家電量販店「ノジマ」を運営する株式会社ノジマは、2026年4月21日、日立グローバルライフソリューションズ株式会社(以下、日立GLS)の家電事業を買収すると発表しました。

2025年にはVAIOを子会社化するなど、積極的なM&Aが目立つノジマ。歴史や戦略に触れながら、どのような企業なのか解説します。

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出所:株式会社ノジマ、日立グローバルライフソリューションズ株式会社

出所:株式会社ノジマ、日立グローバルライフソリューションズ株式会社

1. ノジマが日立の家電事業を買収!海外事業も傘下に

今回、ノジマが買収する日立GLSは、日立グループの家電・空調事業の中核を担う企業です。

具体的なスキームとしては、日立GLSが家電事業を継承する新会社を設立し、ノジマが資金調達の目的で設立した完全子会社の特別目的会社が新会社発行の株式を80.1%取得します。

さらに、日立GLSが日立の海外家電事業を協力して担っていたArçelik A.S.から、共同設立会社の保有株式(60%)を取得。国内と海外の家電事業を新会社で統合します。

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出所:株式会社ノジマ

出所:株式会社ノジマ

当初の報道では国内事業のみに焦点が当たっていましたが、実際はグローバル市場を含め、日立の家電事業のすべてがノジマ傘下に収まることになります。新会社の取得価格は1100億円で、2027年3月期中の譲渡を予定しています。

日立グループは事業構造改革の一環で、コンシューマ向けの家電事業を本体から切り離し、戦略的パートナーシップに移行する動きを加速しています。かつては家電こそ日立の屋台骨でしたが、現在はデータ活用を主体としたビジネスにシフトしており、日立GLSの出口戦略は長年の課題でした。

昨今、ノジマは異業種を含むM&Aを積極的に行っており、製造から販売までの垂直統合体制の構築にも意欲をみせていました。事業を切り離しつつも、技術流出やブランド力の維持を重視する日立GLSにとって、日本企業のノジマは理想の売却先だったと考えられます。

2. ノジマは神奈川県相模原市で1959年に創業

ノジマはリアル店舗として、デジタルネットワーク専門店「ノジマ」、スマートフォンなどの通信機器専門店「でんわ館」、通信キャリアに特化した「キャリアショップ」、高級オーディオ専門店「オーディオスクエア」などを展開しています。

出店は関東圏が中心ですが、静岡・山梨・長野・新潟などにも数店舗を構えています。2026年4月時点で、総店舗数は約250店舗まで拡大しています。

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出所:株式会社ノジマ

出所:株式会社ノジマ

同社は神奈川県相模原市で野島孝之氏が1959年に創業しました。もとは有限会社野島電気商会という社名で、地域に密着した「街の電気屋」でしたが、1982年に野島廣司氏が社長に就任したのをきっかけにデジタル家電を強化し、徐々に店舗を拡大していきます。

1991年に「ノジマ」に商号を変更、1994年に日本証券業協会への店頭登録を行い、神奈川県外に打って出ます。日本で初めて携帯電話の各通信キャリアを一同に集めた「でんわ館」がオープンしたのもこの時期です。

2000年代からは、現在のノジマの代名詞ともいえるメーカーヘルパーの撤廃を実施。独自色を強め、顧客の信頼を高めていきます。2006年の売上高は約1000億円でしたが、2011年には2000億円を突破。2025年には連結で8534億円まで伸ばしています。

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出所:株式会社ノジマ

出所:株式会社ノジマ

直近は異業種のM&Aを推し進めており、携帯電話のコネクシオ、インターネット事業のニフティ、PCメーカーのVAIOなどを買収。人口減少で家電小売事業が頭打ちになるなか、事業を多角化し、生存戦略を図っています。

3. 唯一無二の「コンサルティングセールス」で高いリピート率

ノジマが競合と大きく異なるのが、メーカーが店舗にスタッフを派遣して自社製品を訴求するメーカーヘルパーを撤廃していることです。

販売スタッフはノジマの従業員のみで構成されており、損得抜きで接客を行うコンサルティングセールスとなっています。この「特定のメーカー製品を押し付けられない」という安心感が顧客の高いリピート率につながっています。

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出所:株式会社ノジマ

出所:株式会社ノジマ

異業種のM&Aによってさまざまな事業をグループ内で抱える構造は、家電小売において強力なシナジー効果を生んでいます。

ただ家電を売るのではなく、顧客のニーズに合わせたセット提案や通信契約などのサービスの販売を行うことで、コンサルティングセールスの強みを最大限に生かしています。

例えば、2025年1月に子会社化したVAIOは、ITXやコネクシオといった他の子会社が培ってきた法人ルートを活用することで、法人用PCの販売シェアを拡大しています。ノジマとしても、モバイル通信とPCのセット提案をしやすくなり、自社の新たな武器となっています。

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出所:VAIO株式会社

出所:VAIO株式会社

店頭で顧客の声を直接吸い上げることができるのも実店舗を持つ強みです。フィードバックを製品開発に生かすスピードがアップしたことは、VAIO自体のブランド力向上にもつながっています。

今回、日立の家電事業の買収により、白物家電の分野においても、独自製品やソリューションの展開が可能になり、競合との差別化が図りやすくなります。また、メーカー優位の構造が逆転することで、これまでになかった新しいサービスなどの登場も期待できそうです。

4. 家電量販店の年間販売金額は?

家電量販店(家電大型専門店)の市場規模は、緩やかな増加傾向にあります。

経済産業省が発表している「商業動態統計調査」によると、家電大型専門店の年間販売金額は、直近10年で以下のように推移しています。

  • 2016年: 4兆2425億円
  • 2017年: 4兆3245億円(前年比 +1.9%)
  • 2018年: 4兆4078億円(前年比 +1.8%)
  • 2019年: 4兆5621億円(前年比 +3.5%)
  • 2020年: 4兆7948億円(前年比 +5.1%)
  • 2021年: 4兆6846億円(前年比 -2.3%)
  • 2022年: 4兆6844億円(前年比 -0.0% /微減)
  • 2023年: 4兆6324億円(前年比 -1.1%)
  • 2024年: 4兆7276億円(前年比 +2.1%)
  • 2025年: 4兆9214億円(前年比 +4.1%)

2020年に販売金額が大きく伸びているのは、コロナ禍による「巣ごもり需要」で、テレワーク用のパソコンや周辺機器、自宅で過ごす時間を快適にするための白物家電、調理家電のニーズが爆発的に高まったためです。また、特別定額給付金による買い替え需要も後押ししました。

その後、需要の先食いによる反動減の時期を挟みましたが、昨今の原材料費高騰や円安の影響を受け、製品の単価自体が上昇。2025年にはデジタル家電の買い替えサイクルや高付加価値製品へのシフトが明確になり、販売額が大きく回復しています。

10年前(2016年)と比較すると、約6800億円市場が拡大しており、5兆円の大台も目前に迫っています。

こうした「単価上昇による売上維持」の局面は今後も継続するとみられ、家電量販店各社には、単なる価格競争だけでなく、付加価値の高い提案やM&Aによる経営の効率化がこれまで以上に求められていくことになりそうです。

参考資料

大蔵 大輔