ゴールデンウィークが近づき、旅行やイベントの計画を立てている方も多いかもしれません。しかし、65歳以上で主な収入が年金のみという方にとっては、こうした特別な出費が家計の負担になることも考えられます。
老後の生活設計において、公的年金は重要な柱となります。
今回は、2026年度に基礎年金が1.9%、厚生年金が2.0%増額されるという最新情報を交えながら、年金の基本的な仕組みや、働き方の違いが受給額にどう影響するのかを「5つのライフコース」別に解説します。
将来の安心した暮らしのために、ご自身の年金について理解を深めるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
1. 2026年度の年金額はいくら増える?モデルケースで見る改定後の受給額
2026年度の年金額は改定され、基礎年金(国民年金)は前年度と比べて1.9%、厚生年金は2.0%の増額が決まっています。
この改定後の年金額は、2026年6月15日に支給される4月・5月分から反映される予定です。
1.1 【2026年度】国民年金・厚生年金の受給額モデルケース
- 国民年金(老齢基礎年金・満額):1人あたり月額7万608円(1300円増)
- 厚生年金(夫婦2人分の基礎年金を含む):月額23万7279円(4495円増)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額)は、月額7万408円(前年度比1300円増)となります。
※厚生年金のモデルは、平均的な収入(賞与を含め月額換算で45万5000円)がある男性が40年間勤務した場合の給付水準(老齢厚生年金と夫婦2人分の老齢基礎年金満額)を想定しています。
2. 公的年金「基本のき!」仕組みや支給スケジュールを押さえよう
多くの方が「年金」と聞いて思い浮かべるのは、リタイア後に受け取る「老齢年金」かもしれません。
実際には日本の公的年金制度には、「老齢年金」のほかに病気やけがで生活に支障が出たときに受け取れる「障害年金」、家計の支え手が亡くなった場合に家族が受け取れる「遺族年金」という、合計3つの保障機能があります。
このように複数の役割を担っていることを押さえておきましょう。
2.1 国民年金と厚生年金、何が違う?
日本の公的年金は「2階建て構造」と表現されることが多く、1階部分にあたる「国民年金(基礎年金)」と、2階部分の「厚生年金」から成り立っています。
この構造により、現役時代の働き方が将来の年金受給額に直接影響するのが大きな特徴です。
ここでは「国民年金」と「厚生年金」の基本的な相違点と、それぞれの老齢年金の受給額について見ていきましょう。
2.2 1階部分「国民年金」の仕組み
- 加入対象者:原則として、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての方が対象です(職業や国籍は問いません)。
- 年金保険料:加入者全員が同額で、年度ごとに改定されます(※1)。
- 老齢年金の受給額:保険料を40年間(480カ月)すべて納めると、65歳から満額の老齢基礎年金を受給できます(※2)。
※1 国民年金保険料:2026年度の月額は1万7920円です。
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度の月額は7万608円です。
2.3 2階部分「厚生年金」の仕組み
- 加入対象者:会社員や公務員、またパートタイマーなどで特定適用事業所(※3)に勤め、一定の条件を満たす方が対象です(国民年金に上乗せで加入)。
- 年金保険料:収入(給与や賞与)に応じて保険料が決定されます(上限あり)(※4)。
- 老齢年金の受給額:加入期間や納付した保険料の総額に基づき、一人ひとり異なります。
このように、国民年金と厚生年金では、加入対象者や保険料の決まり方、老齢年金の計算方法などが大きく違います。
そのため、現役時代にどの年金制度に加入していたかによって、実際に受け取る老齢年金額に個人差が生まれるのです。
※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月以上、厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します。
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を乗じて計算されます。
2.4 2026年の年金支給日カレンダー【原則偶数月の15日】
公的年金は、原則として「偶数月の15日(※5)」に、直前の2カ月分がまとめて支給される後払い形式となっています。
2026年の年金支給日と、その対象となる月は以下の通りです。
- 2026年2月13日(金):2025年12月分と2026年1月分
- 2026年4月15日(水):2月分と3月分
- 2026年6月15日(月):4月分と5月分
- 2026年8月14日(金):6月分と7月分
- 2026年10月15日(木):8月分と9月分
- 2026年12月15日(火):10月分と11月分
※5 支給日の「15日」が土日や祝日の場合、その直前の平日に前倒しで支給されます。
3. 働き方で年金額は変わる?5つのライフコース別シミュレーション
現役中の年金加入期間や収入の違いは、将来の年金受給額にどのような影響を与えるのでしょうか。
厚生労働省は、2026年度の年金額改定に合わせて、現役時代の加入状況や年収に応じた年金額の例を「多様なライフコースに応じた年金額」として公表しました。
この資料では、「2026年度に65歳になる方」をモデルに、公的年金の加入履歴や性別で分けた合計5パターンの年金概算額が示されています。
3.1 ケース1:厚生年金に長く加入した男性の場合
年金月額:17万6793円
- 厚生年金への平均加入期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円※賞与を含む月額換算。以下同様。
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
3.2 ケース2:国民年金(第1号)加入が中心の男性の場合
年金月額:6万3513円
- 厚生年金への平均加入期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
3.3 ケース3:厚生年金に長く加入した女性の場合
年金月額:13万4640円
- 厚生年金への平均加入期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
3.4 ケース4:国民年金(第1号)加入が中心の女性の場合
年金月額:6万1771円
- 厚生年金への平均加入期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
3.5 ケース5:国民年金(第3号)加入が中心の女性の場合
年金月額:7万8249円
- 厚生年金への平均加入期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
これらはあくまでモデルケースですが、厚生年金への加入期間が長く、現役時代の収入が高いほど、老後の年金額も多くなる傾向がはっきりとわかります。
また、国民年金と厚生年金のどちらに主に加入していたかが、年金の受給水準に大きく影響していることも見て取れます。
4. 厚生年金と国民年金の平均受給額はいくら?男女差や受給額の分布を解説
老後に受け取れる年金額は、現役時代の加入状況により個人差があります。ここでは、60歳から90歳以上の受給権者全体のデータをもとに、厚生年金と国民年金の受給額分布を確認します。
4.1 厚生年金の平均受給月額と男女差、金額別の分布
厚生労働省年金局『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金受給者の平均年金月額は、全体で15万289円です。男女別の内訳は以下のようになっています。
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金部分を含みます。
月額別の受給者数分布
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の平均月額は全体で約15万円ですが、男性は約17万円、女性は約11万円と男女間で差が見られます。受給額の分布を見ると、月額1万円未満から25万円を超える方まで幅広く、個々の状況によって大きく異なることがわかります。
4.2 国民年金の平均受給月額と男女差、金額別の分布
厚生労働省年金局『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給者の平均年金月額は、全体で5万9310円です。男女別の内訳は以下の通りです。
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
月額別の受給者数分布
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均月額は男女ともに約6万円で、最も多い層は「6万円以上~7万円未満」となっています。多くの方が満額に近い金額を受け取っている一方で、納付期間の短さなどから月額1万円に満たない方もいるのが実情です。
5. まとめ:自分の年金見込額を把握して、老後資金計画に役立てよう
今回は、公的年金の基本的な仕組み、2026年度の改定内容、そして現役時代の働き方が将来の受給額に与える影響について解説しました。
統計データが示すように、厚生年金だけで月額30万円以上を受け取れるのは一部の方に限られます。年金収入だけで現役時代と同じ生活水準を保つことは、多くの人にとって難しいのが現実です。
将来への漠然とした不安を和らげるためにも、まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を利用して、ご自身の年金見込額を具体的に確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
※当記事は再編集記事です。





