2. 増収なのに減益?中間期決算が示す厳しい現実
株価下落の背景には、直近の業績動向も影を落としています。2026年8月期の中間期(第2四半期累計)決算を見ると、その実態が浮かび上がってきます。
決算短信によれば、売上高は720億円となり、前年同期比で16.8%の増収を達成しています。売上の規模は着実に拡大しているように見えます。
しかし、利益面に目を向けると状況は異なります。本業の儲けを示す営業利益は69億円で前年同期比14.3%の減益、親会社株主に帰属する純利益も40億円で10.7%の減益となっています。つまり、表面上は「増収減益」という状態です。
ここで注目すべきは、会社側が重視している「調整後営業利益」という指標です。
SHIFTの調整後営業利益は、通常の営業利益に、M&A(企業の合併・買収)に伴って発生する「のれんの償却費」や「顧客関連資産の減価償却費」、さらにはM&Aに関わる諸経費などを足し戻したものです。
泉田氏は、この指標について次のように解説します。
「どっちかというとキャッシュフローに近い概念、お金の流れに近い概念だから、会社がこっち見てくださいというのも分かる。(中略)ただ減益にはなっているけどねというのが現状です」
結果として、この調整後営業利益で見ても79.5億円となり、前年同期比で12.5%の減益となっています。
会計上の利益だけでなく、会社が実態に近いと主張するキャッシュフローベースの利益で見ても、利益が落ち込んでいるという事実が、投資家からの評価を重くしている要因の一つと言えます。
【動画で解説】一体なぜ、市場はSHIFTに対して厳しい評価を下した?
3. 会社予想と市場コンセンサスの「埋まらない溝」
中間期は厳しい結果となりましたが、会社側は通期(1年間)の業績見通しについて強気な姿勢を崩していません。通期の会社計画では、売上高1,500億円(前年比15.5%増)、調整後営業利益200億円(同13.4%増)、純利益135億円(同24.3%増)を見込んでいます。
上期が減益だったにもかかわらず、通期では増収増益に持ち直すというシナリオです。
ここでインタビュワーから「会社は計画を達成するために数字を固め(保守的)に出す傾向があるなら、下期で盛り返すという情報が出たことで株価が上向いても良いのではないか?」という疑問が投げかけられました。
これに対し、泉田氏はプロの投資家が参考にする「コンセンサス」の存在を提示します。コンセンサスとは、複数の証券アナリストたちが予想した業績の平均値のことです。
IFISのデータによると、通期の経常利益コンセンサスは181億円となっています。会社が目標とする調整後営業利益の200億円(経常利益ベースでも同水準の目標)に対し、市場はより低い数字を予想しているのです。
過去の経緯を見ても、第1四半期決算の際に、市場のコンセンサス予想が34億円だったのに対し、実際の実績が27億円にとどまり未達となった背景があります。こうした状況を踏まえ、泉田氏は市場の心理をこう代弁します。
「出した数字が保守的だというよりは、ちょっとチャレンジングじゃないのと見ている可能性はあるね」
つまり、市場は会社の強気な計画を「保守的な見積もり」として安心するのではなく、「本当に達成できるのか」と疑いの目で見ているということです。
この会社と市場の期待値の溝が、株価の上値を重くしています。
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著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日