生活にも変化が訪れるこの時期に、将来のお金、特に年金収入について改めて考える方も多いのではないでしょうか。

公的年金だけでは少し心もとないと感じる場合、年金受給者の生活を支える「年金生活者支援給付金」という制度が力になるかもしれません。

この制度は、所得が一定の基準を満たす年金受給者に対して、年金に上乗せして給付金が支給されるものです。

この記事では、どのような方が対象になるのか、いくら受け取れるのか、そして手続きはどうすればよいのか、最新の情報を交えて詳しく解説していきます。

ご自身やご家族が対象になる可能性はないか、この機会にぜひ確認してみてください。

1. 年金生活者支援給付金の基本概要

年金受給者の生活を後押しするため、2019年に年金生活者支援給付金制度が始まりました。

受給要件を満たす対象者には、2カ月に1度、公的年金の支給日に合わせて年金生活者支援給付金が支給されます。

年金生活者支援給付金制度について1/11

年金生活者支援給付金制度について

出典:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

年金生活者支援給付金は3種類に分類され、受給している基礎年金の種類に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」が用意されています。

それぞれの基礎年金受給者で、定められた所得要件を満たす方がこの給付金の対象となります。

2. 年金生活者支援給付金の対象となる方

年金生活者支援給付金は3つの種類に分かれており、それぞれに所得などの支給要件が定められています。

ここでは「老齢年金生活者支援給付金」と、「障害年金生活者支援給付金および遺族年金生活者支援給付金」に分けて、詳しい要件を確認していきましょう。

2.1 老齢年金生活者支援給付金の支給条件

「老齢年金生活者支援給付金」支給要件2/11

「老齢年金生活者支援給付金」支給要件

出典:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給している方
  • 同じ世帯の全員が市町村民税非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入金額(※1)と、その他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下(※2)であること

※1 障害年金・遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降生まれの方で合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の場合、また昭和31年4月1日以前生まれの方で80万6700円を超え90万6700円以下の場合には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

2.2 障害・遺族年金生活者支援給付金の対象者について

  • 障害基礎年金または遺族基礎年金の受給者であること
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数に応じて増額されます)

※ 障害年金、遺族年金などの非課税収入は所得に含みません。

なお、いずれの給付金も、定められた要件をすべて満たす必要があります。

3. 最新データで見る年金生活者支援給付金の平均月額

厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、実際に支給された年金生活者支援給付金の平均月額を見ていきましょう。

2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金で4146円、障害年金生活者支援給付金で5727円、遺族年金生活者支援給付金では5228円という結果でした。

※2025年3月時点で認定されている方の平均給付金額です。

さらに、年齢別の平均額についても詳しく見ていきます。

3.1 年齢別の老齢年金生活者支援給付金の平均額

  • 70歳未満:4905円(43万9628件)
  • 70~74歳:4374円(56万1362件)
  • 75~79歳:4092円(85万9446件)
  • 80~84歳:3936円(95万453件)
  • 85~89歳:3989円(82万8270件)
  • 90歳以上:4045円(86万5282件)

3.2 年齢別の障害年金生活者支援給付金の平均額

  • 30歳未満:5692円(26万6276件)
  • 30~39歳:5668円(31万6202件)
  • 40~49歳:5655円(37万1772件)
  • 50~59歳:5671円(46万8876件)
  • 60~69歳:5749円(38万4626件)
  • 70~79歳:5880円(26万4423件)
  • 80歳以上:6033円(10万4991件)

3.3 年齢別の遺族年金生活者支援給付金の平均額

  • 20歳未満:4190円(5687件)
  • 20~29歳:5310円(529件)
  • 30~39歳:5310円(7881件)
  • 40~49歳:5310円(3万4072件)
  • 50~59歳:5310円(2万7828件)
  • 60歳以上:5310円(1710件)

4. 給付金を受け取るための手続きの流れ

それでは、この給付金を受け取るには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。

年金生活者支援給付金6/11

年金生活者支援給付金

出典:厚生労働省「年金生活者支援給付金」

「手続きを忘れてしまいそうで不安」と感じる方もいるかもしれませんが、年金生活者支援給付金の支給対象と判断された方には、日本年金機構から請求に関する書類が送付されます。

