度92.5%以上の銀メダルに、少なくとも6グラム以上の純金でメッキされたもの」と明確に定められています。

簡単に言うと、2位のアスリートに贈呈される銀メダルの表面に、金メッキがされたものです。

こんなに安い金メダルの評価価格

2014年2月にソチ(ロシア)で開催された冬季オリンピック大会では、金メダルが約5万5千円、銀メダルが約3万1千円、銅メダルが約325円と評価されています(当時の新聞報道、当時の為替レート換算)。

各メダルとも、直径10センチ、厚さ1センチの同サイズですが、使用されている材質によって評価価格が大きく異なります。

それにしても、銅メダルが非常に安いのはともかくとして、金メダルが思った以上に安いことに驚いた人も多かったと思います。その理由は簡単で、中身がほとんど銀メダルだからです。

2014年2月当時の金価格は、1グラム=4,100円前後(小売価格、消費税抜き)でしたから、金メッキに6グラム使用しているとすると、金メダルと銀メダルの価格差は概ね説明できます。

ちなみに、現在の金価格は1グラム=4,650円前後(同)、銀価格は1グラム=59円前後となっています。

銀の特徴~幅広い工業用途、通貨としての価値も

さて、前置きが長くなりましたが、その金メダルの大部分を占めている銀について見てみましょう。

銀という貴金属の特徴は、1)産業向け用途が幅広い(電気伝導率、熱伝導率は貴金属の中で最大)、2)手頃な宝飾品として人気が高い(可視光線の反射率が高い)、などのメリットがある一方、空気中で黒っぽく変色しやすいという欠点があることです。

特筆すべきは、金と同様に事実上“通貨”としての価値があるということでしょう。実際、欧米では今でも銀貨が流通しています。

1980年に起きたハント兄弟の買い占め事件

さて、1970年以降の銀相場を振り返って見ると、典型的なバブルと呼べる2度の大相場がありました。最初の大相場は、1980~1981年にかけて起きた“ハント相場”です。

これは、「銀の木曜日」という別称がある有名な相場で、米国の資産家(投機家)であるハント兄弟による銀の買い占めが発端となり、価格が一時50ドル前後(トロイオンス当たり、以下同)まで急騰しました(注:グラフは月中平均値であるため50ドルには達していない)。

また、円建て価格は1グラム当たり300円超まで上昇しました。なお、買い占めに失敗したハント兄弟は、その後に破産しています。

出所:ドル建て価格はLBMA(The London Bullion Market Association)の月中平均値。円建て価格は三菱マテリアル(2012年~)、及び、田中貴金属(~2011年)が公表する小売価格(月中平均)から、筆者が消費税抜きベースに再計算。

2011年には太陽光バブルの大相場、バフェット氏も関連か?

2回目の大相場は、“ハント相場”から約30年後の2011年に起きた急騰相場で、この時も一時50ドル弱にまで上昇しました。きっかけは、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が、銀の年間供給量の20%を買い占めたとの発言です。

前回の“ハント相場”とは異なり、この時は太陽光発電向けに銀の特需が発生するという見通しもあったため、単なる買い占めとは異なりました。ただ、その後は前回同様に暴落して終わっています。この2度目の大相場は、“太陽光バブル”とか“バフェット相場”と呼ぶのでしょうか。

金やプラチナでは起こり得ない2度の大相場

過去2度の大相場は、個人(企業)が買い占めを示唆することで価格高騰が起きました。しかも、バフェット氏の買い占め発言の真偽は今も闇の中です。単なるポジショントークだった可能性もあります。

しかし、金やプラチナでは、このような人為的な大相場は起こり得ないと断言できましょう。それだけ、銀相場は脆弱なのです。

現在の銀価格はやや低迷が続く、大相場は三度起きるか

さて、現在の銀価格ですが、直近1年半は概ね15~16ドルで推移しています。この価格は10年前(2006年春)と比べて約+60%上昇しているのですが、2度目の大相場(2011年3月)に付けた高値から約▲70%下落した水準にあります。

2度目の大相場で期待された太陽光ビジネスが下火になりつつある現在、価格上昇はなかなか見込めないのが実情です。また、通貨の役割を持つとはいえ、金のような米ドルとの逆相関性も乏しい状況です。

しかし、2度あることは3度ある、大相場が3度起きる可能性は捨て切れません。単純な周期で見れば2040年頃でしょうか。ただ、銀は金と違って手頃な価格で買えますから、超スーパー長期投資として一考の価値はあるかもしれませんね。

【2016年3月16日 投信1編集部】

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LIMO編集部