5月も終盤を迎え、お住まいの自治体や勤務先から「住民税決定通知書」が届き始める季節となりました。

手元の書類に並ぶ税額を見つめながら、「そもそも住民税ってどんな仕組みなんだろう」「ニュースでよく聞く『住民税非課税世帯』って、具体的にいくらから該当するのだろう」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。

お金に関する情報が更新されるこの時期だからこそ、知っているようで知らない制度の境界線を正しく把握しておくことが大切です。

本記事では、住民税非課税世帯の基本的な仕組みや3つの要件を整理するとともに、神戸市の具体例を用いた収入目安、さらにシニア世代が該当しやすい理由や受けられる支援策について、データをもとに分かりやすく解説していきます。

1. 【基本を確認】「住民税非課税世帯」とは?

住民税非課税世帯について理解するために、まず住民税の仕組みを整理しておきましょう。

住民税は、都道府県や市区町村に納める地方税で、地域の公共サービスや行政運営を支える財源のひとつです。

個人住民税は、次の2つで構成されています。

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造1/4

個人住民税のしくみ

出所:総務省「個人住民税」

  • 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
  • 所得割:所得に応じて税額が決まる部分

この2つがどちらも課税されない状態を「住民税非課税」といいます。

さらに、世帯全員が非課税に該当する場合、「住民税非課税世帯」として扱われます。

なお、「所得割のみ非課税」となるケースもあります。

ただし、給付金の対象範囲は自治体によって異なるため、詳しくは居住地の自治体情報を確認する必要があります。

2. 【住民税非課税世帯の条件】非課税になる3つの要件

住民税が課税されないのは、以下のいずれかに該当する場合です。

  1. 生活保護を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
  3. 前年の所得が各市区町村の基準を下回る

なお、1と2は全国共通ですが、3の所得基準は自治体によって異なります。

3. 住民税非課税世帯となる所得要件

住民税非課税世帯の基準について、兵庫県神戸市を例に確認します。

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?2/4

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?

出所:神戸市「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」

35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円

ただし、21万円は同一生計配偶者(※)または扶養親族がいる場合のみ加算

※同一生計配偶者とは、納税義務者と生計を一にする配偶者で、前年の合計所得金額が48万円以下の人

4. 住民税非課税世帯となる収入目安

住民税の判定は、扶養親族数や収入の種類によって変わります。

また、判定基準は「所得」であるため、ここでは分かりやすく神戸市を例に収入ベースで見ていきます。

単身世帯

合計所得金額が45万円以下になる方

  • 給与収入のみで収入金額が100万円以下
  • 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)

同一生計配偶者か扶養家族が1名いる場合

合計所得金額が101万円以下になる方

  • 給与収入のみで収入金額が156万円以下の方
  • 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が171万3333円以下の方(65歳未満)

単身世帯では、給与のみなら年収100万円以下、65歳以上で公的年金のみの場合は155万円以下が非課税の目安です。

一方、扶養家族や配偶者がいる世帯では、非課税となる収入基準が高く設定されています。

とくに65歳以上で年金収入のみのケースでは、基準額が211万円以下まで広がる点が特徴です。

このように、住民税の課税基準は世帯構成や収入内容によって変わる仕組みとなっています。

5. シニア世帯は「住民税非課税世帯」に該当しやすいって本当?

厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」のデータをもとに、年代別に住民税が「課税されている世帯」の割合を見てみましょう。

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合4/4

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

出所:厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)をもとにLIMO編集部作成

  • 29歳以下:63.0%
  • 30〜39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

※  全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含む
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む

30~50歳代では課税世帯が90%近くを占めていますが、60歳代になると79.8%へ低下します。

さらに65歳以上では61.1%、75歳以上では54.4%まで下がり、年齢が上がるほど課税世帯の割合が小さくなる傾向が確認できます。

これは、年金生活に入ると現役時より所得が減ることに加え、65歳以上には年金に対する所得控除が手厚いこと、そして遺族年金が非課税であることなどが理由です。

こうした背景から、高齢層では「住民税非課税世帯」に該当しやすいといえるでしょう。

6. シニア世帯が受けられる「住民税非課税世帯向け支援」とは?

住民税非課税世帯に該当すると、税負担が軽くなるだけでなく、各種支援制度の対象となるケースがあります。

とくに年金収入が中心となるシニア世帯では、物価高が続くなか、「どのような支援を受けられるのか」を知っておくことが、家計防衛につながります。

たとえば、国の経済対策として実施される給付金では、「住民税非課税世帯」が対象となることが多くあります。

過去にも物価高対策として現金給付がおこなわれており、協議が本格化している「給付付き税額控除」においても、低所得層や非課税世帯への給付が重視される見通しです。

また、国民健康保険料や介護保険料の軽減措置が適用されるケースがあるほか、医療費の負担を抑える「高額療養費制度」では、所得区分に応じて自己負担上限額が低く設定されます。

さらに、年金収入や所得が一定基準以下の場合は、「年金生活者支援給付金」の対象となる可能性もあります。

こうした支援制度は、自動的に受けられるものばかりではなく、申請が必要な場合もあります。

「知らなかった」で受け取れないことがないよう、自身が対象となる制度を確認しておくことが大切です。

7. 「住民税非課税世帯」の仕組みを知ることが支援制度理解の第一歩

本記事では、住民税非課税世帯の条件について解説しました。

住民税非課税世帯の基準は世帯構成や収入状況によって異なり、高齢になるほど年金収入中心の生活へ移行することなどから、シニア世帯では該当しやすい傾向も見られます。

支援制度は「知らなかった」で受け取れないケースも少なくありません。

今後の制度変更や給付策に備える意味でも、自身の所得状況や世帯条件を確認しながら、「自分が対象になり得るか」を早めに把握しておくことが大切といえるでしょう。

参考資料

橋本 優理