基本的には、送られてきた書類に必要事項を記入して返送するだけで手続きは完了します。

ただし、対象者の年金受給状況によって書類の形式や手続きのタイミングが異なるため、3つのケースに分けて手続き方法を見ていきましょう。

4.1 ケース1:これから老齢年金の受給を開始する方(緑の封筒)

まだ年金を一度も受給していない方には、受給開始の3か月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書(事前送付用)」が届きます。

その際に、「年金生活者支援給付金請求書」が一緒に封入されています。

必要事項を記入し、年金の請求書とあわせて提出しましょう。ただし、請求書は年金の受給開始年齢に達する誕生日の前日以降でないと提出できない点には注意が必要です。

4.2 ケース2:すでに年金を受給中の方(うす緑の封筒)

年金生活者支援給付金請求書の封筒8/11

年金生活者支援給付金請求書の封筒

出典:日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)送付用封筒」

すでに基礎年金を受給している方でも、所得の変動などによって新たに年金生活者支援給付金の対象となる場合があります。

そうした方々を対象に、毎年9月1日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)9/11

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)

出典:日本年金機構「令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の送付について」

必要事項を記入したら、同封されている目隠しシールを貼り、差出人欄にご自身の住所・氏名を書いてから、切手を貼って投函します。

※支給要件に該当するかどうか確認できない方には、年金生活者支援給付金請求書(A4型)と、所得情報を確認するための所得状況届が送付されます。

4.3 ケース3:老齢基礎年金を繰上げ受給している方(うすだいだい色の封筒)

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用10/11

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用

出典:日本年金機構「65歳の誕生日を迎えた方で、老齢基礎年金を繰上げ受給している方」

最後に、老齢基礎年金を繰上げ受給している方のケースです。

年金生活者支援給付金の受給資格が発生すると見込まれる場合、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの方は前月初旬)に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。

書類が届いたら、必要事項を記入し、同封の目隠しシールを貼ってから切手を貼付してポストに投函してください。

※支給要件に該当するか確認できない方には、年金生活者支援給付金請求書(A4型)と、所得情報を確認するための所得状況届が送付されます。

初回の手続きさえ済ませれば、その後は支給要件を満たし続ける限り、継続して給付金を受け取ることができます。

もし所得が増えるなどして支給要件を満たさなくなった場合には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届き、給付金の支給は停止となります。

なお、2025年1月以降に65歳に到達し、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき)」が届いた方は、電子申請での提出も可能になっています。

電子申請で提出した場合は、郵送での提出は不要です。

5. 公的年金のみで生活するシニア世帯の現状

公的年金だけで生活している高齢者世帯は、実はそれほど多くないのが現状です。

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、その割合は43.4%となっています。

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成11/11

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成

出典:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給が総所得の80~100%未満を占める世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給が総所得の60~80%未満を占める世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給が総所得の40~60%未満を占める世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給が総所得の20~40%未満を占める世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給が総所得の20%未満を占める世帯:4.0%

このデータから、残りの56.6%の高齢者世帯は、公的年金や恩給以外の所得で生活費を補っていることが読み取れます。

公的年金だけで生活するのが難しい可能性も考慮に入れて、老後の生活設計を立てていくことが大切だといえるでしょう。

6. まとめ

今回は、年金生活者支援給付金について、対象となる方の条件や手続き方法などを解説しました。

この給付金は、所得が一定基準以下である年金受給者の生活を支える、非常に重要な制度です。

ご自身が対象になるかどうか、まずはこの記事で紹介した要件を確認してみてはいかがでしょうか。

手続きは、対象となる可能性のある方に日本年金機構から案内が届く仕組みになっています。

大切な書類を見逃さないよう、郵便物には日頃から気を配っておくと安心です。

老後の生活を豊かにするためには、こうした公的な支援制度を正しく理解し、活用していくことが求められます。

ご自身の年金記録や資産状況とあわせて、計画的な生活設計を立てるための一助となれば幸いです。

参考資料

マネー編集部年金班