新時代を切り拓く挑戦者、フロンティア諸国
平成から令和に変わり、新時代を担うフロンティア諸国に注目が集まっています。フロンティア(Frontier)は、未開拓地を意味し、フロンティア諸国とは、中東、アフリカ、アジア、中南米など、経済発展の初期段階にあり、将来的に高い成長が期待される国々のことです(注1)。
今年も、米中間の貿易を巡る緊張に端を発し、世界的な景気後退懸念の高まりを背景に、リスク回避の動きが顕著ですが、この行き過ぎた警戒感に動かされている株式市場に投資妙味を見出し、特に、将来にわたって成長が期待できるフロンティア諸国の株式市場に関心を寄せる投資家は少なくありません。
MSCI指数組み入れ – サウジアラビアとアルゼンチンに続き、クウェートも
昨年、MSCI新興国株式指数に中国A株が採用され、今年は、その組み入れ比率が4倍以上に引き上げられることから、中国株式市場への資金流入を促しています。同様に、サウジアラビア、アルゼンチンもMSCI新興国株式指数への採用が決定され、今年5月末時点の組み入れ比率はサウジアラビア1.44%、アルゼンチン0.29%、最終的には、サウジアラビアの組み入れ比率は2.84%となる見込みです。
MSCIの指数は機関投資家はもちろん、多くのETF、インデックスファンドのベンチマークとして採用されており、指数を参照する世界の投資家からの資金流入が期待されます。そして、クウェートも来年6月にMSCI新興国株式指数に組み入れられることが決定されました。
フロンティア株式を活用した分散投資
様々な資産クラスの相関性に応じて、バランス良く投資する分散投資の重要性を、「人生100年時代 - リスクを抑えて、分散投資 <HSBC投信レポート>」 でも、ご説明させていただきましたが、この点からも、フロンティア株式は注目に値します。
異なる値動きをする資産クラスを組み合わせることにより、資産価格の変動(リスク)を抑えながら、リターンを確保するのが分散投資のポイントです。下のグラフでは、先進国株式と新興国株式を組み合わせるよりも、先進国株式とフロンティア株式の組み合わせの方が、相関係数が低く、リスクを抑えられることが示されています。
2100年まで続く、現役世代の増加
世界保健機関(WHO)の定義では、高齢化率、つまり、65歳以上の人口が総人口に占める割合が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%超は「超高齢社会」とされています。総務省の人口推計によると日本の高齢化率は27.7%(平成29年10月1日時点)、つまり、日本はすでに超高齢社会なのです。
これは先進諸国の中でも最も高い水準ですが、先進国の高齢化率は軒並み上昇傾向にあり、裏返して言えば、生産年齢人口と呼ばれる15歳以上65歳未満の人口は減少傾向にあるため、経済成長の基盤となる労働力を十分に供給できない恐れも生じています。
一方、フロンティア諸国では、生産年齢人口では先進国を上回り、今後も増加していくという予測が国際連合の人口予測にも示されています。若さと希望にあふれたフロンティア諸国では、将来の生産・消費の担い手である現役世代の増加により、経済成長が加速していくことが期待されます。
時代の先を行く発展 – リープフロッグ
リープフロッグ(Leapfrog = カエル跳び)とは、先進諸国が経てきた段階的な技術革新を飛び越えて、最先端の技術が普及することを指します。新興国においては、固定電話の普及を飛び越えて、携帯電話が急速に普及したことが例として挙げられますが、ケニアのキャッシュレス決済も好例でしょう。
日本のキャッシュレス決済比率は2割にも満たず、世界的に見ても導入の遅れが指摘されていますが、ケニアにおいては、人口の7割近くがモバイルマネーサービスを利用しており、その額は、GDPの5割近くにも及ぶと言われています。
銀行ネットワークが都市部に限られ、銀行の口座開設は困難でも、携帯電話は広く普及していたことにより、銀行口座を介さず、携帯電話のショートメッセージ(SMS)を使って、送金できるモバイルマネーサービス「M-Pesa」が、農村部に住む家族への仕送りなど少額送金のニーズに合致し、急速に拡大しました。今では、公共料金の支払いや給料の受け取りまでM-Pesaが利用されています。
未開拓市場で、成長への先回り投資
経済発展の初期段階にあるフロンティア諸国は、個人投資家にとって情報収集が容易ではなく、市場へのアクセスが難しかったことから、文字通り、未開拓(= Fontier)な市場です。フロンティア諸国と一括りに言っても、国ごとの経済成長率の差、政治情勢など、注視すべき点も多々ありますが、指数採用にも示されているように、フロンティア諸国はもはや無視できない存在となっています。
人口動態からも見える潜在的な経済成長の高さに加え、リープフロッグのような技術革新による多くのビジネスチャンスも見込まれます。今からフロンティア諸国について理解を深め、新時代を切り拓く投資先を発掘しましょう。
注1:フロンティア諸国の定義は各社異なる場合があります。